美を結ぶ。美をひらく。
昨年リニューアルオープンしたサントリー美術館の記念展の第三弾「美を結ぶ。美をひらく。」展に行ってきました。
コレクションの中から6つのストーリーに合わせて展示されています。
Story1: ヨーロッパも魅了された古伊万里
古伊万里はこれぞ古伊万里というような色付けも華やかで装飾が凝ってる作品が多くヨーロッパへの輸出用に製作されたこともありワインやコーヒーを注ぐためと思われる形のものもありました。中国が政情不安になったことからその代わりに日本からの輸入が増えたということなので最初のうちは中国の作品を意識した模様から少しずつ松などのモチーフを取り入れた日本的な要素の作風が確立して柿右衛門様式などが誕生したのかなと思います。
Story2: 将軍家への献上で研ぎ澄まされた鍋島
鍋島はとにかく青の濃淡と細かな文様を細部まで描き込んだ作品が素敵でした。古伊万里のような華やかさはないのですが緻密に計算された手仕事が素晴らしいと思いました。
紅型は染付された布地は沖縄土産でよく見ますが型紙を見るのは初めてで今では作り手がいないほどの高度な技量を使っていて彫刻作品を見るような感覚で見入ってしまいました。仕事が細かい!!
Story4: 西洋への憧れが生んだ和ガラス
和ガラスはポルトガルやスペインからもたらされたものが日本の生活習慣に根付いて発展して「びいどろ」「ぎやまん」っていう響きがなんとなくオシャレ心をくすぐる感じでいいですね。簪だったり簾のようなものだったり身近なものに取り入れられてて昔から洒落のめした人たちが愛用してたんだろうなぁって思います。薩摩切子のグラスも美しかった。
Story5: 東西文化が結びついた江戸・明治の浮世絵
浮世絵は喜多川歌麿の蚕から糸を紡いで機織りをする女性の姿を描いた十二枚連作「女職蚕手業草」(今回の展示では後半の6枚)が生き生きと艶っぽくて歌麿さまの美人画は好きだわーってなります。今回初めて見た小林清親の作品は暗闇と灯の描き方が江戸時代の浮世絵に比べて抒情的でとてもよかったです。
Story6: 異文化を独自の表現に昇華したガレ
最後のエミール・ガレのコレクションが充実していてティーテーブルや飾り棚のような家具とランプや花器のガラス製品がありましたが自然の草花や蜻蛉やバッタを題材にした作品がとてもとても素敵でした。ジャポニズムに影響受けたものもあり日本の花鳥図を思わせるような描き方の作品もありました。綺麗だったなぁ。
平日の午後という時間帯もあってかとてもゆったりと鑑賞することができました。
サントリー美術館の次回展示会は「サントリー美術館 開館60周年記念展 ミネアポリス美術館 日本絵画の名品」
ですね!!かなりの大作が日本に里帰りするので楽しみです。無事にアメリカから到着することを祈っています。
「河鍋暁斎の底力」展
東京ステーションギャラリーで開催中(~2/7)の「河鍋暁斎の底力」展に行ってきました。
当初予定されていた海外の作品を展示する企画展がコロナ禍で中止となり急遽企画された展示会だそうです。キャプションに「下絵だけじゃだめですか?」とあるように本画はひとつもありません。西川口にある河鍋暁斎記念美術館に所蔵されている素描や下絵、手本帳や即興で描かれた席画などこれまで見てきた彩色も美しく額装されて展示されている本画とは違って描き直しのあとや表裏に描かれたものは紙を切り張りして描かれたものなど創作過程を覗き見るようでエキサイティングな展覧会でした。(会場はとても静かですけど)
本画になると弟子や娘が彩色をしていたりと暁斎の手が入ってない作品もあるそうで全て暁斎が描いているのは下絵くらいだとか。実際に各所に色指定の文字が入っていたりとちょっと漫画の原稿みたいでしたね。
漫画で言うところのホワイトにあたるのが胡粉で描き直す箇所に塗ったあとに上から線を引いていてそれだけじゃなく線も何本も引いてあって本画では見られないほどの尋常じゃない線の多さに細かいところまで拘る執着心が感じられて見入ってしまいます。
暁斎の年表に駿河台狩野家に弟子入りとあってその後木挽町狩野家へってあって狩野家って江戸に来てから分派したんけ?って調べたら
どうやら江戸幕府に重用された御用絵師のうち最も格式の高い役職名を「奥絵師」といってそのうちの4家が探幽の系譜の鍛冶橋狩野、尚信の木挽町狩野、安信の中橋 (なかばし) 狩野,常信の次男岑信の浜町狩野を奥絵師四家と称するらしいです。
そして奥絵師に対して表絵師というのがあってそれが
「江戸時代,奥絵師四家の分家や門人が一家を構えて独立し,江戸幕府から代々御家人格 20人扶持の待遇を得た,以下の狩野十五家の総称。駿河台狩野,山下狩野,深川水場狩野,稲荷橋狩野,御徒士町 (おかちまち) 狩野,本所緑町狩野,麻布一本松狩野,神田松永町狩野,芝愛宕下狩野,根岸御行之松狩野,築地小田原町狩野,金杉片町狩野,猿屋町代地狩野,猿屋町代地分家狩野,勝田狩野。」とのこと。
まぁ分家ってことでしょうかね。
しかし狩野派すごいな。一大勢力狩野派は江戸幕府が終わったあとどうなったんでしょうかね?
その上で町狩野って名称もあってそれは
「江戸時代における在野の狩野派の画家たちの総称。門人として狩野派の画法を学びながら奥絵師,表絵師のように幕府や諸大名などに仕えず,市井にあって画業を営んだ。狩野姓を名のった者もいる。」だとか。
どんだけいるんだ?狩野派。
話が逸れました。
美術館に足繁く通うようになったきっかけが2015年に三菱一号館で開催された「画鬼・暁斎」展に衝撃を受けたことでした。この展覧会がすごかった!それまで河鍋暁斎の存在は知らなかったんですがポスターに惹かれて行ってみたらまぁとにかく幅広い!
浮世絵風の美人画や戯画化された動物絵から本格的な日本画に洋画の要素を取り入れた屏風絵などとにかくこんな人が江戸末期から明治にかけて活躍してたんだ!とびっくりでした。
それまで大型企画展や話題になってるような美術展を中心に年に数回程度行くくらいでしたが日本美術の面白さに目覚めてからはあちこちこまめに出かけるようになりました。
以降も河鍋暁斎は人気あるのかよく展覧会が開催されており2回ほど行きました。
2017年「ゴールドマンコレクション これぞ!河鍋暁斎」
2019年「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」
2015年、2019年ではいずれも「猫又と狸」が使われてて暁斎のイメージってやっぱりこの猫なんでしょうか。
私はこの猫と狸に対面するのは3回目になりますね。
見るたびに「かわいくねーなぁー」って笑ってしまいますが暁斎は猫が嫌いだったんでしょうか。歌川国芳にも弟子入りしてたみたいですがすぐに離れてしまったのは猫についての見解の不一致?だったのかなーなんて思ったりしました。
河鍋暁斎記念美術館には今回の下絵関連だけではなく本画ももちろんかなりの作品が所蔵されてて↑の展示会でも多く出展されていました。近場にあるので落ち着いたら一度足を運んでみたいと思います。
「琳派と印象派」と三井記念美術館コレクション
雨混じりの土曜日に2つの美術館をハシゴしてきました。
前期に続いて後期展示も会期終了ギリギリになってしまいましたが滑り込んで見てきました。(こんなのばっかり)
前期もよかったけど後期も素晴らしかった!!
印象派の作品は前期とあまり変わっていなくもともと展示作品数も多かったけど琳派の作品は大物が登場したので展示数以上に圧倒された。
特に目玉の俵屋宗達の「風神雷神図屏風」は2014年の「栄西と建仁寺」展以来のご対面
(※このときは総合文化展に東京国立博物館所蔵の尾形光琳の「風神雷神図屏風」も展示されてて両方見られたのもよかったです)
琳派と印象派といってもそれぞれが影響しあっているという視点ではなく日本とフランスで都市文化によって生まれたそれまでの特定の階級のものだった美術が大きく変わった系譜の作品を集めた展示会となってるので共通点はあるけれど印象派の中に琳派の影響を見出すという見せ方はしていないです。
俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一はそれぞれ100年ずつ時代がずれてて尾形光琳は俵屋宗達の作品に影響を受け酒井抱一は尾形光琳に、という師弟関係ではなく作風が継承されていったが作品が並びちょっと感動しました。
尾形光琳の「白楽天図屏風」、酒井抱一の「松島図屏風」と俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を続けて見ると影響を受けつつそれぞれの個性も昇華されてて見とれました。
特に酒井抱一の「松島図屏風」は瀟洒な花木草花絵のイメージがあった抱一さまの印象と違い力強く抽象的な表現で波と松を描いててちょっとキュビズムっぽさもあり意外な発見でした。この3作品は石橋財団所蔵ではないので写真撮影できなかったんですが新しくコレクションに加わった作品のお披露目と合わせて各所蔵者から借りてきたあたり今後の企画展にも期待したくなりますね。
この3作品に興奮しましたがそれ以外でも酒井抱一・鈴木其一の師弟共作の夏図は額装まで使って描かれた初夏の花や端午の節句、竹と謎の生き物(何?)の掛け軸の洗練されながらも遊び心がある作品や酒井抱一の「芥子藪柑子(けしやぶこうじ)図」の繊細な線と色使いと空間の使い方の美しさにほれぼれしたりと素晴らしい作品ばかり。
鈴木其一は酒井抱一の作風を継承しつつも抱一が亡くなってからは独自の画風の作品も増えてきて「大山祭図」「吉原大門図」のような風俗画というか浮世絵っぽい作品があって背景の描き込みの丁寧さに「らしさ」を残しつつ意欲的に色んな作品に挑戦してたんだなぁと思いました。
琳派関連の作品に感動しすぎましたが印象派の作品の充実ぶりはさすがでした。アーティゾン美術館前身のブリヂストン美術館時代から所蔵していた作品を中心にルノアール、モネ、ドガなど錚々たるものばかり。モネもルノアールも日本の美術館に所蔵されてる作品が多くいったいどれだけ書いてたんでしょう?と思ったりします。
展示の最後を飾っていたのが鈴木其一の「富士筑波山図屏風」とセザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」で富士山と筑波山に挟まれてサント=ヴィクトワール山が並んでいました。こういうのもちょっと面白なぁと思いました。
アーティゾン美術館所蔵の作品は全作品写真OKなのも嬉しいですね。キリがないので全部は撮ってないですけども。
時間がなくてじっくり見れなかったですが常設展や同時開催されてた「久留米をめぐる画家たち」では明治以降の日本人の洋画家の作品が多数展示されてて有名な青木繁の「海の幸」もあってまぁとにかく充実してます。先日の1894~展でも思うところあってので日本の洋画の歴史を少し調べたくなりました。
続いて銀座線で京橋から三越前まで2駅移動して三井記念美術館の
三井記念美術館コレクション特別展 国宝の名刀「日向正宗」と武将の美へ
新年は毎年円山応挙の「雪松図屏風」が展示されてるのだけどオリンピックの予定があったからなのかコロナ禍で企画展の予定が変わったからなのかどうやら昨年は新年だけじゃなく夏にも再度展示されてたようです。
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/list.html(令和2年度)
トーハクの松林図屏風と並んで新年に見る松2作品だったので少々残念な気持ちもありつつ国宝の刀「日向正宗」くんが展示されてるとあって行ってきました。
「雪松図屏風」はなかったけど同じ応挙の「竹図屏風」が展示されてて色調は「雪松図屏風」と同じく墨と金箔なんだけど雪松図の雪が降ったあとの朝日に照らされてるようなくっきりした松に比べて霞がかかったような竹は同じ墨で描いてても全然違う印象になっててこちらも素晴らしい作品でした。美術館入り口手前にある小部屋で美術館のVTRが繰り返し流れてるのを休憩がてらぼんやり見てたんですが三井家は円山応挙を支援していたとかでその所縁もあって応挙の作品を多く所蔵しているそうです。すごいな三井財閥。
国宝の刀「日向正宗」は照明も綺麗に当てられてたこともあってキラッキラでしたね。
他にも貞宗や国広といった刀剣乱舞でお馴染みの刀工の刀もありました。
面白かったのが大名家の雛道具でこちらも毎年「三井家のお雛様」展としてひな祭りに合わせて展示されることが多かったのですが今年は開催されないのでその代わりなのか少しだけ展示されてました。三井家のお雛様展は行ったことなかったので雛道具を見たのは初めてだったんですがいやー大名家のおままごと道具はすごいな!っていう感じでした。特に乗物(駕籠)の内部の装飾が平安調の花鳥画や人物画が描かれてて凝ってるんですよね。貝合わせもシジミ大くらいの大きさの回に細かい絵が描いてあって文化ってこういうところにどれだけお金と手間を掛けられるかということなんだと思いました。
昨年のコロナ禍以降美術館に行く機会が減ってしまってのですが(2019年は33回だったのに2020年は11回と三分の一に!)少しずつペースが戻ってきて今も緊急事態宣言下ではありますが日時指定券などで混雑を避けて鑑賞できる環境が整ってきたのは嬉しい限りなのですが、近場の美術館でよい所蔵品が多い出光美術館は今何やってるんだろう?と気になりました。昨年多くの美術館が休館する中、3月1日まで開いてたのですが
以降お知らせを見かけないなと思って調べたら今年度はずっと休館中だったのですね、
本来予定していたスケジュールを見ると見たかったなーと思うものばかり。
特に新たにコレクションに加わったジョー・プライス氏の江戸絵画コレクションのお披露目になるはずだった「若冲と江戸絵画」「応挙と江戸琳派」なんて素晴らしいものになっただろうなぁと。
こちらは長谷川等伯の屏風絵も多く所蔵していて定期的に展示されてたから「屏風絵」展で見れたかもしれないなぁ。ちなみに尾形光琳の「風神雷神図屏風」を模した酒井抱一の「風神雷神図屏風」も出光美術館所蔵です。
ただ最近公開された2021年度スケジュール
では「きらめきの日本美術」屏風絵と肉筆浮世絵という展覧会が予定されてるのでこちらが無事開催されることを祈るばかりです。
1894 Visions ルドン、ロートレック展@三菱一号館美術館
三菱一号館が竣工した1894年を軸に同時代に活躍したルドンとロートレックを中心に日仏の作家の作品を紹介する展示会。
というコロナ禍で需要が激減して廃棄される花を救おうというコラボ企画で展覧会チケット付きブーケを購入したのですが展覧会の会期終了(1/17まで)が迫ってきたので慌てて終了前日に駆け込みました。
ルドンは三菱一号館美術館が開館したときに購入した「グラン・ブーケ」を所蔵しておりその他のルドン作品は交流のある岐阜県美術館から貸し出された作品が多く展示してありました。
大型で色彩豊かな「グラン・ブーケ」の印象とはうってかわったモノトーンの版画作品は幻想的というか不思議な味わいな作品が多かったですね。
パステルで描かれた作品は色使いが独特で印象派の色彩とは違って空想の世界で色を楽しんでいるような感じ。なかでも「神秘的な対話」のピンクの使い方が現代的でとても素敵でした。
ロートレックはキャバレーのポスターが有名ですがポートレートのような瞬間を切り取り平面的に描くのは日本の浮世絵みたいで江戸時代に日本で浮世絵が庶民の間で親しまれているように少し時代が下ってからパリでも芝居のポスターや店の広告がアートとなるのは日仏の絵画の成り立ちの違いが見えて面白いですね。
版画作品ではヴァロットンのシリーズがあったのが嬉しかったですね。好きなんですよねーヴァロットン。クールでちょっとミステリアスでとても素敵。
ゴーギャンのタヒチでの生活からインスピレーションを受けた作品群「ノア・ノア」は初めて見たのですが油彩画よりさらにプリミティブでした。
フランスで浮世絵を初めとした日本画の影響を受けたのがナビ派の画家でポール・セリュジュの「急流のそばの幻影 または妖精たちのランデヴー」は急流の描き方が琳派のようで構図も日本の屏風絵のようでした。鈴木其一の「夏秋渓流図」を思い出しました。
日本画の影響を受けた絵画がある一方で西洋絵画を学んだ日本人の作品もありました。
山本芳翠、黒田清輝、藤島武二、梅原龍三郎、青木繁などなど。
日本の絵画の歴史から離れて西洋絵画を学んだ作家の作品と同じように別の文化を取り入れたフランスの作家の作品を並べてみると絵の上手い下手はわからないのですが日本人が西洋絵画を描くことの難しさを感じました。
単体で見たときに技術は学べてもその技術が生まれた背景というか積み重ねが絵の中に落とし込めてないというか。学んだことを否定するつもりもないですし学んだうえで何を表現するかだと思うのですが19世紀の後半頃はその途中だったのかなぁなどと素人ながら思いました。
その他同時代の有名どころモネ、セザンヌ、ルノワールなどの作品もあり個人的には入口はいってすぐにモローの「ピエタ」があったので一気にテンションあがりました。こちらも岐阜県美術館の所蔵なんですね。
緊急事態宣言が出ている中で開催されている展示会。来場者は通常よりやや少な目くらいでしたが元々美術館ではおしゃべりする人はいないですし、入場時の体温チェックや消毒も行われておりルールを守れば行くことは問題ないかと思いますが行く前と出た後の行動が大事かなと思います。グループで訪れてその後ランチやお茶で長々とおしゃべり、みたいなことをしなければ問題ないのかなと。それが楽しみな方たちには物足りないかもしれませんが純粋にアートを楽しむ気持ちで当分は行くのがよいと思います。
ウシにひかれて
だいぶ遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
毎年恒例のトーハクの博物館に初もうで企画。今年も行ってきました。
1/7夜に出された緊急事態宣言後とあって土曜だけどかなり空いててとてもゆったり。この時期恒例の長谷川等伯の「松林図屏風」もじっくり見られました。
つい先日開催されていた「桃山 天下人の100年」にも展示されていたので間を空けずに拝見しましたが桃山展ではライバルと言われた狩野永徳の作品(前期:檜図屏風 後期:唐獅子図屏風)と並んで展示されていて照明も明るく展示ケースの継ぎ目に阻まれてちょっと勿体ない感じの展示方法でしたが本丸のこちらでは国宝室でほの暗い照明の中、松林の中に佇んでいるような気持ちで拝観できるのが嬉しいです。人が少なかったので写真も引きの絵、アップの絵と様々な角度で撮り放題。アップで撮ると松の描き方など現代アート風な筆致なのが興味深くこの作品を国宝に選定した先見性は素晴らしいなぁと思います。
ミュージアムシアターではVR松林図屏風も公開されていて絵の中を歩いているような感覚の映像を堪能することができます。やっぱりお正月にはこれを見なくては年が明けた気がしません。
その他の展示では伊藤若冲の鶏の屏風絵、先日放映されたNHKドラマ「ライジング若冲」ではやたら若冲を意識しているように描かれた円山応挙(応挙派の私としてはちょっと納得しかねましたが)の「龍唫起雲図」「双鶴図」池大雅の「竹図」など有名どころの作品が展示されてたのも新春ぽい雰囲気があってよかったです。
狩野元信弟の之信のものと伝えられる花鳥図は狩野派の源流と言えるような作品で好きでしたね。
伝土佐光信の松図屏風の典型的なやまと絵の作品と比べると狩野派が中国の水墨画とやまと絵を融合して新しい画風を作り上げたのがよくわかる展示になってました。
丑年にちなんだ展示は牛をモチーフにした絵画や彫刻など様々な作品が展示されてて中でも国宝の片輪車蒔絵螺鈿手箱が美しかった。心惹かれたのは森徹山の「牛図屏風」で錆徹色の銀地の背景に描かれた力強い牛の絵が素敵でした。牛車が登場する「平治物語絵巻」の模本も藤原信頼と源義朝が三条院(後白河院の御所)に火を放つ場面だったりしたのでほぉぉとなりました。
特別展として表慶館では「日本のたてもの」展が開催されてます。
こちらでは国宝・重要文化財の木造建築の模型が展示されています。
1/10スケールで作成されている模型は設計図などがない古来の建築方法を修復時に後世の手本となるように制作されているようで内部まで忠実に再現されています。
一乗寺の三重塔の内部にはお釈迦様が鎮座していてそこまでやるか!な感じ。
唐招提寺金堂の模型には内部の装飾まで丁寧に塗られていて匠の技にため息。
近代洋風建築の最高美とも言える建物の表慶館と日本古来の建造物の模型の組合せも素敵でした。何度来ても表慶館はうっとりしますね。
大仙院本堂の模型には枯山水の庭園に狩野元信の襖絵まで再現されてて本物の大仙院は内部の撮影禁止なのである意味貴重です。以前京都で中に入りましたが中に入ってしまうと全体の構図はよくわからないのでこういう作りになってたんだーと改めて知りました。
京都で大仙院などを見て回った時の記録
その他松本城や東福寺山門(1/10でもでかい!!)春日大社など国宝建築の模型がずらりと展示されてて建築好きには堪らない展示だと思います。
こちらの展覧会は「紡ぐプロジェクト」の一つであり日本の伝統文化を次世代へ繋げる活動の一環で行われているそうで寺社・城郭関連を維持するためには修復するための人材が必要ですがそのための技術の担い手が激減しているそうです。新しい建築では使われないため高齢化が進んでるそうですが伊勢神宮のように式年遷宮で定期的に新しく建て替えたりもしてるので後世に伝えていくための担い手を育てるためにもっと支援がひろがったらいいのになぁと思います。日本のように地震や台風など自然災害が多いとなかなか保存も難しいと思うのですがそんな環境でも残っている建物もまだまだあるのだから定期的にメンテナンスするための仕組みが広がってほしいですね。実際には日光東照宮の修復も予算がなくてかなり杜撰だったらしいと聞きますが勿体ないなぁと思います。
ここしばらく美術展の記録をブログには書いてなかったのですが、時々自分のブログで思い出すことが多々あって今回も大仙院の展示があると聞いたときそういえば京都に行ったときに見たなぁ…という記憶を掘り起こすために読み返してみたら結構ちゃんと書いてあって忘れてることも多くちゃんと書いておいた自分を褒めたい!と思ったのでした。やっぱり書き残しておくことは大事だと思ったのでこれからはもうちょっと書いていきたいと思いました。頑張る。
誉!!
舞台「KING OF DANCE」本日大千秋楽でした。無事25公演走り抜けました。
しかも大阪、東京、名古屋と3都市巡回。
スタッフ、キャストの皆さんはとてつもなく緊張感のある日々を過ごされたことでしょう。
本当にお疲れさまでした。
そして足を運んだ観客の皆さんも
敢えて(泣く泣く)行かないと決めた皆さんもみんなこの舞台を大切に思ってる気持ちは同じ。一緒に走り抜けたことを誇らしく思います。
正直、毎日毎日不安でしょうがなかった。
公式さんからのお知らせを開くたびに
「中止」の文字があったらどうしようとドキドキしながら開けて
グッズのお知らせや配信の案内だったりでほっと胸をなでおろす日々。
愛知公演の決定を見るまでは気が気じゃなかった。
公演決定のお知らせが来たあとだっていつ何が起こるかわからない。
毎回幕が開くまで安心できなかった。
ひとたび舞台が始まればそんな不安は忘れてただただ作品の世界に入って楽しんだけれども。
私は劇場で6公演、配信で8公演(アーカイブでも繰り返し見たのでもっとだけど)見続けたので登場人物みんなに愛着がある。
みんな愛してる。
優勝チームが公演ごとに変わる変則演出だったけどどちらも勝者になってほしいという思いだったんだと思う。JAILやANOTHER(NAOTOさん)も含めてみんなが勝者だと思います。
本当に本当によかった。
アーカイブ配信が続くうちはしばらくキンダンの世界に浸っていようと思います。
そしてもう一つ。
奇しくも同じ日に初日と千秋楽を迎えた私の大好きなもう一つの作品。
「科白劇 舞台刀剣乱舞/灯 綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶」。
開演時間も全く一緒だったのでキンダンを見届けてから科白劇のクライマックスに滑り込みました。
キンダンは感染対策の一環でカーテンコールは2回に決められ
舞台上からのキャスト陣の挨拶はなしだったけど
科白劇は舞台上でのソーシャルディスタンスを守りながら歴史上の人物、刀剣男士が入れ替わってのご挨拶。
皆さんの言葉からやり遂げられた充実感と安堵感が伝わってくる。
そして山姥切長義役の梅津瑞樹さんからは
「見てますか。これが刀ステです!これが演劇の力です」
という力強い言葉。この言葉は私が見た2作品以外でも各地で上演されている舞台に携わっている皆さんの思いを代表した言葉だと思います。
本当に本当にみんな素晴らしい。
感染対策一つとってもキンダンと科白劇でも違う。キンダンは舞台上ではキャスト同士の距離は近づくこともあったし抱きついたりスキンシップもあった。
科白劇は舞台上でもキャスト同士の距離は一定に保たれ舞台に出ている人数も限られていた。舞台セットもほぼなくシンプルな三段程度の階段状のステージがあったくらい。各現場で模索を続けながらの作品作りだったんだと思います。
そしてそれぞれの形で最後まで成し遂げた。こうやって知見を溜めていくことでまたガイドラインができていくのだと思います。
刀ステのテーマは「戦い続ける座組」ですが、今いろいろな場所でみんなが戦っている。
私たちにできることはその戦いを後押しし決して邪魔をしないこと。
それしかありません。
だって…だって…
こんな素晴らしいものが待っているのだから!!!
刀ステ新作上演決定!
— 舞台『刀剣乱舞』公式 (@stage_touken) 2020年8月9日
今作は大坂の陣を2部作として製作し、2021年1-3月に #一期一振(演 #本田礼生)、#山姥切国広(演 #荒牧慶彦)を中心とした大坂冬の陣を、同年4-6月に、#三日月宗近(演 #鈴木拡樹)、#鶴丸国永(演 #染谷俊之)を中心とした大坂夏の陣を連続で上演いたします。https://t.co/dG9naK3omG
科白劇の最後に滑り込んだのは絶対次回作のお知らせがあると思ったから。
この告知は絶対リアルタイムで知りたかったから。びっくりしすぎてしばらく手が震えてましたよ…
あああああ無事上演できますように。
(そしてへし切長谷部の近侍はいつになったら見られるのだろう…?)
今日はとにかく満ちたりた気分で胸がいっぱい。
もう誉!これしかありません。
今できることを
大阪で開幕した舞台「KING OF DANCE」が大阪公演に続いて
東京公演が今日千秋楽。
私は大阪初日のあと東京公演には4回劇場に足を運んだ。
見るたびに好きになる物語。
千秋楽の今日はマチソワともに配信で観劇。ありがとう配信。
今日はマチネの優勝がWORLD_MでソワレがDrawing Backという最高の結果。
どちらのパフォーマンスとも素晴らしくやり切った表情が毎回清々しい。
このような熱量のある舞台を届けてくれたことにただただ感謝。
東京公演の会場ヒューリックホールは有楽町マリオンの11Fにあるのだけど
エレベーターに乗れるのも7人ずつ、入場時は前の人と1m間隔を開けるように
指定され入口では体温測定。手首をピッとかざすタイプの検温器でした。
チケットの半券の裏に名前と連絡先を記入したのを確認したあと自分でもぎって
指定の籠に係の人に見せながら入る。手の消毒をしたあとに特典のパンフレットを
受け取り会場入り。トイレの前でも係の人が待ち構えてて出た後には必ず消毒。
座席は一つ置きに座るようになってて着席してもおしゃべりは禁止。
以前のように開演前の期待感が伝わってくるようなざわめきは一切ない。
みんな静かに開演を待つ。
終演後のカーテンコールは2回までと事前にお知らせがあったため
上演終了のアナウンスが終わるとみな静かに着席したまま係の指示に従い
退場を待つ。混雑を避けるためにブロックごとに案内されて黙って退場。
終始静か。興奮して感想を言い合ったりすることもない。
こんな終演後の光景は見たことがない。
会場外に張り出されているポスターも撮影禁止のため会場出た後は
まっすぐエレベーターもしくはエスカレーターで退場。
その間もみんな黙ったまま。
恐らくそこにいた観客の思いはただひとつ
「この舞台を守りたい。」
だったと思う。
恐らく当分この状態は続く。いやまた再度上演できなくなる可能性もある。
科白劇も同じ日に初日の幕があがり
今日が品川ステラボールでの公演が終了。
次は明後日から日本青年館ホールでの公演。
今次々とそれぞれ感染対策を行いながらいろいろな舞台の上演がスタートしている。
ミュージカル「憂国のモリアーティ」「死神遣いの事件帖-鎮魂夜曲-」などなど…
歌舞伎座も昨日から八月歌舞伎が4部制で観客席を制限して始まった。
歌舞伎座が5カ月ぶりに8月1日再開場 コロナ対策で演奏家らは黒マスク - 毎日新聞
稽古場からバックステージ、会場とどれだけ気を付けても足りないくらいで
神経が磨り減ることばかりだと思う。
できることをやりながら前に進んでる方たちには最大級のリスペクトを送ります。
私は自分ができること
・手洗い
・外出時はマスク
・外食は一人もしくは家族(夫)とのみ。感染対策をしてない店、グループでおしゃべりしながら飲食してる客が多い店には入らない
(感染経路を見ると会話しながらの飲食が一番危険。キャバクラ、ホストクラブ、居酒屋、カフェどこでも同じ。店側がいくら感染対策してても無神経な客がいたら台無し)
・よく眠りご飯をちゃんと食べて体調管理に気を付ける
これらを粛々とやり続けるのみ。
自分の身を守ることが自分の好きなものが続けられることに繋がるのだから。
舞台「KING OF DANCE」は愛知公演3公演がまだある。
今は無事上演できることを願うばかりです。