おうちに帰ろう

心茲にありと

「琳派と印象派」と三井記念美術館コレクション

雨混じりの土曜日に2つの美術館をハシゴしてきました。

 

琳派印象派展@アーティゾン美術館

www.artizon.museum



前期に続いて後期展示も会期終了ギリギリになってしまいましたが滑り込んで見てきました。(こんなのばっかり)

前期もよかったけど後期も素晴らしかった!!

印象派の作品は前期とあまり変わっていなくもともと展示作品数も多かったけど琳派の作品は大物が登場したので展示数以上に圧倒された。

特に目玉の俵屋宗達風神雷神図屏風2014年の「栄西と建仁寺」展以来のご対面

(※このときは総合文化展に東京国立博物館所蔵の尾形光琳の「風神雷神図屏風」も展示されてて両方見られたのもよかったです)

琳派印象派といってもそれぞれが影響しあっているという視点ではなく日本とフランスで都市文化によって生まれたそれまでの特定の階級のものだった美術が大きく変わった系譜の作品を集めた展示会となってるので共通点はあるけれど印象派の中に琳派の影響を見出すという見せ方はしていないです。

 

俵屋宗達尾形光琳酒井抱一はそれぞれ100年ずつ時代がずれてて尾形光琳俵屋宗達の作品に影響を受け酒井抱一尾形光琳に、という師弟関係ではなく作風が継承されていったが作品が並びちょっと感動しました。

尾形光琳「白楽天図屏風」酒井抱一「松島図屏風」俵屋宗達風神雷神図屏風を続けて見ると影響を受けつつそれぞれの個性も昇華されてて見とれました。

特に酒井抱一の「松島図屏風」は瀟洒な花木草花絵のイメージがあった抱一さまの印象と違い力強く抽象的な表現で波と松を描いててちょっとキュビズムっぽさもあり意外な発見でした。この3作品は石橋財団所蔵ではないので写真撮影できなかったんですが新しくコレクションに加わった作品のお披露目と合わせて各所蔵者から借りてきたあたり今後の企画展にも期待したくなりますね。

 

この3作品に興奮しましたがそれ以外でも酒井抱一・鈴木其一の師弟共作の夏図は額装まで使って描かれた初夏の花や端午の節句、竹と謎の生き物(何?)の掛け軸の洗練されながらも遊び心がある作品や酒井抱一「芥子藪柑子(けしやぶこうじ)図」の繊細な線と色使いと空間の使い方の美しさにほれぼれしたりと素晴らしい作品ばかり。

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夏図のひとつ。これ何の生き物?

鈴木其一は酒井抱一の作風を継承しつつも抱一が亡くなってからは独自の画風の作品も増えてきて「大山祭図」「吉原大門図」のような風俗画というか浮世絵っぽい作品があって背景の描き込みの丁寧さに「らしさ」を残しつつ意欲的に色んな作品に挑戦してたんだなぁと思いました。

 

琳派関連の作品に感動しすぎましたが印象派の作品の充実ぶりはさすがでした。アーティゾン美術館前身のブリヂストン美術館時代から所蔵していた作品を中心にルノアール、モネ、ドガなど錚々たるものばかり。モネもルノアールも日本の美術館に所蔵されてる作品が多くいったいどれだけ書いてたんでしょう?と思ったりします。

 

展示の最後を飾っていたのが鈴木其一の「富士筑波山図屏風」セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワールで富士山と筑波山に挟まれてサント=ヴィクトワール山が並んでいました。こういうのもちょっと面白なぁと思いました。

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富士と筑波山の右双

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間にCézanneのサント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール

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富士と筑波山の左双

アーティゾン美術館所蔵の作品は全作品写真OKなのも嬉しいですね。キリがないので全部は撮ってないですけども。

時間がなくてじっくり見れなかったですが常設展や同時開催されてた「久留米をめぐる画家たち」では明治以降の日本人の洋画家の作品が多数展示されてて有名な青木繁の「海の幸」もあってまぁとにかく充実してます。先日の1894~展でも思うところあってので日本の洋画の歴史を少し調べたくなりました。


続いて銀座線で京橋から三越前まで2駅移動して三井記念美術館

三井記念美術館コレクション特別展 国宝の名刀「日向正宗」と武将の美へ

www.mitsui-museum.jp

新年は毎年円山応挙の「雪松図屏風」が展示されてるのだけどオリンピックの予定があったからなのかコロナ禍で企画展の予定が変わったからなのかどうやら昨年は新年だけじゃなく夏にも再度展示されてたようです。

 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/list.html(令和2年度)

 

トーハクの松林図屏風と並んで新年に見る松2作品だったので少々残念な気持ちもありつつ国宝の刀「日向正宗」くんが展示されてるとあって行ってきました。

「雪松図屏風」はなかったけど同じ応挙の「竹図屏風」が展示されてて色調は「雪松図屏風」と同じく墨と金箔なんだけど雪松図の雪が降ったあとの朝日に照らされてるようなくっきりした松に比べて霞がかかったような竹は同じ墨で描いてても全然違う印象になっててこちらも素晴らしい作品でした。美術館入り口手前にある小部屋で美術館のVTRが繰り返し流れてるのを休憩がてらぼんやり見てたんですが三井家は円山応挙を支援していたとかでその所縁もあって応挙の作品を多く所蔵しているそうです。すごいな三井財閥

国宝の刀「日向正宗」は照明も綺麗に当てられてたこともあってキラッキラでしたね。

他にも貞宗や国広といった刀剣乱舞でお馴染みの刀工の刀もありました。

面白かったのが大名家の雛道具でこちらも毎年「三井家のお雛様」展としてひな祭りに合わせて展示されることが多かったのですが今年は開催されないのでその代わりなのか少しだけ展示されてました。三井家のお雛様展は行ったことなかったので雛道具を見たのは初めてだったんですがいやー大名家のおままごと道具はすごいな!っていう感じでした。特に乗物(駕籠)の内部の装飾が平安調の花鳥画や人物画が描かれてて凝ってるんですよね。貝合わせもシジミ大くらいの大きさの回に細かい絵が描いてあって文化ってこういうところにどれだけお金と手間を掛けられるかということなんだと思いました。

 

昨年のコロナ禍以降美術館に行く機会が減ってしまってのですが(2019年は33回だったのに2020年は11回と三分の一に!)少しずつペースが戻ってきて今も緊急事態宣言下ではありますが日時指定券などで混雑を避けて鑑賞できる環境が整ってきたのは嬉しい限りなのですが、近場の美術館でよい所蔵品が多い出光美術館は今何やってるんだろう?と気になりました。昨年多くの美術館が休館する中、3月1日まで開いてたのですが

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3月1日に行ったときのポスター

以降お知らせを見かけないなと思って調べたら今年度はずっと休館中だったのですね、

本来予定していたスケジュールを見ると見たかったなーと思うものばかり。

特に新たにコレクションに加わったジョー・プライス氏の江戸絵画コレクションのお披露目になるはずだった若冲と江戸絵画」「応挙と江戸琳派なんて素晴らしいものになっただろうなぁと。

こちらは長谷川等伯の屏風絵も多く所蔵していて定期的に展示されてたから「屏風絵」展で見れたかもしれないなぁ。ちなみに尾形光琳の「風神雷神図屏風」を模した酒井抱一の「風神雷神図屏風」も出光美術館所蔵です。

ただ最近公開された2021年度スケジュール

idemitsu-museum.or.jp

では「きらめきの日本美術」屏風絵と肉筆浮世絵という展覧会が予定されてるのでこちらが無事開催されることを祈るばかりです。