秋の優品展 桃山の華
ゴッホ展のあと急遽ぴゅーんと上野毛の五島美術館まで行ってきました。ちょうどその後に駒澤大学まで行かなきゃだったのでついでに行っちゃえーということで。行ってみたら国宝の紫式部日記は10/9~10/17の展示だったようで見れず(行ったのは10/6)。うーん残念。でもそれ以外にも「優品展」というだけあってお宝がたくさんでした。
大東急記念文庫所蔵の書のコレクションからは明智光秀、織田信長、豊臣秀吉などの戦国武将の手紙が展示。字にも性格が表れるのかなぁ?光秀が一番几帳面そうな字だったような気がします。思い込みかも。
まさに優品!と思ったのが「秋草蒔絵文箱」でこちらが制作されたのは桃山時代のようですが、中に入っているのは「紺紙金字阿弥陀経 平忠盛筆」の写経巻物だそう(こちらは展示されていません)。たまたまサイズがあったからこの箱に入れられてたんですかねーなんて贅沢な取り合わせ。特に重文とかに指定されていませんが、個人コレクションならではの逸品だなぁと思いました。すごくきれい。秋らしくてよかったです。
本阿弥光悦筆伝俵屋宗達下絵の作品が鹿下絵和歌巻断簡を始め新古今和歌集の色紙帖などたくさん展示されてたのもよかった。こんなに並んでるの見たのは初めてかも。鹿下絵和歌巻断簡はもとは22mにも及ぶ一巻の巻物で現在は断簡となって前半部分はMOA美術館、山種美術館、五島美術館で所持、後半部分はアメリカのシアトル美術館が所蔵しているとのこと。以前山種美術館で一片を見たことあります。
平家納経の巻頭部分を描いた鹿下絵と同じような構図だそうで、平家納経はなかなかお目にかかれないので別の作品でも少しでも雰囲気味わえるとちょっと嬉しい。色紙の方も本阿弥光悦の書と俵屋宗達(おそらく工房制作なのかな)の下絵がデザインが一点一点凝っていて一見すると地味に見える下絵も角度を変えると鮮やかに金色で模様が浮かび上がったりと工夫があり、光悦と宗達で競い合って作品を作り上げてきたことが伺えます。素敵な展示だったー
異色は狩野探幽の旅絵日記。元は京都出身の狩野派、探幽が江戸幕府に召し抱えられて江戸狩野を開くことになるけど、探幽はまだ京都と江戸を行ったりきたりしていたらしくその道中の旅日記だそう。東海道、箱根、近江と三か所を風景を今でいうスケッチしているのですが、どこかどこかはわからないけど、どこでも写生ができるように白紙の巻物と筆を持ち歩いてたんだなぁと思うと研究熱心と思うとともに、将軍様や大名からの依頼に応じて描くのではなく自分の心のままに描ける写生は貴重な時間だったのかしらと思ったりもする。
「曽我物語」の絵冊子(立派な絵本のようでした)と「酒吞童子」を退治する場面が展示されていた大江山絵巻。いずれも2日前にサントリー美術館でも同じテーマの屏風絵と絵巻物を見ましたが、酒呑童子は場面違いでサントリー美術館の方はまだ源頼光たちが退治に行く支度をしている場面でしたが、こちらは首を討ち取ったクライマックスシーンでした。血もしっかり噴き出してます。
曽我物語は巻狩りの場面でまだ仇討ちには至ってないです。続けて同じモチーフの作品を見るとより記憶に刻まれるんでよいですね。
紫式部日記は国宝の本体ではなく現状模写という手法で描かれたものが展示されてました。汚れや色落ちなども忠実に再現した模写方法だそう。確かに模写とは思えないくらいあちこち薄くなってたりかすれてたりしました。これはこれで写すの大変そう。国宝も見たかったなー。またの機会。
伝俵屋宗達と尾形光琳の「業平東下り図」もあり、宗達は色紙、光琳は元は屏風だったものを掛軸に改装したもの。宗達の方は金箔を使い色使いもはっきりしていて、光琳の方はかなりすっきりした色調の作品で、琳派の系譜の中心となる二人ですがやはり時代が違うので作品によってはかなり違いが出ますね。
ちょっと珍しいのが尾形乾山の「四季花鳥図屏風」。陶磁器の絵付が有名ですが屏風もなかなか。お兄さんの光琳に比べると全体的に渋め。少し漢画の影響もあるのかなと思いましたが光琳の同じ図式の屏風絵に倣った描いたという説もあるようです。
あとは陶磁や茶道具のコレクションも充実。黄瀬戸の立鼓花生銘ひろい子が美しかった。他にいいなぁと思ったのは古備前の数々。釉薬を使わず高温で焼き上げた作品群は密度が濃い感じで力強さと繊細さが混在してるようで素敵でした。
茶道具はお茶を点ててみないとほんとの良さはわからないなぁと毎回思います。いや、絵画だってそうなんですが、もうちょっととっかかりがありますからねー
とりあえずたくさん見ればいつかわかる時が来るかも…とうっすら期待しています。
ちょっと駆け足でしたが、優品に触れてとてもよい時間でした。