府中市美術館開館20周年記念「動物の絵 日本とヨーロッパ」展
2021年10月16日(土)雨が降るのか降らないのか微妙な天気の中
京王線散歩な1日を過ごしました。最初に訪れたのは府中市美術館。
前回府中市美術館に行ったのはいつだっけー?と思ったら2018年5月でした。
ニンゲン御破算とワールドカップ始まる前に見たいものは見ておかなきゃ!という気持ちで行ったんだったわ。
円山応挙の鯉の絵に心惹かれて見に行ったんだった。あれもいい展覧会だったなぁ
トップにある森狙仙の「群獣図巻」は今回も展示されてました。「鯉」は後期に展示されるみたいです。
開館20周年記念ということでかなり力の入った展覧会。取り上げるのは動物たち。
日本とヨーロッパで動物がどのように描かれてきたか?を様々な角度で分類して並べています。
取り上げる画家は日本の画家44名、ヨーロッパの画家31名、展示点数183点(前後期合計)となかなかのボリューム。
迷路のような展示会場(導線がわかりにくかった💦)は動物園のようでした。
入ってすぐにどーん!と展示されてるのが伊藤若冲の「象と鯨図屏風」(前期のみ)
若冲展以来のご対面でしたがやっぱりインパクトありますね。だけどただインパクトがあるだけじゃなくて水墨画らしい繊細な色の強弱や象の表情、背中を出した鯨の周りの波の造形がどこか雲海のようだったりととてもファンタジック。
象や鯨は涅槃図にも登場するモチーフだそうで、そういわれて改めて見るとどこかお釈迦様を見守るような静謐さも感じます。
そしてすぐ隣には「八相涅槃図」がありよく見ると象も鯨もいます。涅槃図は大勢の人や動物が嘆いているので絵全体はにぎにぎしいので象と鯨図屏風とはかなり印象が違いますけども。
涅槃図ではお釈迦様が入滅するのを見届けているのは弟子などの人間とともに鬼や獣などの鬼畜類も同じ絵の中に登場します。
日本では動物も人間も同じ世界に生きるものとして絵の中に登場していますが、西洋では神が作った動物を支配するのは動物よりも高等な人間たち、という図式になっているそう。
動物が絵画に登場するときは何かの隠喩だったり説話に基づいた意味づけがある場合に限られていたとのこと。
確かに西洋絵画で動物が描かれてるときって今回展示されてる聖ヒエロニムズのライオンやノアの方舟の動物たちのように神話や聖書の逸話を描いた作品に登場することが多く、普通の動物たちのそのままの姿を写し取った作品は少ない気がします。
では日本画で気になったものをいくつかご紹介。
やっぱり円山応挙の子犬は外せない。犬まみれコーナーの中でかわいいだけじゃなくどことなく品格を感じさせる一つが「藤花狗子図」
応挙の代表作藤図屏風に描かれた洗練された美しさのある藤の花の下に子犬が2匹。しかも一匹は藤の花を咥えてます。
咥えちゃってるのにどこか高貴な佇まい。体形はころころふわふわなのに表情がちょっとつんつんしてるところが堪らないですね。
そして仙厓義梵の「犬図」緩いというか悟りを開くとここまで省略した線で表現できるのかというあっさり犬。そして「きゃふんきゃふん」と鳴き声が書き込んであるのも萌える。きゃふんって。もうー好き。
長沢蘆雪の犬たち「狗子遊図」も捨てがたい。こちらはもこもこした犬が集団で戯れてるのでかわいさ爆発してます。クッソ。
府中市美術館名物?になりつつある徳川家光コーナー。その名も「家光の部屋」
初めて見たのですが確かに一度見たら忘れられない独創的な画風。
兎を正面から描いた「兎図」とか雀に見えない大きさの「竹に雀図」とか大きさや構図の取り方が他の画家たちとは違う目線で描いているように見えます。一つ一つの線は細かく丁寧に描いているのに出来上がった作品はどこかずれてる。そんな不思議な魅力がありますね。家光が描いたからこそ後世に伝わってきたのでしょうね。もし狩野派の絵師集団の中にいたら破門になってたかもしれない。そう考えると将軍様が描いてくれてよかったのかもしれません。
鳥獣戯画丙巻の模本はオールカラーで描かれました。元の丙巻は傷みがひどくかすれてる箇所も多くあるのですが模本では色まできっちり表現。擬人化という表現は何かを人間に例える言い方ですが、鳥獣戯画を始めとした動物たちの姿を描いた作品は動物を人間に例えるのではなく、動物の世界も人間界と同じである、という目線で描かれているので擬人化という言い方は正しくないのでは?という説明書き添えられていて「なるほど!」と思いました。
鳥獣戯画をもっと単純化してマスコットキャラクターのように描いたのが鍬形蕙斎(くわがたけいさい)の鳥獣略画式。実は北尾政美(まさよし)という名の浮世絵師だそう。北尾政美は知ってたけど鍬形蕙斎という名前は初めて知りました。切手にもなってたそうです。これはかわいい。
西洋絵画ではパブロ・ピカソの「仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳」はやられたーって感じでした。
極端に線が省略された羊にを従える2歳の子どもという構図はキリストに倣ってるのでしょうか。ピカソめっちゃ絵がうまいな。(何目線)ピカソのこちらの作品はひろしま美術館所蔵で、いつか行ってみたい美術館の一つなんですよね。西洋近代絵画を取り上げる美術展でよく作品が出品されてます。数年前には所蔵作品の人気投票を行ったそうで、このピカソの作品は2位だったそう。子どもの服の青が差し色のようになっててささっと描いたようでとても計算されていてもうー上手い!!って感じです。素敵。
2位はピカソ「仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳」、3位はシダネル「離れ家」。
— 惹起一休 (@jack19998) 2018年11月14日
広島県立美術館でも所蔵作品の投票やってるけど、ダリ「ヴィーナスの夢」が1位だろうな。なぜなら入ってすぐのところに展示されてるし、巨大だから。 pic.twitter.com/zklTKFGrK8
ギュスターヴ・モロー「一角獣」オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」はどちらも神話的世界を描いたもの。一角獣は処女にしかなつかないとされ一緒にいる美女はモローにとってはファム・ファタルのような手の届かない女性のイメージだそう。こちら以前ギュスターヴ・モロー展でも見たときは同じ世界観の作品群の中では比較的控えめな作品の印象でしたが、日本画と同じ部屋に展示されてるとそこだけ違う光が当たっているように見えますね。動物だけじゃなくて女性に対する考え方も日本と西洋(主にキリスト教圏)では全然違うことが作品が醸し出す雰囲気でわかります。肌も露わな女性を処女の象徴として描くってやっぱり倒錯してるよなぁと思ってしまいます。
ルドンの作品は天空に上っていくペガサスとミューズの取り合わせは神々しいですが、神のように崇めるか貶めるかのどっちかなんかいって感じですね。作品としてはどちらも倒錯してるところが好きだったりしますが。
他にも長谷川潾二郎(りんじろう)の猫はモダンで、小倉遊亀の「径」は夏の昼下がりを切り取った珠玉の一枚で素敵だし、動物をテーマにしてこれだけ多彩な作品を集められることが素晴らしいと思います。コメントも一つ一つ学芸員さんの思いが込められててじっくり読みこんでしまいあっという間に2時間ほど時間が経っていました。
会場手前にスタンプ台があって円山応挙の子犬と徳川家光の木菟と鍬形蕙斎の動物略画式の蛙と蟹のスタンプをメッセージカードに押せるようになってます。ほんとは「おめでとう」「ありがとう」などのメッセージスタンプとともに押すようなんだけど一人一枚限定だったのでメッセージ抜きで(自分用だし)3種類押しました。
思った以上に長居してしまいましたが次の目的地、土方歳三資料館へ移動します。
そちらはまた次の記事で上げます。