おうちに帰ろう

心茲にありと

9月のまとめ

更新が滞ってしまったので9月分のまとめとして。

<美術展>

しりあがり寿 回転展@練馬区立美術館 9/3

古代ギリシャ展時空を超えた旅@東京国立博物館平成館 9/10

・メッケネムとドイツ初期銅版画@国立西洋美術館 9/18

  15世紀後半にライン川下流地域の町で活躍したメッケネムと彼がコピーした

  デューラーの作品を集めた展示会。銅版画の作品なので、

  全体的に地味目なのですが、当時の庶民の様子などもわかり

  北方ルネサンスの誕生に繫がる細密な表現が見られて面白かったです。

  どちらかというと画家というより職人の作品群という感じ。

・ポンピドゥーセンター傑作展@東京都美術館 9/19

  20世紀アートを巡る旅。1年1作品で1906年から1977年まで展示。

  60年余りで表現方法が増えて、アートの存在価値も大きく変わったことがわかる。

  時代が近くなるほど理解するのが難しくなるのはなぜなのでしょう。

ルーブル美術館特別展 漫画、9番目の芸術@森アーツセンターギャラリー 9/22

  フランスで第9の芸術と呼ばれている「バンド・デシネ(漫画)」と

  ルーブルがコラボした作品の展示会。毎年ルーブルではルーブルをテーマにした

  作品制作を選ばれた一人の作家に依頼しているとのことで、その中から

  16作品が公開されました。日本人の漫画家さんの作品も展示。一番有名なのは

  ジョジョの奇妙な冒険荒木飛呂彦さんでしょうか。「岸田露伴ルーブルへ行く」

  が飛び出す絵本のように展示されてました。バンド・デシネと呼ばれる作品群

  は初めて見たのですが、日本の漫画とはちょっと趣が違い、装丁もイラスト集の

  のような感じで、スノッブの方たちが楽しむようなものという印象。発行部数も

  全然違うしね。

国芳ヒーローズ 前期@太田記念美術館 9/24

  バンド・デシネには現代の漫画より国芳の浮世絵の方が近いかも。

  また少年漫画の原型とも言えて国芳の人気の高さに納得。

  水滸伝の登場人物を描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」を前後期で一挙展示。

  とにかく派手で賑々しい。一枚の絵に入ってる情報量が多くて、構図と色の使い方

  が独創的。たくさん見るとちょっと胸やけがするくらい。

・浮世絵 六代絵師の競演@山種美術館 9/24

  六代絵師と謳ってますが、広重の東海道五十三次が中心。今年はサントリー美術館

  太田記念美術館でそれぞれ「名所江戸百景」「六十余州名所図会」

  「富士三十六景」とともに東海道五十三次も見ているので2度目だったんですが

  何度見てもいいものはいいですね。あとは貴重な写楽と歌麿様の美人画など。

  鈴木春信の素朴な浮世絵もよかったです。

ということで、8月にあまり行けなかったのと9月で会期終了の展覧会も多かったので

頑張って7件ほど行きました。

美術展のいいところは時間に縛られずに自分の行きたい時間に行けるところなんですよね。だからつい映画よりも美術展に行くことを選んでしまいます。

<映画>

君の名は。9/4

ハドソン川の奇跡 9/25

  上映時間96分というのがまず素晴らしい。記憶に新しい

  最近の出来事なので余計な説明はせず、ハドソン川に着水し乗客乗組員が

  無事脱出するまでをドキュメンタリーでも見るように音楽なしで一気に見せて

  その上で容疑を覆す説得力を持たせるのはイーストウッド監督の職人芸と

  トム・ハンクスの演技力のなせる技。お見事でした。

ということで映画は2本。ちょっと少なかったかなぁ。

<舞台>

・娼年 9/1

こちらは1本。ふむ。

<サッカー観戦>

FIFAワールドカップロシア大会 アジア最終予選 

 日本vsUAE埼玉スタジアム2002 9/1

このブログを書き始めてから初のサッカー観戦ということにまずびっくり。

行かなくなったなぁー、サッカー。そろそろ三ッ沢にもうちょっと行きたい。

この試合に関してはもう何もコメントしたくないので省略。

負けて埼スタから帰るのは死ぬほどつらいということはよくわかりました。

 

もうすでに10月も3分の一が過ぎようとしてますね。また後日更新したいと思います。

 

 

 

 

 

特別展「古代ギリシャ -時空を超えた旅」

東京国立博物館平成館で開催されている特別展「古代ギリシャ 時空を超えた旅」

に行ってきました。

古代ギリシャと言っても紀元前7000年の新石器時代まで遡り(第一章)

その後、クレタ島を中心に発展したミノス文明(第二章)

ギリシャ本土のミュケナイ文明(第三章)

幾何学様式~アルカイック時代(第四章)

アテネで民主政が確立したクラシック時代(第五章)

古代オリンピック(第六章)

マケドニア王国(第七章)

ヘレニズムとローマ(第八章)

とかなり長きに渡る歴史の流れを8ブロックに分けて展示されていました。

おそらく一般的に頭に浮かべるギリシャのイメージはクラシック時代の遺跡が

多いかもしれません。有名なパルテノン神殿はこのあたり。

いやぁ、正直ここまで長い時代がカバーされてるとは思わず

作品の多様性に驚きました。

第一章は新石器時代の銅鐸や原始的な石像など。このあたりはいかにも

古代という感じ。

第二章のミノス文明になると絵付された陶器などが目を引きます。

クレタ島を中心とした海洋文明らしく、タコ柄の壺などユーモラスなものが

はっきりと絵柄がわかる状態で残っています。すごいなぁ。

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乾燥している土地ならではなんでしょうか。紀元前1400年頃とは思えない。

日本だと縄文時代あたりですかね。

同じく海洋文明が発展したサントリーニ島(テラ)からは色鮮やかなフレスコ画。

ポスターやチラシに大きく掲載されてますね。

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火山灰の下に埋もれていたからなのか保存状態がいいらしいです。

サントリーニ島は12年ほど前に訪れていますが、遺跡巡りなどはほとんど

しなかったので初めて見ました。もっとちゃんと見て来ればよかったなぁ。

 続くミュケナイ文明期の展示は銅剣や黄金の装身具やボタンなどが

多く展示されてました。金細工もかなり細かい文様が入っていて

高度な技術を持っていたことが伺えます。

このあと暗黒時代(いつも思うんですが暗黒時代って何なんでしょうね?

多分遺跡等が残ってなくて検証できない時代があるってことなんでしょうが)

を経て幾何学様式アルカイック時代として、ギリシャが各地と交流を持つなかで

影響を受けたと思われる幾何学文様の甕やアルカイックスマイルの石像などが

並んでいました。

このあたりからだんだんギリシャのイメージに近いものが出てきました。

第五章のクラシック時代になると都市国家が成立し、民主政も確立、

演劇や哲学が盛んとなり、パルテノン神殿などが建てられました。

アクロポリスの丘近辺から出土した石像や陶片追放などに使われた政治家の名前が

書かれた陶器の欠片などが展示されていて、この頃には芸術も政治もかなり

出来上がっていたことが伺えました。

第六章は少し趣向が変わって古代オリンピックに因んだ作品群を

多数展示。競技する選手の像や競技中の様子が描かれたアンフォラなどが

見ることができます。

実際このあたりまで見るだけですでに結構へとへとでした。あと2章~!

第七章はマケドニア王国。今ではマケドニアというと旧ユーゴスラビアから独立した

国という印象ですが、元々はギリシャ王国の中心だったのですね。

金山があったらしく、金の装飾具やコインなどが展示されていて

中でもギンバイカの金冠は細工がとても繊細で美しかったです。

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そして第八章はヘレニズムとローマ。アレクサンドロス大王の死後のヘレニズム時代

ギリシャ芸術は各国へ影響を与え、ギリシャ芸術そのものも円熟してきた頃。

その後ローマに征服されますが、ローマ時代の芸術はギリシャから影響を受けたものが

多いようです。

ギリシャ人風のひげや髪形をしたローマ人の頭部の石像などが残っていました。

美しかったのはイルカに乗ったアフロディテ像。これは会場の入り口に

展示されているのですが、ギリシャ文明がエーゲ海を中心に広がり芸術性も

合わせて高まっていった象徴のように思えました。

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 と、まぁ駆け足で振り返りましたが、ギリシャ文明について

知識がほとんどないことが残念でしたが、それでもかなり楽しめました。

ポンペイの遺跡を見た時も思いましたが

人間の暮らしに必要なものはすでに3000年前くらいに基礎はできあがっていて

あとは少し便利になったりやり方変えたりとアジャストしているだけんですね。

演劇も音楽も文学もスポーツも人が生きていくためにはなくてはならないもの

としてずっと存在しているんだと思うと

役者さんやミュージシャンやアーティストやスポーツ選手ってすごい職業なんだなぁ

と改めて思う次第。

やっぱりそういう人たちをずっと応援していきたいなと強く思いました。

 

舞台「娼年」

2016年9月1日舞台「娼年」マチネ公演@東京芸術劇場プレイハウス

に行ってきました。

テレビのインタビューで主演の松坂桃李くんが「濡れ場が10回ある」と

言っていたのでそれなりに心構えをして見に行きました。

実際の舞台の上では「濡れ場」という響きが控えめに思えるほどの

肉体表現が繰り返されていました。

 

女性に興味もなく、セックスは退屈、と語り、大学にも行かず

下北沢のバーでバーテンをしている無気力な若者、領が

ホストの友人が店に連れてきたボーイズクラブの女性オーナー(高岡早紀さん)

にスカウトされ男娼となって客とのセックスで自分を見つけていく物語。

ざっくり言うとそんなお話しです。10回の濡れ場というのは

最初に男娼になるためのテストでセックスしたオーナー静香の娘咲良

、客の女性たち、男娼の同僚、静香を合わせた男女合計10人との絡みでした。

実際には全員とセックスするわけではなく、手を握るだけでいっちゃうという

70歳のご婦人(江波京子さん!)や排尿しているところを見てほしい女性客

も含まれているので本格的にセックスしているのは8回かな。

回数はともかくそれぞれのセックスシーンは十人十色といいますか

人の嗜好は様々でそれに合わせて表現を変えるのは大変だろうなぁと思いました。

手順というか段取りを覚えて、いかにもその通りにやってます

というんじゃなくて、本気で感じてるようにやらなきゃならないし

音(さすがにあの時の音はリアルではないと思うので)にも合わせないと

いけないし、アクションの型を覚えるようなものなのかなと

「ほんとにやってんじゃないの?」

と思うような光景を目の前にしながら考えていました。

 

ストーリーとしてはもっと肉体表現に徹してもよかったんじゃないかな。

原作は未読なのですが、主人公の領の母親も娼婦で、仕事の帰りに

心筋梗塞で倒れて亡くなったという設定で、寂しさが長いこと

埋められなかったが、身体を重ねることで、本来の自分を取り戻せた

ことになっています。

セックスで自分を取り戻すというようなお話し健全なので、

そこで終わってくれた方が気分的には清々しい気がしました。

最後、領が静香に愛を告白し、HIVに感染して余命数か月となった静香と

セックスした後、静香は亡くなるのですが

その件はいらなかったかなぁ。

突然、話がメロドラマになってしまって、興醒めしてしました。

それまで愛だの恋だのといった感情ではなく、身体を通したコミュニケーション

によってお互い通じ合えるということを伝えてきたのに

ここでいきなり愛を語ります?って感じ。

 

もっと身体性を突き詰めて語った方がかっこいいと思うし

見終わった後に爽快感が残るように思います。

乾いた話に徹したほうが表現がねっとりしているだけに

バランスが取れたんじゃないかなと。

 

とはいえ、文字通り身体を張った桃李くんはあっぱれだし

今しかできないというのはその通りだと思うので

頑張ったなぁと拍手を送りたいです。

途中からどんどん桃李くんがきれいになっていくのを見るのは

楽しかったです。

女優さんたちも全く手加減なしで向かってくるので

一人で10人相手するってほんとに消耗戦だと思うのです。

マチネとソワレ合わせたら1日に20回でしょ。

若くなきゃできないってもんですよ。

 

おそらく再演もないと思うので、今この時に見ておいてよかったなと

思いました。

 

しりあがり寿の現代美術「回・転・展」

練馬区立美術館で9/4までの会期で開催されていた

しりあがり寿の現代美術「回・転・展」に駆け込みで行ってきました。

 

漫画家として知ってはいても現代美術でどんなものが展示されているのか

正直よくわからなかったのですが、何か面白そうかなという軽い気持ちで

見に行きました。

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漫画の原画や大きな布地に描かれた墨絵が1F、

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2Fには展覧会名そのものの

回る回る作品群。

チラシにも出ている象徴的なヤカンからダルマ、アート、領収書から下着、

食べ終わった惣菜のパックなどゴミになるようなものまでが

お花畑のように並べられて回ってます。

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回ってるとゴミがアートになる不思議。

その他、カセットテープやレコード盤、歴史の一場面(江戸城開府)のジオラマとか

歴史は回るというコンセプトらしくいろいろなものが回ります。

回転道場という作品ではとにかく同じ場面が延々と続く映像が。

共演は緒川たまきさんという本格的なもの。

 

前に進むでもなく止まるでもなく回れっていうのがいいですね。

とにかく回ってれば何とかなるってことでしょうか。

回りすぎると目が回っちゃうけど。

 

このあと刈谷市美術館、伊丹市美術館に巡回するそうです。

みどころ | しりあがり寿の現代美術『回・転・展』

 

映画「君の名は。」

今年の初めくらいから映画を見るたびに予告編を目にしていて

気にはなっていましたが、公開されるや否や

猛烈なスタートダッシュで観客動員を伸ばし、一躍話題作になったので

ミーハー気分で行ってきました。

シネコンで予約しようとしても翌日分でもすでに残席わずか

という状態。えらいことになってるんだと実感し

普段はあまり行かない時間帯(日曜午前)に映画館へ。

着いてみると思った以上に若い子が多く、最近見た映画の中では

一番平均年齢が低かったかもしれません。

 

で、感想ですが、うん、これは若者が見るに相応しい映画だなと思いました。

基本的にはボーイ・ミーツ・ガールのお話。

色んな障害ですれ違い、最後にようやく出会えるという古典的なプロットを

時空を超えたり、隕石が落ちてきたりというSF的要素でお化粧した

ラブストーリーでした。

評判通り、絵が美しかったですね。個人的には信濃町駅前の歩道橋が重要な場面で

登場したのがちょっと嬉しかったです。最近はあまり通ってないですが

神宮球場や今は無き国立競技場への行き返りに通っていて、

色々な思い出のある場所なので、そうそうこんな景色だったなー、昔は六本木ヒルズ

なんてなかったけど今は見えるんだなーなどと感慨深くなりました。

 

 突っ込みどころとしては、いくらなんでも入れ替わってるときに

時間がずれてることに気づくでしょ、とか思うんですが

入れ替わってるときは、身体のある方の時間に合わせちゃっていて

戻ると記憶が曖昧になるからわからなかったんだろうと思うことにしました。

 

音楽の使い方も素晴らしく曲が入るタイミングや歌詞と場面のシンクロ度合も

計算されていて、それで泣けるほど私は純粋ではないのですが

中高生だったら歌を聴いただけで泣けてくるのかも。

 

SFファンタジー青春ものという昔だったらNHKの夕方6時くらいから放送してた

30分ドラマとかにありそうな感じというか。大林亘彦監督テイストというか。

(例えが古い)

こういう映画に若者が共感するっていうのは何かよいなぁと

思いました。友達同士で映画館で見てほしいですね。

 

 

 

 

 

「そうだ、京都行こう」ということで②

引き続き京都旅2日目。

今日はもう一つの若冲展、相国寺承天閣美術館へ。

前日夕方からめちゃくちゃ快晴になったものの

日付変わったらやはりどんより。台風は関西からには直接影響ないものの

天気予報では午後から大雨とか。念のためレインシューズへ履き替え。

(その後台風は東北に上陸。被害も大きかったですね。)

 

イノダコーヒーのモーニングでお腹を満たし、雨が降る前に行動開始。

 

相国寺は特別拝観時期を外しているので人もほとんどおらず

道路の補修工事を実施している作業員の人たちが働いているのみ。

それでも相国寺の大きさに圧倒され、京都五山に数えられるお寺の威厳を

ひしひしと感じながら開館を待ちました。

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写真では伝わらないかもしれないけど結構デカイのです。

 

今回の承天閣美術館の展示の中心はコロタイプ印刷による「動植綵絵」30幅らしいけど

東京都美術館で開催した狂乱の若冲展で本物を見ているので

さらっと眺める程度で。実際にはかなり精密に再現されていて、製法を見ても

かなり手間のかかるものらしいですね。

 

お目当ては常設展示の 鹿苑寺大書院の障壁画。一之間~四之間と狭屋之間までを

飾った障壁画が一挙展示されています。

部屋に入るとまず右側に月夜芭蕉図、左側に葡萄小禽図、突き当りに葡萄図、

芭蕉爬々鳥図、竹図と並び、反対側に松鶴図、菊鶏図、秋海棠図、双鶏図

と展示されていて圧巻の一言。

元の部屋の間取りと同じように並んでいれば完璧なのですが

それは贅沢というもの。

東京都美術館若冲展でも一部(菊鶏図、芭蕉爬々鳥図、松鶴図、葡萄小禽図がそれぞれ前後期にわかれて2作品ずつ展示)見られましたが

いっぺんに見られるなんて有り難すぎる。

改めて若冲の襖絵、空間が広すぎてヘン。

狩野派の襖絵に比べると白い部分が多すぎて、よくこれでOK出したなーと

感心します。当時の相国寺の大典顕常は大胆な人だったのでしょうかね。

明らかに異端者ですが理解者がいてくれた若冲は幸せ者かもしれません。

 

若冲が手本とした明の林良の鳳凰図と若冲鳳凰図が並んで展示されていて

似てるんだけど、目元の描き方や尾の丸まり方に違いがあり

そっくりにするだけじゃなくてオリジナリティを出してるあたりはニヤリとします。

トレードマークとも言えるハート形の羽も描かれています。

これが常時展示されてるなんて太っ腹。

平日の朝イチだったからかガラガラでほとんど独占状態でした。

眼福眼福。

 

続いていよいよ大徳寺聚光院へ。この頃から雨がぽつぽつ。

聚光院の拝観は予約しておいた方が確実、ということだったので

29日12:40の回を事前に予約。行ってみたらやはり予約なしで入るのは

厳しそうでした。毎回30人程度ずつ入場で1回につき40分程度の鑑賞時間。

係りの人の説明付きです。

写真撮影も不可。

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 荷物も預けて鑑賞せい、とかなり厳重。そういえば金地院も荷物は

ロッカーに預けたわ。やっぱり襖とか大きな荷物がぶつかって

傷がつくとか困るからでしょうかね。

まずは庭園から見学し、一通り説明を受けたあとに御開帳。

どーんとこの写真と同じような光景が広がっていた!

と言いたいところですが、うーん、何だろう、この写真がよく撮れ過ぎている。

実際には真ん中の襖は開かれているし、回りの戸も全部開けてくれるわけではないので

視界いっぱいに絵が広がる!というような感じにはならず。

部屋の中にも入れないので廊下から覗き込むようにして見なければなりません。

正面の障壁画はかなり遠く、グループで一緒に見るので見ている時間も限られます。

前日の手に触れんばかりの距離で見た贅沢を知ってしまったあとに見ると

とにかく遠いなぁ…という印象です。説明も駆け足なのであまり余韻に

浸れず。絵をじっくり見るなら京都博物館に展示されているときに

見た方がいいのかもしれません。ただあるべき場所にある状態で

鑑賞する、ということも大事なのでこれはこれで貴重な機会だったと

思います。事前に読んだ小説「花鳥の夢」では

狩野永徳が父の松栄を見下していた設定になっているので、

見ているこちらも何となく松栄の絵はちんまり

してるな、などと思ってみたり、永徳も全ての絵について魂を込めていた

わけではなかったので、ちょっと斜めに見てしまいますね。

とはいえ、小説の中でも書いた絵がことごとく戦乱に巻き込まれて

焼失しており、この規模で残っている作品がほとんどないので

生で見られることは喜ぶべきこと。文句を言ってはバチが当たりますね。

 

その他にも大徳寺内に拝観可能な塔頭があり、多くは庭園が見応えありそうなので

せっかくなので見て回りました。

大仙院。こちらは方丈と玄関が国宝とかで、やはり撮影不可。

枯山水の庭園は宇宙過ぎて凡人には意味不明なのですが、

方丈内に狩野元信(永徳の祖父)や之信の障壁画があり

こちらは間近で見ることができたので得した気分。

中からは撮影できませんが、玄関の外側をパチリ。

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続いて瑞峯院。こちらはキリシタン大名として名高い大友宗麟が開祖したお寺だそう。

蓬莱式の庭園もさることながら、参道に植えられた待っ過ぐに

伸びた松が印象的。

 

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曲がった松をどんどん落としてまっすぐになるように

剪定しているんだそうな。

方丈前の庭園は蓬莱山式庭園。こじんまりとしていますが

人も少なく雨がそぼ降る庭を廊下に座って眺めるのも

なかなかよかったです。

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方丈裏の庭園は閑眠庭は重森三玲氏の作庭だそう。

キリシタン大名大友宗麟にちなんで石の流れが十字架に

組まれているのが珍しい。直線的なのでモダンな感じがします。

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最後に龍源院。

室町時代禅宗方丈建築としてその遺構を完全に留めている唯一の建築だそう。

方丈もさることながら、こちらは庭園の種類がいろいろあって

どれも素敵でした。

滹沱底(こだてい)という阿吽の石庭。

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手前にもう一つ石があって阿吽になってるんですが見切れちゃいました。

 

砂利ではなく苔がしきつめられている竜吟庭

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方丈前の石庭もユニーク

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あと壺庭という一番小さい石庭もあり。

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晴れていると太陽の光が一条横に入る瞬間が

あるらしいのですが、この日は雨だったので見えませんね。

狭いながらも奥深く吸い込まれそうな不思議な空間でした。

 

大徳寺内を回るだけでも結構な時間が立ち

雨もかなりひどくなってきたところで終了。

 

禅宗のお寺の庭園の奥深さをほんのちょっとだけ知ることがができて

いい時間でした。雨が降っていたのも却ってよかったかも。

 

さて、ここで京都を離れ琵琶湖に向かいます。

夕方に到着したときはほぼ土砂降り。

いったい明日はどうなることやら。

 

 

「そうだ、京都行こう」ということで①

ということらしいので

8月の終わりに少しずらした夏休みを取り京都へ行ってきました。

↑のリンクにある大徳寺聚光院の狩野永徳、松栄の襖絵は通常京都国立博物館

所蔵しているらしいのですが、2016年3月1日~2017年3月26日まで

里帰りしているとのこと。博物館の展示というと当然ガラスケース越しに見ることに

なるのですが、今回は当時さながらお堂に襖としてはめた状態で展示。

こんな機会はそうないので夏休みの旅行はこれに決定。

同じく生誕300年を記念して若冲展も細見美術館相国寺承天閣美術館

開催されていたので合わせて見ることに。

京都を訪れるのは16年ぶり。

(2000年に友達の結婚式で行った以来。

ミレニアムだったなと印象に残ってました)

上記3つ以外でどこに行くかなと考えて、狩野永徳見るなら長谷川等伯でしょうと

南禅寺金地院等伯の猿候捉月図、老松図)

智積院等伯一門の「桜図」「楓図」)

をまずセレクト。

 あとは俵谷宗達の白象図のある養源院。ここは智積院と目と鼻の先なので

ちょうどいいかなと。

あとは時間があれば昨今外国人に大人気という

伏見稲荷神社にでも行こうかと緩めの計画を立てました。

台風10号の動きも気になり、もしかしたら道中ずっと雨なのではという心配しつつ

朝食は東京駅地下のグランスタで買おうという

野望は早すぎて店が開いてないという事態の前に打ち砕かれて、

しょうがなく新幹線乗り場の売店でサンドイッチを購入。

しかし、昨今の駅弁はクオリティが高くコンビニのサンドイッチを

軽く上回るおいしさでした。6:50発の新幹線で向かいました。

 東京はどんよりとした曇り空。関西方面の天気予報も降水確率80%。

レインシューズとカッパまで持参しましたが、京都着いたときはまだ雨は降っておらず

おもい曇天。ものすごい湿度。

2日間有効のバス・地下鉄乗り放題チケットを駅構内の観光案内所で購入し

さっそくバス乗り場へ。最初の目的地は細見美術館

細見美術館へ向かうバスはかなりの清水寺祇園あたりを通るルートなので

かなりの混雑。そのうち半分くらいは外国人だったかなぁ。

バスで移動している途中に雨が降り出し、ワイパーがかなり忙しく動いても

ぬぐえないくらいの強い雨。とうとう来たかと思ったのですが

美術館前に到着したら雨がちょうど止み、少し外で並ばなければならなかったので

助かりました。

 15分ほど並んで中に入ると思った以上に部屋が狭く、人はそこまで多くないけど

大きな絵を見るのはちょっとつらいかな。

若冲展にも出品されていた「虻に双鶏図」「糸瓜郡虫図」「雪中雄鶏図」などは

また会ったねーという感じ。

その他、水墨画を中心に多数の鶏の屏風絵や同じく若冲が好んで描いた

野菜(「里芋」)など楽しい作品がたくさん。

細密な着色画と遊び心たっぷりの水墨画、どちらも個性的ですが

いろいろな絵師の作品を見るにつけ、どこの流派にも属さなかった若冲

つくづく唯我独尊、亜流の人であったのだなぁと思います。

細見美術館は1フロアに1展示室でどんどん階下へ降りていく構造なので

もう一度戻って見たい、みたいなことができずちょっと残念でした。

あと、係りの人が「鑑賞時にはお静かに、会話等はお控えください」というような

メッセージボードを持っていたのですが、東京の展示会であまり見かけないので

驚きました。確かに美術館に入ってしばらく「何か落ち着かないな、集中できないな」

と感じたのですが、それは何だかガヤガヤしていたからなのだと途中で気づきました。

東京でも友人同士で話しながら見る人もいますが、

もう少し声を潜めて会話してるのだけど、こちらでは普通の声で

会話しながら見てるんですね。これは大きな違いだなぁと思いました。

いや、あの注意書きがなければもっとうるさかったりするんだろうか。

 そんなことを思いながら美術館を後にして、次の目的地へ。

 

お次は南禅寺金地院。細見美術館からは歩いて15分ほどらしく

炎天下だったら何らか交通機関を使うところだけど、雨も止んで

曇り空、気温もそれほど高くなかったのでぶらぶらと歩いていくことに。

岡崎公園を抜けて、京都市美術館の前を通り、琵琶湖疎水を眺めながら

南禅寺方面へてくてくと。途中、懐石料理屋さんでそば定食で

昼食をとり、昼過ぎに金地院へ。このあたりは人通りも少なく

緑が多いので散歩にはちょうどよいですね。

↓は琵琶湖疎水記念館前の噴水?

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 南禅寺内にはレンガ作りの水道橋もあり、お寺巡り以外の京都の

楽しみも発見できました。このあたりはブラタモリの影響かな。

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 こちらは水道橋。ちょっとローマ時代の遺跡っぽい。

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琵琶湖から引かれた水が勢いよく流れてます。

そんなこんなを眺めつつ金地院へ。

長谷川等伯の猿がとにかく見たかったのですが、通常の拝観券とは別に

特別拝観券が必要(+700円)で入る時間も決められていました。

毎時30分に集合し、係りの人に案内されながら鑑賞します。

私たちが行ったときは、全員で6名ほどで中に入りました。

各部屋に襖絵や屏風があり、目の前30センチほどの近さで見ることができます。

当然ガラスケースなし。まず最初は狩野探幽の襖絵のあるお部屋。

すでに着色も落ち、下絵が見えている状態だけど、何より本物が

手に届く近さにあることに感激。下絵が見えていることすら貴重に思える。

そして廊下をさらに奥へ進み、茶席に連なる部屋へ。

こちらで長谷川等伯猿猴捉月図と老松図とご対面。

いやあ、これはほんとに素晴らしかったです。

写真などで見るのと間近で見るのとは全然違う!

毛並みはふわふわで表情は愛嬌があり、狩野永徳がこの猿を見て

嫉妬した(らしい。)のも納得。元々が宋の画家牧谿の「猿候図」を

手本にしているとのことで、同じように猿を描いている絵師はたくさんいますが

別格でした。堂々としているのに愛らしいというバランスが絶妙。

自然光の中で間近で見られる至福。これを見られただけで京都まで

来た甲斐がありました。

金地院、猿にばかり気を取られておりましたが実は他にも有名なものがたくさんあり

東照宮(天井画が狩野探幽、土佐光起による三十六歌仙あり)

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小堀遠州作庭の鶴亀の庭として有名な庭園

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同じく小堀遠州作の八窓席の茶室(こちらは写真撮影不可)、など見所満載。

お茶の世界と庭園は奥が深いと思い知ったのでした。

 

 

金地院を出るころは晴れ間が出てきて、雨はいったいどこへやら。

 

次に向かうのは智積院。地下鉄とバスを乗り継いで向かいました。

こちらは本堂その他は近年再建されたものが多く

目玉は体育館のような宝物殿に所蔵されている長谷川等伯一門の障壁画(国宝です!)

桜、楓、秋草、松、黄蜀葵(トロロアオイ)といったモチーフが描かれています。

キンキンに冷えた宝物殿に入るとスイッチがあり、押すと解説が流れます。

ガイドを省力化。まぁ、それほど多くの人は訪れないのかもしれませんが

国宝級の作品に四方を囲まれることもそうないと思うので贅沢な空間でした。

 

続いて、すぐ近くの養源院へ。

お隣は三十三間堂なのですが、そちらはスルー、

閉館ぎりぎりの時間に滑り込みました。お寺は閉まるのが早いのよねー。

 ここのお目当ては俵谷宗達の白象図だったのですが

延々説明されたのは、伏見城で自害した徳川家臣の霊を供養するために

移設されたという血天井。京都各地にあるようなのですが

こちらは鳥居元忠が自害した跡が見られることで有名らしい。

いろいろ調べると実は血天井が見られる場所として紹介されているものがほとんど。

白象や麒麟や唐獅子はおまけみたいな扱いでした。

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1日目、お寺を巡るのはここで終了。

最後は24時間いつでも参拝可能は伏見稲荷神社へ。

外国人人気観光地ランキング3年連続1位らしいので、

どんなことになっているのか見るために行くことに。

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すっかり快晴に!

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想像以上の外国人率が高く、しかも若い子が多い。

自撮り棒を持参しあちこちで写真を撮るので

人を入れずに写真を撮るのが至難の業。

雰囲気としては原宿とかに近い感じ。

これは夏休みシーズンだからなのかなぁ。

日本人の方が少なくて、気分的にはなぜかアウェーな感じ。

まぁ確かにフォトジェニックな場所だし、

SNSなどにアップしたときに映えるんでしょうねぇ。

 日本なのに海外にいるみたいな気分を味わって帰ってきました。

夜は適当に歩いていたら錦市場にたどり着いて

ふと見たら若冲の生家跡がありました。

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京都ってほんとにえらいとこだなぁと実感した次第。

1日目はこうして終了。

2日目は相国寺承天閣美術館といよいよ大徳寺聚光院へ。

いったんここで閉じます。