川合玉堂展 ー山﨑種二が愛した日本画の巨匠ー
桜を散らすような雨が降る日曜日(3/28)に行ってきました。
山種美術館創立者の山崎種二と交流のあった川合玉堂の作品を振り返る展覧会。近代日本画コレクションが充実している山種美術館らしい展覧会でした。個人の趣味で集めた作品を収蔵している美術館はテイストが一環しているので好みが合えば大抵外れがないんですよね。そういう意味で山種美術館のコレクションは行けば必ず好きな作品に出会えるので楽しみです。
川合玉堂は最初は円山四条派を学び、その後狩野派の橋本雅邦の作品に感銘を受けて師事したとのことで双方の技法の良いところを取り入れながらも山の描き方は独自の世界を切り開いててむしろ印象派とかに近い。一昨日国立近代美術館で長瀞での川下りの様子を描いた「行く春」という屏風絵を見ましたがこちらには屏風絵の展示はなく、個人の邸宅に飾るような珠玉の作品群が揃っていました。
- 好きな作品① 荒海(昭和19年)
クールベの絵を思い出しました。日本画で波打ち際に打ち寄せる波を描いた作品といえば東山魁夷が思い出されますがそれよりも印象派(クールベは印象派ではないけど)に近い感じがします。日本の美しい風景を描いた画家なのに不思議です。
川合玉堂《荒海》(山種美術館)は、戦時中の昭和19年に開催された文部省戦時特別美術展の出品作。荒波と微動だにしない岩が描かれた本作は、神奈川県富岡(現・横浜市金沢区)の別荘・二松庵での写生に基づいて描いたとされています。(山崎) pic.twitter.com/iniAteDwrp
— 山種美術館 川合玉堂展 開催中! (@yamatanemuseum) 2017年12月4日
と思ったら同じような感想を書いてる方がいました。
戦後は奥多摩に住まいを移し山村の風景を描いた作品を多く残してますがますます印象派に近くなっているような気がします。
- 好きな作品② 残照(昭和27年)
晩秋の山が夕闇に包まれようとする瞬間を描いた川合玉堂《残照》(#山種美術館)。夕焼けの光が山を赤く染める色彩と墨のバランスが絶妙な作品。山道には一日の仕事を終え、家路につこうとする馬と馬子が描かれています。(山崎) pic.twitter.com/gaYeX26C7V
— 山種美術館 川合玉堂展 開催中! (@yamatanemuseum) 2021年3月25日
日本の風景でありながら表現は印象派。日本画に登場する山は中国の山水画の手法で描かれていましたがこの頃になるとあるが見たままの山の姿を描くようになっています。先日、山の画家と言われる新版画の吉田博が山を描いた作品を見ましたがそちらに近い感じ。
- 好きな作品③ 高原帰駄(昭和30年)
蓑を身にまとって家路へと向かう馬子と馬の姿が目を引く川合玉堂《高原帰駄》(山種美術館)。一方、背景にそびえる雪山は、墨の絶妙な濃淡とにじみ、下地の塗り残しだけで巧みに描かれ、玉堂の優れた画技と表現力がうかがえます。(山崎) pic.twitter.com/ZGTRAE1juu
— 山種美術館 川合玉堂展 開催中! (@yamatanemuseum) 2017年12月20日
これも山ですがモネの描く睡蓮のように色の濃淡で描き分けられてます。見れば見るほど印象派。面白いなぁ。
展示されている中で2点ほど写真OKな作品がありました。
木の描き方は円山四条派っぽくて山肌の表現は狩野派というような。全体の雰囲気は文人画という感じなのですよね。やっぱり本人の性格が風流人ぽかったのかなぁ。どこかゴッホにも通じる感じもあるような。
狩野派の影響がありつつも遠景の滝に印象派風の片鱗が見え隠れ。浦上玉堂(同じ画号ですが意図的?なのか?特にそのあたりに言及してる記事は見当たらないけど)や池大雅のような抜け感もあって。戦後の奥多摩時代にこのあたりの作風が昇華されていくのですね。
解説文によるととても穏やかな人だったそうで画家とか芸術家はアクの強い人多そうだけどそういうこともなく初代館長山﨑種二さんとの書簡のやり取りを読んでもとても常識人と言う感じ。作風にもそれが現れて穏やかで温かみがある作品が多いです。俳句にも親しんでいて書も嗜んでいたようですが、↑にも書きましたが文人画の雰囲気がありますね。志向に通じるものがあるのかなぁ。
横山大観と川端龍子と3人で松竹梅をテーマにした作品を描いてるのですが3人の個性がよく出てて面白かったです。大観は堂々と、龍子は個性的、玉堂は柔らかい。玉堂がアクの強い二人の間を取り持っていたというのがよくわかります。
そして、第二展示室へ。
第二展示室には玉堂に関連する画家の作品群があり玉堂が衝撃を受けたという狩野派の橋本雅邦の作品は堂々たる狩野派らしい作品でした。明治期の作品ですが江戸時代から変わらず伝統を引き継いでるなぁという感じ。
玉堂の弟子の児玉希望の「モンブラン」は玉堂の山の描き方の影響を受けてますね。描いてるのが日本の山じゃなくてモンブランなのでなおさら印象派風(しつこい)です。面白いのが日本の洋画家が油彩で描いても印象派らしい作品にならないのに日本画の手法で描くと印象派に見えるんですね。何でだろう?
ひとしきり作品を堪能したあとはロビー横にあるカフェで和菓子を頂きました。毎回展示作品に合わせた和菓子をカフェで提供してくれてます。いろいろ迷って海の絵に惹かれたので「波しぶき」にしました。
これで3日連続美術館通い。楽しいんですがさすがに頭が疲れてきました。しかもこの日は展覧会のあと舞台「刀剣乱舞 天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」のライブビューイングに行ったのでかなりグロッキー(死語)でした。
映画、舞台、美術展が私の余暇の楽しみの3本柱なのですが(以前はサッカー観戦が一番大きな比重でしたが残念ながら最近は年に数試合になってしまったので除外)
美術展が一番気分転換になり頭も心もリフレッシュできます。コロナ禍以降日時指定券が必要だったりしますが時間に縛られないという自由度が高いところがポイント高いんですよね。美術館に入ってしまえば見方は自由。見る順番も変えられるし通り過ぎた後に戻ってもいいし、気に入った絵の前でしばらく立ち止まってもいい、好きに過ごせるところが居心地よく人と合わせることが苦手な私にとってこれ以上ない場所です。
といってもさすがに3日連続になるとちょっと情報量が多すぎて処理しきれない。もう10年?若かったら入ったかもしれないけど記憶力がバカになった今だと定着するのに時間が必要なのでもう少し間空けた方がよかったかも。まぁ充実したのでよかったんですが。
昨年見られなかった分を取り戻すように次から次へと見たい美術展が目白押し。
頭をフル活動して堪能したいと思います。