おうちに帰ろう

心茲にありと

笠松紫浪展 最後の新版画

前日の吉田博展に感動し、同じ新版画家の作品を見たいと思って根津美術館からハシゴして見に行ってきた「没後30年記念 笠松紫浪展 最後の新版画」@太田記念美術館

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とても抒情的なポスターです

 

www.ukiyoe-ota-muse.jp

 

ちょうど2年前に同じく太田記念美術館で開催されてた「小原古邨展」もよかったので今回も期待。
美術館のTwitter公式さんが毎日新版画対決といって対比する作品を両者の作品を連日あげて頂いてたのにも後押しされました。

https://twitter.com/ukiyoeota/status/1369141255628673024

 ↑は一例です。この構図とても好きです。

 

リーフレットより

新版画とは大正から明治にかけて絵師、彫師、摺師の協同作業によって制作された木版画のことです。版元である渡邊庄三郎が提唱し伊藤深水、川瀬巴水(はすい)、吉田博、小原古邨といった絵師たちによって新しい時代に見合った版画芸術が次々と生み出されました。笠松紫浪(1898~1991)は、大正から昭和にかけて活躍した絵師です。鏑木清方に入門して日本画を学び、大正8年(1919)、版元の渡邊庄三郎から新版画を刊行しました。その後、昭和7~16年(1932~41)には、モダンな東京の街並みや温泉地の風情を淡い色彩で表現した新版画を、数多く制作しています。戦後は渡邊庄三郎から離れ、昭和27~34年(1952~59)、芸艸堂から版画作品を刊行しました。新版画の初期から関わり、戦後になっても精力的に版画を制作し続けたという意味で、紫浪は「最後の新版画家」であると言えるでしょう。

 

1.心に残った作品

  •  越後柏崎

降りしきる雪と川と橋が美しい作品。この作品以外にも雪とか雨を描いた作品が多くどれも素敵でした。特に雪の表現がしんしんという音が聞こえてきそうな静かな雰囲気を漂わせててよかったです。

 

  • 春の雪 浅草鳥越神社

こちらも雪ですが降ってはおらず神社の境内や屋根に積もった雪と夜空とぼんやりともる神社の灯が美しい作品です。閉じた傘を手に持つ親子の後ろ姿と雪の中お参りした人の足跡が残っていたり雪が止んだ夜の神社の日常を切り取った構図もいいですね。屋根の雪はバレンの跡を残して摺りあげていて版画ならではの味わいがあります。

 

  • 雨の新橋

こちらは雨。濡れた路面に反射する光が綺麗。夜とか雨とか影とかしっとりとした風情を描くのがうまいなぁと思います。

 

2.全体を通しての感想

吉田博の作品に比べると小品ですがとてもモダンで色合いも美しく「暮らしの手帖」あたりに載ってそうな感じです。
亀戸天神の太鼓橋は吉田博も取り上げてましたけどどちらも歌川広重の影響なのでしょうか。構図がほぼ同じ。(↑の公式さんのTwitterで取り上げた作品)
それだけじゃなくて木を全面に描いて木越に建物を描くような構図も多く浮世絵の影響はやはり大きいのかなと思います。
壁に飾ったらそれだけで部屋がオシャレに見えるんじゃないかなっていうくらいインテリアにぴったりな作品ばかりです。
険しい山の山頂や海外の風景はないけれど等身大の目線で切り取った作品の数々は日常の中に美を探す姿勢を思い出させてくれる気持ちのよい作品たちだなぁと思いました。

 

3.おまけ

コロナ禍で密をさけるためなのでしょうか。絵の間隔が以前より開いてるようです。デスク型のガラスケースへの展示はなく、その代わりこれまではよほど展示数が多いとき以外は使われていなかった地下1階にも展示スペースがあり、いろいろと工夫されてるのだなと思いました。