おうちに帰ろう

心茲にありと

「筆魂 線の引力・色の魔力 又兵衛から北斎・国芳まで」後期

前期に続いて行ってきました。

土日は混んでるようですが平日の夕方だったのでとても空いててゆっくり見れました。

前期の記事はこちら↓

 

unatamasan.hatenablog.com

 

まるっと入れ替わった後期の展示。前期に続いて見ごたえたっぷりでした。

 

1.心に残った作品

後期はこれが一番のお目当てでした。平家物語の巻一「祇王」の一場面を描いたこの絵は加賀の白拍子巴御前が清盛の寵愛を受ける祇王の薦めで舞を舞う場面。岩佐又兵衛はやらしい顔した人物を描くのがほんとにうまくて周りで見物している殿上の面々が乗り出して美しい仏御前(図録には巴御前とありましたが間違いですね。同じ内容の展示紹介は「巴」の箇所にテープが貼られてて「仏」と修正されてました)の舞をデレデレした表情が堪らんです。清盛も祇王にぞっこんだったのに仏の舞に表情が緩んでて対照的に女性陣の冷ややかな顔とかとても意地悪で岩佐又兵衛の陰湿さ(褒めてます)がよく出てる一枚ですね。大河ドラマの「平清盛」では仏の役を木村多江さんが演じてましたねえ。素敵でした。

 

  • 勝川春章 竹林七姸図

勝川春章の肉筆画はよいですね。中国の故事「竹林の七賢」を7種類の女性で描き分けたこの作品はとりわけ華やかで春章の良いところが全部入ってるような気がします。花魁、町芸者、芸者風の女性、町娘、御殿女中などそれぞれの特徴が着物の柄や仕草や表情で描き分けられていて様々なタイプの美人画を堪能できる作品です。

 

前期は「登龍図」で登る龍、後期は雲の中から姿を現す龍。どちらも禍々しく鱗と爪の表現が中国の伝説の生き物というより英語のDragonという感じ。ハリーポッターとかに出てきそうな魔法使いが背中に乗っててもおかしくないような造形で北斎は西洋絵画も技法も身に着けていたようなのでその影響もあるのかなぁと思ったりしました。

 

2.全体を通しての感想

お気に入りに挙げた3作品以外でも喜多川歌麿「隈取する童子と美人図」美人画に家族という要素を入れた美しく可愛らしい作品。どうやっても色っぽい。
鳥文斎栄之「読書する美人」春画でも取り入れられているという顔や首の輪郭線に紅が用いられた肌の質感がなんとも艶やか。版画の浮世絵では表現しきれない豊かな色味が肉筆画のよいところですね。肉筆画の春画も見てみたい。エロいだろうなぁ。

後半の葛飾北斎パートはリアルでちょっと滑稽な「魚介図」やだいぶ濃い顔の「面壁達磨図」などの独特な筆遣いの作品や「花籠の蝶図」の牡丹と蝶の柔らかでふんわりとした表現、かと思えばおどろおどろしい「生首の図」などありとあらゆるものを技法を駆使して貪欲に描いた北斎の画業を凝縮した展示になってますね。舞台「画狂人北斎」の2018年上演版(現在最新作が上演中ですね)をDVDで見たのですが北斎が死人が出たときに身体の構造を正確に知りたいんだと高山鴻山に頼んでこっそり解剖してるところを見せてもらうというシーンがあったのですが、打ち首された死体とかも見に行ったりしてたんでしょうね。こちらの作品は83歳のときの作品で「雲龍図」は亡くなる前年の作品とかで晩年になるほど絵に凄みが出てくるのが北斎の恐ろしいところだと思います。

 

前後期合わせて多くの絵師の多彩な肉筆画が見られてとても楽しい展示会でした。知らなかった絵師の作品もか多く、特に上方絵師はなかなか見る機会がないので嬉しかったですね。やっぱり暗い岩佐又兵衛が最高だと思いました。MOA美術館行けるかなぁーーー

www.moaart.or.jp

「奇想の系譜」展

で見た「山中常盤物語絵巻」が衝撃的だったのですよね。凄まじくて。

むーん。行きたい。

 

3.おまけ

山崎龍女という絵師の紹介文に「閨秀(けいしゅう)の画家」と紹介があって閨秀って何?と調べたら「学問や芸術に優れた女性」のことでした。以前も小説か何かで見てたのにすぐ読み方忘れちゃう…忘れないために書いときました。

 

外に出たらまだ明るくて薄暮の空に三日月が浮かんでました。春ですねぇ。

 

 

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月見えますかね?



 

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映画のポスターも貼ってありました。コロナ禍で公開が1年延びちゃったんですよね。やっと公開決まったんですね。よかったよかった。