おうちに帰ろう

心茲にありと

トーハクで梅見

あっという間に2月も終わりに近づき、梅が見頃のはずのトーハクこと東京国立博物館に行かねば―ということで行ってきました。

去年の緊急事態宣言下で休館している間に期限が切れてしまった年間パスもやっと更新。また休館するかもしれないなーと思ってしばらく更新を見送ってたのですが今回の緊急事態宣言では休館せず夜間開放のみ中止という措置だったのでそろそろ大丈夫かなということでやっと新しくしてきました。実は期限を90日延ばせる措置もあったようなのだけどすっかり見落としてた。

 

今は企画展も開催されてない日常のトーハクなのでとーってものんびり。あまり時間がなかったので見たい展示だけ絞って鑑賞。年間パス持ってるとまた来ればいっか、となってあくせく見なくていいので気持ちが楽。
今日は先週足立区立郷土博物館で狩野派粉本を見てきたのでトーハクがここぞとばかりに出してきた「特集 木挽町狩野家の記録と学習」を中心に鑑賞。

 

www.tnm.jp

先週見たのは木挽町狩野家の画系にあたる町狩野の高田円乗に師事した人物がいるという掃部新田を開発した石出家に伝わる狩野常信の絵を模写した粉本で本流にあたる奥絵師木挽町狩野家に伝わるものではなく派生して各所に伝わっていたもの。

トーハクが所持しているのはお歴々の名前が記された粉本類です。大名から「こんな絵がほしいんだけど」と注文があったときにどれを参考にして書こうかなーと引っ張りだして製作したらしいのでこれがたくさんあればあるだけ引き出しも増えて要望にも答えられるというもの。作家性みたいなものは注文主からの依頼を完璧にこなした上で乗せるものなので個性を出すのはなかなか難しいでしょうね。それでも長谷川派などは等伯亡き後は風俗画などに道を見出した弟子たちがいたようですがまとまった流派としては途絶えてしまったことを考えると粉本主義を批判されても江戸時代を通して存続させ町狩野という存在まで含めれば相当な絵師たちに影響を与えた狩野派のシステムは画期的なんだと思います。

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先週の足立区立郷土博物館に展示してあった狩野派ヒエラルキーの図

今回展示されてる粉本は最上位にある奥絵師木挽町狩野家に伝わるもの

北斎国芳暁斎も一度は狩野派を通ってますしね。

一番印象に残ったのは雪舟の山水図巻の模本と牧谿の瀟湘八景の模本です。やっぱり雪舟牧谿は人気があったんだなぁ。そしてと微妙に手クセが出てるのも微笑ましいというか当然というか。

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別の部屋に本家伝雪舟等楊の梅下寿老図がありました。彩色の雪舟は貴重かも

その他、今回は文人画が多く展示されてて特に池大雅の国宝「楼閣山水図屏風」がとてもよかったです。伊藤若冲と同時代なのでちょうど群青が使われ始めた頃でもあり金箔の屏風に装束や山際など要所要所にピンポイントで使われている青が効果的で抑えた華やかさを演出してました。池大雅の六曲一双の金屏風はあまり印象になかったのですがすごく素敵でした。

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青と朱が効果的です

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同じく群青がポイントになってます


写真NGだったのですが田能村竹田の作品は文人画らしい伸びやかな素朴さの中に細やかな表現があって好きだなぁ。

浮世絵コーナーでは宮川長春の風俗図巻が見られて嬉しかったです。先日のすみだ北斎美術館で見てきた筆魂展は美人画でしたがこちらは宴会や花見をしている人々が大量に描かれててとにかく着物の柄がもう!素敵!お顔も綺麗だし背景に登場する屏風絵は狩野派風で贅沢な一品。版画をやらずに肉筆画を貫き通した宮川長春の良さがたっぷり詰まった逸品でした。見られてよかったー。

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狩野派風の梅が背景に

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屏風絵が狩野派

あと長谷川等伯原画の伝名和長年像の模本もあってこれ長谷川等伯の画集で見たことある絵だ!ってなりました。

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長谷川等伯原画の模本。筆者不詳だそう

 

他にも高円宮コレクションの根付でお雛様を見たり表慶館裏手の紅梅白梅を堪能しました。滞在時間は1時間強くらいでしたがいい時間でした。

 

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高円宮根付コレクションは季節に合わせて展示が細かく変わるのが楽しい。こちらはお雛様

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歌川広重の亀戸梅屋舗を意識してみた構図。いやほど遠いわ

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黒門越しの白梅