おうちに帰ろう

心茲にありと

小さな巨人第9話 覚書

小さな巨人」第9話の続きをもう少し。といいつつ長いです。お暇な方どうぞ。

 

とにかくいろいろな対決シーンの多いこのドラマ。

今回は岡田将生くん演じる山田春彦が父親と対面するシーンと小野田一課長に

取り調べを受けるシーン、この二つが対照的でした。

 

まず山田と父が対面するシーンは今回が初めて。父への絶望から捜査一課長に

ならなければならないとずっと言い続けていた山田父はどんな人なのか

父に軽蔑されて存在しないもののように扱われていた山田はどのように父と

接するのか、見ているこちらも緊張しました。

 

山田家の応接室?のようなところで待つ山田。父が入ってくると立ち上がって

「ご無沙汰しています」と一言。こういうところ大変礼儀正しい山田くん。

「まさかお前が犯罪者になるとはなぁ」

「あなたに言われたくありませんね」

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眉間に皺を寄せて厳しい顔を作り、早明学園の裏帳簿のコピーを見せながら

17年前から父が早明学園から数回にわたり賄賂を受け取り

新たな学園開発プロジェクトのために国に認可を下すように便宜を

図っていたと詰め寄ります。ここまではまだ冷静さを保ちつつ

険しい顔のまま。そして山田父はここで山田に背を向けます。

父の背中に向かって山田は言葉を続けます。

「この破れたページに何が書かれていたんですか

それは17年前のあの事件(まつやまさん死亡事件)にも何か関わりがあるんですか」

ここで声が震え始めます。

 

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「僕は今でも覚えてます。あなたは隠蔽の指示をした」

少しずつ泣き顔に。

「死んだ人間はどうでもいいと言ったんだ」

荒ぶる声。

「それまであなたを必死に支えてくれた部下の命よりも

自分の利益を取ったんです。

犯罪者はあなたのほうだ」

怒りで顔が歪みます。父は背を向けたまま無言。

答えを求めるように

「何も言わないのであればこの裏帳簿を公表させていただきます。」

ここで父はようやく向き直り

「春彦。お前こんなことがしたくて警察官になったのか」

表情がこわ張る山田。

「やりたければ勝手にやれ

茫然としているとノックの音がして小野田一課長が入ってきます。

ここで父と小野田一課長に挟み撃ちに。

驚く山田に一課長からはさらに追い打ちをかけるような言葉が。

「山田、副長官が受け取ったのはただの政治献金

業生は外務省から一流企業までこの国を支える礎と

なって働いてくれているんだ

副長官は国のためにそのお手伝いをされた

お前のその青臭い自己満足の正義と副長官の行ってこられたことと

どっちが国のためになっているんだ」

小野田の言葉を聞きながらただただ涙を流す山田。

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肩が震え今にもしゃくり上げそうになるのをこらえるように下を向き

唇をかみしめる。

子どもが親に反論して諭されて何も言い返せない悔しさを抱えたような表情。

そこへ父の強烈な一言

「小野田くん、この男連行してくれ。不法侵入だ」

ふり絞るように「ぉ父さん…!」と声を出します。

一瞬驚いたような顔をしたあとに

父はこの世で一番残酷な一言を言い放ちます

「誰のことだ?」

ここから山田は「父さん」しか言えなくなり

ひたすら「父さん!」と呼び続け、最後は小野田一課長に抱えられるようにして

最後は言葉にならない「うぁーーーー!」と叫び声を出しながら連れていかれました。

 

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最初は父を糾弾するつもりで一生懸命ガードを作って対面し

背中を向けられるとどうにかしてこちらを向いてほしい、そして事実は違うと

言ってほしいと願っているように泣きながら怒りを露わにする顔

小野田一課長の言葉に言い返せないままただじっと見つめながら涙が

流れていることにも気づいていないような茫然とした顔

そして父の残酷な言葉によって抑えていたものが一気に溢れて

顔がゆがみ絶望で立っていられない状態で部屋から出ていく姿。

父役の高橋英樹さんと小野田役の香川照之さんというどちらも迫力のある

お二人の俳優さんに対して繊細さと真っすぐさで打ち返す堂々たる姿でした。

いわゆる濃ゆいお二人に岡田くんの中から発せられる清廉さのバランスが

絶妙でした。

 

その後、なかなか口を割らない山田に対し、小野田一課長が直々に取り調べを

行うことになり一課長の部屋に呼ばれます。

ここで山田と小野田が二人きりになりました。

硬い表情の山田に小野田は

「ま、茶でも飲め。ざっくばらんに話そう」と笑顔で語りかけます。

 

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湯呑の蓋をとり、お茶をすすりながら

「取り調べでもずっと黙ってるそうじゃないか。大した根性だ。

誰かに義理立ててもしてるのか」

という小野田

奥歯を噛みしめる山田。(顎の付け根の部分が小さく動いたのが見えました)

小野田はソファに座ったまま山田の方に体を向けて

「山田、取引をしよう」

顔をわずかに動かす山田。

「お前が知りたいのは17年前の事件のことだろう」

眉を少しひそめる山田

立ち上がって捜査一課長のデスクの前に行く小野田

「そこで何が起きお前の父親が何をしたか、私は知っている」

小野田を睨む山田

 「それは歴代一課長の申し送り事項だからだ」

ここで椅子を勢いよくどかす小野田。(椅子の使い方が効果的)

顔を少し上げる山田

小野田がうやうやしく棚を開けると金庫が入っている。

「言っておくがこれはただの箱じゃないぞ」

思わず、という感じで足が一歩前に出る山田

「歴代捜査一課長が太刀打ちできずに

苦渋の末に飲み込んできた敗北の痛みだ傷だ無念だ(たたみかける)

その無念が積み重なって代々引き継がれてきた、巨大な棺桶なんだ」

このセリフの間、小野田と山田の顔が交互に映り

小野田は少し笑顔、山田はふらふらと前に歩みながら顔は金庫を凝視したまま

唇はわずかに震えています。

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「お前がこの中身を見たければ捜査一課長になるしかない

だがお前はこれを見たいだろう。開けてやろうか」

この開けてやろうか、の言い方が少し首を傾げながら顔は笑ってて

子どもに言い聞かせるような言い方で、山田のプライドを逆なでします。

言われた山田は唇をきゅっと真一文字に結び、顔全体が震えています。

涙が今にもこぼれそう。

 

「代わりに教えてくれるだけでいいんだ

横沢はどこにいる?裏帳簿はどこにある?」

笑顔が消える小野田

唇がわずかに開き、眉間の皺はより深く

知りたい気持ちと香坂さんを裏切れない想いの間で葛藤しているようです。

「話してみろ、山田」

歩きながら身体を少しひねりまた笑顔を作る小野田。

(この緩急、香川さんほんとにお見事としか言いようがない

少し唇が開いてしまうのを抑えるように

必死に口を結ぼうとして顔がこわ張る山田

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「お前の知りたいものはあの中にあるんだぞ」

山田を見つめる小野田

「それを言えば父が何をしたのか、本当に教えてくれるんですね。」

顔の皮膚が波打つように動きふり絞るように答える山田

取調室に入ってから初めて声を発しました。

小野田はゆっくりと山田の前に歩み寄り、じっと見つめます。

「山田、この私の目を見ろ。」

笑顔で

「この私を信じろ」とこれ以上ないくらい優しい口調で言います。

小野田の目を見る山田

口は真一文字に結んだままですが、涙が流れわずかに唇の端があがり

微笑んだようにも見えました。

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ここでの岡田くんは完全に受けの芝居。セリフは一行のみ。

動きも大きくありません。父と対峙したときは攻めに行ったところ返り撃ちにあって

ぼこぼこにされるお芝居でしたが

今回はじっくりひたひたと忍び寄る一課長の攻めをじっと耐えて受けるというお芝居。

香川さんの手練手管の前でただ立ち尽くしわずかな表情の変化で山田の気持ちの

葛藤を表現し、香川さんと向き合ったところはしびれました。

 

今回の山田の出番はこの2つの対決シーンが山場で、後半は香坂vs小野田で

クライマックスを迎えました。

小野田は山田に対しては笑顔を交え声を荒げることもほとんどなく諭すように

迫りますが、香坂相手だと声を荒げ挑発し恫喝し指を差し上からのしかかるように

追い詰めていきます。この違いが面白く、なぜ香坂相手だとここまでムキになるのかと

思うほど。何か特別な感情があるのか。

最後に裏帳簿の1枚目の破れた切れ端に書かれた名前が

「香坂敦夫」香坂の父だったことと何か関係があるのか。

「本当の裏切者はお前の父だったんだよ」と至近距離で迫るところは

ギリシャ悲劇を思わせる大仰さがコントにも見えてきて

感心するやらおかしいやらで大変でした。

 

香坂が「山田がしゃべったんですか」と小野田に聞いたとき

「お前が安く値踏みしたお前の絆なぁ、山田だが

結局何にも喋んなかったよ」

このセリフを言うときも「喋んなかったよ」で少し首を傾げる仕草を見せたりして

山田について何かを語るときはどこか子どもを見るような感じになるのは

何なんでしょうかね。

回想で

「話すことはありません。留置場に戻してください」

と泣きながらも毅然とした態度できっぱりと言い切る山田を

「さすが私の運転担当だった男だ」と嬉しそうに言ったり。

香川さんのこの場面での小野田一課長の演技は多種多様な恫喝の方法を

並べてみせてもらってようで、満足度高かったです。

対する香坂の長谷川さんもどんどん表情が崩れて言って

呆れるほどの熱量で、テレビドラマとは思えない舞台のような迫力でした。

 

山田はハードな対決シーンもありつつも基本的にはイタイ人なのは

さんざん書いてきましたが、今回も突っ込みどころがちょいちょいありました。

冒頭、山田が横沢を連れて逃げて大騒ぎになり

自宅謹慎を言い渡された香坂が家に戻ると

「お客さんが来てるわよ」と妻の美佐さんに言われて部屋に入ると

山田と横沢が来ているシーン。

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これは前々回、お中元を贈ってたことが効いてましたね。

「将を射んとする者はまず馬を射よ」と奥さんにできる部下という認識を

植えてまんまと部屋に上がるという。

そして自分のせいで香坂が窮地に立たされているというのに

涼しい顔で「お邪魔してます」とこんなときでも礼儀正しいお坊ちゃま。

 

 

その他、一生懸命眉間に皺寄せて険しい顔してても

ふとしたときに優しい顔になるので、根は純粋で優しい子なのねぇというのが

垣間見えるところもツボでした。何のかんのいってかわいいやつなんですよね。

山田っち。

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香坂さんを伺うように見るところがかわいくて。

 

毎回毎回たくさん突っ込みを入れながら楽しんできた「小さな巨人」も

残すところあと1話。

日曜夜のお祭りもあと1話と思うと寂しいですが

最終回でもいろんな顔を見せてもらえると期待してます。