2022年振り返り
前回の更新が2021年まとめ。で、今回は2022年の振り返り。
空きすぎですね。
とはいえ一応区切りをつけておこうかなということで
今年何をどのくらい見たのかまとめておこうかと思います。
感想はあんまりありません。
まず<舞台>から。
28作品、69回劇場に通いました。
去年は24作品61本だったので少し増えたけど思ったほどではなかった。
てか去年が思ったより行ってんだなって思いました。
今年は「文豪とアルケミスト 嘆キ人ノ廻旋(ロンド)」(文劇5)16回が図抜けて多いけどあとは1回だけの作品が多かった。
印象に残った作品をあげると
文劇5は特別なのでそれ以外からとなると「ジャージー・ボーイズ」かなぁって。
当初は1回だけ行くつもりだったのが実際見たら想像の100倍よくて追いチケ3回してしまった。しかもチームGREENばかり。できればあっきーこと中川晃教さんの元祖日本版フランキー・ヴァリのチームBLACKも見たかったけど、チームGREENがあまりによくてフランキー・ヴァリの花村想太くんはじめ、トミー・デヴィートのけんけんこと尾上右近さん、ボブ・ゴーディオの有澤樟太郎くん、ニック・マッシのspiさん、全員チャーミングで舞台上できらきらしててほんっと最高だった。
(花村想太くん芸術祭新人賞受賞おめでとう!!!)
チームGREENメンバーでの再演願ってます。
そのときはあっきーさんのフランキー・ヴァリもちゃんと見ます。
あとミュージカル刀剣乱舞(刀ミュ)は真剣乱舞祭という大きなお祭りがあって本公演江水散花雪、伊達双騎、青江単騎、江おんすていじと色んな公演見られてどれも素晴らしく楽しかった。全部違うチャレンジをしていて見るたびに驚かされる。
来年富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われる野外乱舞祭「すえひろがり」ではどんな驚きが待っているのかな。
続いて<美術展>
美術展は去年が57回だったのに今年は47回と10回減りました。
特に後半が失速、6月までで34回行ってるのに7月以降は13回しか(国宝展に3回行ってるから15回か)行けなかった。
たぶん仕事が忙しかった(というよりフルタイムになった)せい。平日にあんまり動けなかったのが大きいかなぁ。美術展は平日に行くことが多かったから。
印象に残ってるのはーとつらつら自分用メモを眺めてたんだけど
- メトロポリタン美術館展
- 芸術×力 ボストン美術館展
- 特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」
あたりかなぁ。希少価値!というくくりでしょうか。
お次は<映画>
映画は21本で去年の15本に比べて増えてた。
実は減ったかと思ってたんだけど意外と行ってた。「ハウス・オブ・グッチ」とか「ベルファスト」って今年だったっけ!?っていうくらい記憶飛んでた。
映画はもう「トップガン/マーヴェリック」に尽きる。ありがとうトム。
映画も美術展も上半期にはそれなりに行ってたんだけど下半期にがくんと減っちゃったのは先にも書いたけど仕事の仕方が変わった影響が大きい。
今年3月までは2017年9月末にある団体の役員職を辞して業務委託に契約を変えて週4ベースで働いてたんだけど、ちょっとのんびりしすぎたなぁ、そろそろちゃんと仕事のインプットが必要かなぁと思って新しい会社との仕事を増やした。4月からは週5日働く生活に戻ったら今まで行けてた映画とか美術展に行く余裕がなくなってしまった。
優先順位として舞台が上位に来るので土日に舞台があると他に手が回らなくなる。
その上、今年は横浜FCのJ1昇格争いまで入ってきて手一杯。
11月後半からFIFAワールドカップも始まったからもう無理。
9月が文劇5で終わって以降はあっという間でした。
気づけば年末。
来年も引き続き生活の中心は舞台になりそうだけど(すでに1~3月の予定が埋まっている)、横浜FCがJ1に戻ってきたので久々にスタジアムにももうちょっと行けたらいいなぁと思ってます。
とはいえ、来年4月には久しぶりに正社員として働くことになり今年も週5で働いてはいたけど契約はフリーのままだったのでまだ好き勝手してたけど果たしてちゃんと会社員できるかな。
まぁ人生には驚きが必要なのでどんな驚きも飲み込んで頑張っていこうと思います。
駆け足での振り返りでした。
2021年まとめ。
2022年になってすでに10日たって今更2021年のまとめって。
昨年美術展行った記録をブログに書こうと思っていたのに結局途中で尻すぼみになってしまったので書けなかった分を一つ一つアップするのは怠すぎるのでまとめて並べておく。
美術館に行った回数は57回。特別展だけじゃなくてトーハクの総合文化展に行ったりしたのも入ってる。コロナ禍で休館してた時期があったけど2020年に比べたらはるかに行けた。2020年は11回だったから5倍!結果だけ見るとコロナ関係ないじゃんって感じですね。これもひとえに緊急事態宣言下でも感染対策を行いながら開館を行ってくれたおかげです。関係者の皆様には感謝しかありません。本当に気を使うことも多く大変だと思います。ありがとうございます。
そしてブログにあげなかった展覧会について一言コメント。
これめっちゃよくて書こうと思ったけど内容が濃すぎて書けなかった。ここで躓いてこの後行ったものについても書けなくなっちゃったというのはまぁ言い訳なんだが。我が家のお寺は天台宗なんだけど実はよく知らない。最澄さんが何をした人でどうやって広まったのか、とか。最澄から学んだ人たちが広めたルートを見せながら展示されてるのでとてもわかりやすかった。そして途方もないこともわかった。いやーすごかったです。
コラボレーション企画展
川端龍子VS高橋龍太郎コレクション
−会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃−
https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition/y2021
初めて行った大田区立龍子美術館。大田区は川瀬巴水も住んでいて9月には大田区立郷土博物館で
特別展「川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-」
という展覧会を無料で開催してたんですよね。これもブログにアップしてない展覧会。大田区文人村みたいなのもあったようです。川瀬巴水展覧会もよかったですねーほんと。写真も撮り放題だったし。
ということで川端龍子。とにかく大きい絵!という印象がありましたがやっぱり大きかった。そして現代アート作家と一緒に並べるという試みも面白く、私でも知ってる超有名な現代アートの第一人者4名の作品も見られて面白かった。先日ドラマでやってた「山本五十六」の肖像画よかったなぁ。
鈴木其一・夏秋渓流図屏風
過去に何度か見たことある「夏秋渓流図屏風」最後に見たのは2019年の「奇想の系譜」展でした。
そうだ、奇想の系譜に鈴木其一は入れられてたんだった。
改めて見てもやっぱり変わってる。
対面に師匠の酒井抱一の「青楓朱楓図屏風」が展示されててこちらは金箔を背景に青・赤・緑がバランスよく配置され楓の幹はたらし込みを使い葉はマットに鮮明に描いた対比が美しく渓流の流れもゆったり。とても優美で上品な一品。
一方其一の「夏秋渓流図屏風」を見ると、まず目につくのが檜の木の多さ。
まるで縞模様のように檜が配置されてて渓流を描いた屏風でこんなにたくさん木を描いたものってあんまりない気がする。
描き方もたらし込みではなく檜の描き方の系譜の一番最初に紹介されている狩野常信の「檜の白鷺図」にあるような縦のラインを強調した描き方。
檜はもともと狩野派がよく描いたモチーフだそうで、其一は狩野派からも影響を受けていたのでは?というのを今回の展覧会では投げかけています。
それ以外にも渓流の波の表現は円山応挙の絶筆「保津川図屏風」のダイナミックは表現と共通しているなど、其一が関西方面に写生の旅に出たときに見たかもしれない…?という仮説に基づいて並べて展示。こういう繋がりを見るのも面白い。
私が思う其一は師匠の抱一が存命の間は忠実なる弟子、師匠の作品をよく見て丁寧になぞり師匠以上に緻密に描き、師匠が亡くなってからはマグマが噴火するごとく自分の中に蓄積していたあらゆる絵の技法を尽くして様々な表現に挑戦した人という感じ。
なんというかとても現代的な感覚で見られる。
想像の中の其一は着物姿じゃなくてタートルネックのセーターにめがねをかけた
神経症なところもあるけど人当たりは悪くない、だけど絶対人に踏み込ませない一線がある、というイメージ。妄想。
聖徳太子 日出づる処の天子
どこを見ても聖徳太子だらけの展覧会でした。タイトル通り。
聖徳太子絵伝だけでも数種類。時代も様々だけどフォーマットとうか描かれる出来事は決まっていて
聖書みたいなもんなのかなーと。今でも聖徳太子信仰の中心的存在の四天王寺では絵堂に展示された絵伝を見ながら僧侶の方が説明してくれるそう。
聖徳太子像も2歳のときの西に向かって「南無仏」と唱えた伝説のある南無仏太子像や16歳のときの父の用明天皇の病気祈願してる姿の孝養(きょうよう)像、摂政になった時の摂政像もそれぞれいろいろなお寺に収蔵されてるものが登場。
南無仏太子像はふくふくとしたお顔にちんまりした手を合わせてる姿なんとも可愛くてキーホルダーとかあったら欲しかったなー
描かれてる姿は太子が推古天皇に勝鬘経を講義している姿だったりとかパターン化されていてキリスト教で言うところの三位一体図とか東方の三博士みたいなよく知られた姿だったりするのかな。
国宝の「七星剣」はとにかくかっこよくて!北斗七星や雲や龍が描かれてていかにも霊力が宿ってそうな感じ。
武器ではなく儀礼で使うための剣ですね。
今回は四天王寺所蔵の品々がたくさん展示されていたのだけど四天王寺はこれまで7回も焼失しているんだとか。
その度に再興して今も健在なんだけど、日本のように地震や台風が多い土地では
建物をずっと残しておくのって難しいから、建て替えること前提に継承すべきはハードじゃなくてソフトなんだなって思った。
それは昨日ぶらぶら美術館でホテルオークラが老朽化のため新築することになったとき
反対運動が起きたけど当時のロビーラウンジを新築したホテルに完璧に再現してて
こういう形で残すやり方が日本の気候を考えると合ってるんじゃないかな。
伊勢神宮の式年遷宮みたいに定期的に新しくするというのは古来からの知恵なんではないかな。余談です。
アーティスト福田美蘭が千葉市美術館所蔵の作品から選別しインスピレーションを受けて製作した作品と並べて展示。
全て福田さん本人のコメント付きなので作品のテーマだったり元の作品についての解釈だったりがわかるのが面白かった。
現代アートの作品のよいところは作家が存命で直接言葉を聞けることかも。
北斎の作品について想像することはできても実際にどんな気持ちで描いてたかはわからないからね。
新たに制作した作品はコロナ禍の状況や昨年のオリンピックについて思うところを投影させたものが多く芸術には時代を記録し作品に残して後世に伝えていく役割もあるので
個人の好き嫌いはありますが、使命として果たしていくべきなんだろうし
使命とか思わなくても何かしらのメッセージは込めておくものなんだろうなと思った。
書く内容にバラつきあるけどとりあえずざざっと書きました。
タイトルが「まとめ」となってるけど全然まとめになってない。
こういうときベスト○○とか選ぶのかもしれないけど選ぶの苦手で。今年はとにかく行きたい美術展になんとか行けたのがよかったかなぁ。
美術展はそこそこ行けたけど映画は全然行けなかった。15本。2020年も同じ本数で2019年が46本だったので1/3になっちゃた。公開作が少なかったのもあるけどあんまり行きたいって思うのがなかったというか。行かなくなると情報が入ってこないのでアンテナにもひっかかりにくくなるということもある。今年はもう少し行きたいなぁ。
そして舞台。2020年は払戻額を計算したくないほど中止になったけど2021年は払戻し公演は2作品3公演だったので前年に比べればだいぶ回復。行った公演数は24作品61公演。かなり偏りあるしこの回数が多いか少ないかはわからんけど行きたい行きたいと切望していたモリミュ(ミュージカル「憂国のモリアーティOp.3」)に行けただけで大満足。もう2021年は初めてモリミュを見た年として記憶しておく。
というわけで雑なまとめ。
やっと年が明けるー
歳三佩刀・和泉守兼定刀身公開2021秋
年に一度行われる歳三佩刀・和泉守兼定刀身公開に行ってきました。
例年は土方さんの命日5月11日に合わせて開催されるようですが今年は緊急事態宣言の影響で期間が10月に変更となったようです。
10月10、16、17日の3日間、1回につき30分30人に入場を限定し完全事前予約制での開催でした。
予約開始日の翌日に申込み、空いてる回がちょうどこの日(10/16(土))の回だけだったのですがなんとか取れました。ふー。
通常の資料館の開館日は第一、三日曜とのことなので特別開館日だったのですね。
近くに井上源三郎資料館や佐藤彦五郎資料館などもあり、できれば一緒に回りたかったのですがそちらは第一、三日曜日のみの開館だったので今回は見送りました。次は合わせて行ってみよう。
土方歳三資料館は京王線高幡不動駅から多摩モノレールで一駅の「万願寺」が最寄り駅です。
高幡不動駅からも徒歩20分くらいなので歩けない距離ではないのですが
初めての場所だし予約制で時間厳守だったので迷って遅れたらいやだしと思ってモノレールに乗りました。
見晴らしがよくて天気がよかったら富士山とか見えたりするのかなぁと思っていたらあっという間に到着。
駅からは案内板もあってすぐにわかりました。
資料館の前には歳三まんじゅうを売ってる出店が出てました。このあたりは新選組推しがすごいです。
土方さんの生家を建て直した際に自宅の一部を資料館として公開されているので
「土方」という表札が門にかかっているのでほんとにこちらで生活されてるお家なんだなぁと思いました。
土方さんは農家から武士に成り上がったみたいなイメージですが、立派なお家を見ると
このあたりでは豪農としてそれなりに裕福な家だったんだろうなと思います。
6人兄弟の末っ子だし、きっと親戚からもかわいがられてたんだろうなぁと。
などと思いながら入場時間を待っていると予約時間の15:30となり順番に中へ。
ご自宅ということで靴を脱いで入室するんですね。私はスニーカーだったんですが、編み上げブーツのお姉さんがいてちょっと大変そうでした。
入口には大きな梁と大黒柱があり、建て替えする際に以前のお家から一部移築したそうです。立派!
中に入るとちょっと大きめの会議室くらいの大きさの部屋に土方歳三所縁の品々がガラス越しに展示されています。
そして正面に鎮座しているのが和泉守兼定!!兼さん!!
好きなように見るのかなと思っていたら館長の土方愛さんが座布団を敷き始め
座れる方は座ってくださいーとの声かけ。刀身について解説してくださるとのこと。
ただ時節がら直接お話されるのは控えてあらかじめ録音しておいた音声を流し
それに合わせて刀身のいろいろな箇所を指し示す方式で行われました。
お声も聴きやすくとてもわかりやすかったです。
5分程度のお話を聞いたあとは各自自由に退室時間になるまで展示品を見ることができます。
解説終了直後は兼定を見ている人が多かったので、いったん私は別の展示から。
石田散薬の薬箱や天然理心流の木刀、愛用の短冊などと一緒に
有名な豊玉発句集がありました。おおおーこれが有名な!
「燃えよ剣」では「知れば迷い知らねば迷わず恋の道」という句で登場し、以降のフィクションでもそのような句で登場しますが
実際に書かれているのは「しれハ迷ひしなけれハ迷はぬ恋の道」でした。そのお隣に
「しれは迷ひしらねは迷ふ法の道」という句があるのでこれを司馬遼太郎先生がうまく掛け合わせたのではないか?とのこと。
土方さんの字は思っていたより繊細で綺麗な字でした。イメージ的にもっと豪快な字なのかなぁと思っていたので意外でしたね。
そして池田屋事件のときに身に着けていたという鎖帷子。首の後ろに穴があいてて槍で突かれた跡らしいとかとても生々しかったですね。
京都時代に使われた鉢金にも刀傷があり、ほんとに命がけで戦ってたんだということがわかります。息遣いまで伝わるようで見ていて胸がつまります。
そして新選組の袖章。よくドラマで見るような新選組の旗は現存しているものはなくだんだら羽織も今は残っていないそう。新選組の「誠」の印が入っているものは袖につけるような小さな袖章のみとのこと。こちらも激戦をくぐってきたものかと思うと見ててつらくなります。
そして人が空き始めたのでいよいよ和泉守兼定の前へ。
土方家に戻ってきたときは刃こぼれもあったそうだけど昭和の始めに研ぎあげられたので少し細くなっているそう。
いやー思った以上に感動しました。刀を身に着けている土方さんの写真の前に本物の兼さんいるとちょっと震えましたね。
実際の戦闘では銃を使ったり合理的な戦い方をしてても刀を手放さなかったのは武士としての矜持があったから、という話を聞いてちょっと涙出そうになった。柄巻の柄糸の摩耗箇所から刀の握り方もわかるそうで、どうやら鍔から左手、隙間を開けずに右手という風に少し短めに握っていたようです。これは相手と対峙したときに素早く刀を振り下ろせるためでより実戦向きの持ち方なんだそう。そんなこともわかるんですね。
使っている姿や戦いの様子が思い浮かんでほんとに比喩じゃなく鳥肌がたちました。
今回は特別に島田魁佩用脇指「土佐守藤原正宗」も併せて展示。新選組隊士で箱館戦争も一緒に最後まで土方さんと戦った島田さんの刀も一緒にあるというのがエモ過ぎる。
中島登の覚書もあってはぁああああ箱館~(泣き)ってなります。
榎本武揚の「入室伹清風(にゅうしつしょせいふう)」と土方さんのことを語った書があったり、土方歳三の戦死を伝える書状(安富才助から兄の土方隼人に送られたもの)もあって、大事に保管されてきた土方家の皆さんは本当に歳三さんを大事に思っていたんだなぁと思います。
その一部を拝見することができてとてもよい時間でした。
帰りに高幡不動尊にもお参りして来ました。五重塔まであるなんて知らなかったです。
こちらにも新選組顕彰碑があり、地元の誇りなんだなぁと思いました。このあたりの方々はご一新(維新)とは言わず「幕府の瓦解」という言い方をしたそうです。幕末時の時勢が目まぐるしく変わる中、それぞれの立場で思うことは違ったんですね。
次は他の資料館も巡る時間を取って来てみようと思います。
府中市美術館開館20周年記念「動物の絵 日本とヨーロッパ」展
2021年10月16日(土)雨が降るのか降らないのか微妙な天気の中
京王線散歩な1日を過ごしました。最初に訪れたのは府中市美術館。
前回府中市美術館に行ったのはいつだっけー?と思ったら2018年5月でした。
ニンゲン御破算とワールドカップ始まる前に見たいものは見ておかなきゃ!という気持ちで行ったんだったわ。
円山応挙の鯉の絵に心惹かれて見に行ったんだった。あれもいい展覧会だったなぁ
トップにある森狙仙の「群獣図巻」は今回も展示されてました。「鯉」は後期に展示されるみたいです。
開館20周年記念ということでかなり力の入った展覧会。取り上げるのは動物たち。
日本とヨーロッパで動物がどのように描かれてきたか?を様々な角度で分類して並べています。
取り上げる画家は日本の画家44名、ヨーロッパの画家31名、展示点数183点(前後期合計)となかなかのボリューム。
迷路のような展示会場(導線がわかりにくかった💦)は動物園のようでした。
入ってすぐにどーん!と展示されてるのが伊藤若冲の「象と鯨図屏風」(前期のみ)
若冲展以来のご対面でしたがやっぱりインパクトありますね。だけどただインパクトがあるだけじゃなくて水墨画らしい繊細な色の強弱や象の表情、背中を出した鯨の周りの波の造形がどこか雲海のようだったりととてもファンタジック。
象や鯨は涅槃図にも登場するモチーフだそうで、そういわれて改めて見るとどこかお釈迦様を見守るような静謐さも感じます。
そしてすぐ隣には「八相涅槃図」がありよく見ると象も鯨もいます。涅槃図は大勢の人や動物が嘆いているので絵全体はにぎにぎしいので象と鯨図屏風とはかなり印象が違いますけども。
涅槃図ではお釈迦様が入滅するのを見届けているのは弟子などの人間とともに鬼や獣などの鬼畜類も同じ絵の中に登場します。
日本では動物も人間も同じ世界に生きるものとして絵の中に登場していますが、西洋では神が作った動物を支配するのは動物よりも高等な人間たち、という図式になっているそう。
動物が絵画に登場するときは何かの隠喩だったり説話に基づいた意味づけがある場合に限られていたとのこと。
確かに西洋絵画で動物が描かれてるときって今回展示されてる聖ヒエロニムズのライオンやノアの方舟の動物たちのように神話や聖書の逸話を描いた作品に登場することが多く、普通の動物たちのそのままの姿を写し取った作品は少ない気がします。
では日本画で気になったものをいくつかご紹介。
やっぱり円山応挙の子犬は外せない。犬まみれコーナーの中でかわいいだけじゃなくどことなく品格を感じさせる一つが「藤花狗子図」
応挙の代表作藤図屏風に描かれた洗練された美しさのある藤の花の下に子犬が2匹。しかも一匹は藤の花を咥えてます。
咥えちゃってるのにどこか高貴な佇まい。体形はころころふわふわなのに表情がちょっとつんつんしてるところが堪らないですね。
そして仙厓義梵の「犬図」緩いというか悟りを開くとここまで省略した線で表現できるのかというあっさり犬。そして「きゃふんきゃふん」と鳴き声が書き込んであるのも萌える。きゃふんって。もうー好き。
長沢蘆雪の犬たち「狗子遊図」も捨てがたい。こちらはもこもこした犬が集団で戯れてるのでかわいさ爆発してます。クッソ。
府中市美術館名物?になりつつある徳川家光コーナー。その名も「家光の部屋」
初めて見たのですが確かに一度見たら忘れられない独創的な画風。
兎を正面から描いた「兎図」とか雀に見えない大きさの「竹に雀図」とか大きさや構図の取り方が他の画家たちとは違う目線で描いているように見えます。一つ一つの線は細かく丁寧に描いているのに出来上がった作品はどこかずれてる。そんな不思議な魅力がありますね。家光が描いたからこそ後世に伝わってきたのでしょうね。もし狩野派の絵師集団の中にいたら破門になってたかもしれない。そう考えると将軍様が描いてくれてよかったのかもしれません。
鳥獣戯画丙巻の模本はオールカラーで描かれました。元の丙巻は傷みがひどくかすれてる箇所も多くあるのですが模本では色まできっちり表現。擬人化という表現は何かを人間に例える言い方ですが、鳥獣戯画を始めとした動物たちの姿を描いた作品は動物を人間に例えるのではなく、動物の世界も人間界と同じである、という目線で描かれているので擬人化という言い方は正しくないのでは?という説明書き添えられていて「なるほど!」と思いました。
鳥獣戯画をもっと単純化してマスコットキャラクターのように描いたのが鍬形蕙斎(くわがたけいさい)の鳥獣略画式。実は北尾政美(まさよし)という名の浮世絵師だそう。北尾政美は知ってたけど鍬形蕙斎という名前は初めて知りました。切手にもなってたそうです。これはかわいい。
西洋絵画ではパブロ・ピカソの「仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳」はやられたーって感じでした。
極端に線が省略された羊にを従える2歳の子どもという構図はキリストに倣ってるのでしょうか。ピカソめっちゃ絵がうまいな。(何目線)ピカソのこちらの作品はひろしま美術館所蔵で、いつか行ってみたい美術館の一つなんですよね。西洋近代絵画を取り上げる美術展でよく作品が出品されてます。数年前には所蔵作品の人気投票を行ったそうで、このピカソの作品は2位だったそう。子どもの服の青が差し色のようになっててささっと描いたようでとても計算されていてもうー上手い!!って感じです。素敵。
2位はピカソ「仔羊を連れたポール、画家の息子、二歳」、3位はシダネル「離れ家」。
— 惹起一休 (@jack19998) 2018年11月14日
広島県立美術館でも所蔵作品の投票やってるけど、ダリ「ヴィーナスの夢」が1位だろうな。なぜなら入ってすぐのところに展示されてるし、巨大だから。 pic.twitter.com/zklTKFGrK8
ギュスターヴ・モロー「一角獣」オディロン・ルドン「ペガサスにのるミューズ」はどちらも神話的世界を描いたもの。一角獣は処女にしかなつかないとされ一緒にいる美女はモローにとってはファム・ファタルのような手の届かない女性のイメージだそう。こちら以前ギュスターヴ・モロー展でも見たときは同じ世界観の作品群の中では比較的控えめな作品の印象でしたが、日本画と同じ部屋に展示されてるとそこだけ違う光が当たっているように見えますね。動物だけじゃなくて女性に対する考え方も日本と西洋(主にキリスト教圏)では全然違うことが作品が醸し出す雰囲気でわかります。肌も露わな女性を処女の象徴として描くってやっぱり倒錯してるよなぁと思ってしまいます。
ルドンの作品は天空に上っていくペガサスとミューズの取り合わせは神々しいですが、神のように崇めるか貶めるかのどっちかなんかいって感じですね。作品としてはどちらも倒錯してるところが好きだったりしますが。
他にも長谷川潾二郎(りんじろう)の猫はモダンで、小倉遊亀の「径」は夏の昼下がりを切り取った珠玉の一枚で素敵だし、動物をテーマにしてこれだけ多彩な作品を集められることが素晴らしいと思います。コメントも一つ一つ学芸員さんの思いが込められててじっくり読みこんでしまいあっという間に2時間ほど時間が経っていました。
会場手前にスタンプ台があって円山応挙の子犬と徳川家光の木菟と鍬形蕙斎の動物略画式の蛙と蟹のスタンプをメッセージカードに押せるようになってます。ほんとは「おめでとう」「ありがとう」などのメッセージスタンプとともに押すようなんだけど一人一枚限定だったのでメッセージ抜きで(自分用だし)3種類押しました。
思った以上に長居してしまいましたが次の目的地、土方歳三資料館へ移動します。
そちらはまた次の記事で上げます。
秋の優品展 桃山の華
ゴッホ展のあと急遽ぴゅーんと上野毛の五島美術館まで行ってきました。ちょうどその後に駒澤大学まで行かなきゃだったのでついでに行っちゃえーということで。行ってみたら国宝の紫式部日記は10/9~10/17の展示だったようで見れず(行ったのは10/6)。うーん残念。でもそれ以外にも「優品展」というだけあってお宝がたくさんでした。
大東急記念文庫所蔵の書のコレクションからは明智光秀、織田信長、豊臣秀吉などの戦国武将の手紙が展示。字にも性格が表れるのかなぁ?光秀が一番几帳面そうな字だったような気がします。思い込みかも。
まさに優品!と思ったのが「秋草蒔絵文箱」でこちらが制作されたのは桃山時代のようですが、中に入っているのは「紺紙金字阿弥陀経 平忠盛筆」の写経巻物だそう(こちらは展示されていません)。たまたまサイズがあったからこの箱に入れられてたんですかねーなんて贅沢な取り合わせ。特に重文とかに指定されていませんが、個人コレクションならではの逸品だなぁと思いました。すごくきれい。秋らしくてよかったです。
本阿弥光悦筆伝俵屋宗達下絵の作品が鹿下絵和歌巻断簡を始め新古今和歌集の色紙帖などたくさん展示されてたのもよかった。こんなに並んでるの見たのは初めてかも。鹿下絵和歌巻断簡はもとは22mにも及ぶ一巻の巻物で現在は断簡となって前半部分はMOA美術館、山種美術館、五島美術館で所持、後半部分はアメリカのシアトル美術館が所蔵しているとのこと。以前山種美術館で一片を見たことあります。
平家納経の巻頭部分を描いた鹿下絵と同じような構図だそうで、平家納経はなかなかお目にかかれないので別の作品でも少しでも雰囲気味わえるとちょっと嬉しい。色紙の方も本阿弥光悦の書と俵屋宗達(おそらく工房制作なのかな)の下絵がデザインが一点一点凝っていて一見すると地味に見える下絵も角度を変えると鮮やかに金色で模様が浮かび上がったりと工夫があり、光悦と宗達で競い合って作品を作り上げてきたことが伺えます。素敵な展示だったー
異色は狩野探幽の旅絵日記。元は京都出身の狩野派、探幽が江戸幕府に召し抱えられて江戸狩野を開くことになるけど、探幽はまだ京都と江戸を行ったりきたりしていたらしくその道中の旅日記だそう。東海道、箱根、近江と三か所を風景を今でいうスケッチしているのですが、どこかどこかはわからないけど、どこでも写生ができるように白紙の巻物と筆を持ち歩いてたんだなぁと思うと研究熱心と思うとともに、将軍様や大名からの依頼に応じて描くのではなく自分の心のままに描ける写生は貴重な時間だったのかしらと思ったりもする。
「曽我物語」の絵冊子(立派な絵本のようでした)と「酒吞童子」を退治する場面が展示されていた大江山絵巻。いずれも2日前にサントリー美術館でも同じテーマの屏風絵と絵巻物を見ましたが、酒呑童子は場面違いでサントリー美術館の方はまだ源頼光たちが退治に行く支度をしている場面でしたが、こちらは首を討ち取ったクライマックスシーンでした。血もしっかり噴き出してます。
曽我物語は巻狩りの場面でまだ仇討ちには至ってないです。続けて同じモチーフの作品を見るとより記憶に刻まれるんでよいですね。
紫式部日記は国宝の本体ではなく現状模写という手法で描かれたものが展示されてました。汚れや色落ちなども忠実に再現した模写方法だそう。確かに模写とは思えないくらいあちこち薄くなってたりかすれてたりしました。これはこれで写すの大変そう。国宝も見たかったなー。またの機会。
伝俵屋宗達と尾形光琳の「業平東下り図」もあり、宗達は色紙、光琳は元は屏風だったものを掛軸に改装したもの。宗達の方は金箔を使い色使いもはっきりしていて、光琳の方はかなりすっきりした色調の作品で、琳派の系譜の中心となる二人ですがやはり時代が違うので作品によってはかなり違いが出ますね。
ちょっと珍しいのが尾形乾山の「四季花鳥図屏風」。陶磁器の絵付が有名ですが屏風もなかなか。お兄さんの光琳に比べると全体的に渋め。少し漢画の影響もあるのかなと思いましたが光琳の同じ図式の屏風絵に倣った描いたという説もあるようです。
あとは陶磁や茶道具のコレクションも充実。黄瀬戸の立鼓花生銘ひろい子が美しかった。他にいいなぁと思ったのは古備前の数々。釉薬を使わず高温で焼き上げた作品群は密度が濃い感じで力強さと繊細さが混在してるようで素敵でした。
茶道具はお茶を点ててみないとほんとの良さはわからないなぁと毎回思います。いや、絵画だってそうなんですが、もうちょっととっかかりがありますからねー
とりあえずたくさん見ればいつかわかる時が来るかも…とうっすら期待しています。
ちょっと駆け足でしたが、優品に触れてとてもよい時間でした。
「ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」
ゴッホの世界最大の収集家となったオランダの実業家アントン・ミュラーの夫人、ヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションを所蔵するクレラー=ミュラー美術館からゴッホを中心に近代絵画の作品が紹介されています。
ゴッホの油彩画28点、素描・版画20点、初期オランダ時代から晩年のオーベル・シュル・オーワーズまでの軌跡をたどります。ゴッホ以外ではミレー、ルノワール、スーラ、ルドン、モンドリアンなど近代絵画の作品20点、ファン・ゴッホ美術館からも「黄色い家(通り)」を含む4点が展示。見ごたえのある展示会でした。
展示会場に入る前のスペースにヘレーネが収集したゴッホ作品のリストが種類別に壁面に記載されていてよく見ると値段がついてます。どの作品だか忘れましたが一番高くて1億円くらいだったかな。素描やスケッチはひと山いくらみたいな感じでグループでまとめられて値段がついてました。当時他の作品がいくらで売買されてたかわからないので価値がわからないのですが、SOMPO美術館にある「ひまわり」が当時の最高額53億円で落札されたことを考えるとヘレーネは早くからゴッホの価値に気づいていたということでしょうか。
展示会場に入るとヘレーネの肖像画がまず目に入ります。ヘレーネの人となりのご紹介。夫アントンは海運業で成功した人物。やっぱりこの時代は海運業ですねー
以前Bunkamuraミュージアムで開催されたバレルコレクションも海運王でしたし。
松方コレクションで有名な川崎造船か。海運とは違うけどまぁやっぱ大型船舶黄金期でしょうか。
なんてことを考えながらコレクションの展示へ。
まずは
ということでゴッホ以外の近代絵画の作品たち。
思った以上にこのコーナーが充実してました!
ルドンの一つ目「キュクプロス」が見られたのがよかったー。目!!
モンドリアンもブラックなどのキュビズムの作品の後に並んでると絵画の再構成とは?みたいな問の一つの答えになってるようで少しだけ理解できたような気がします。色合いが渋めなのが素敵だった。
あとは初めて見た画家ヤン・トーロップの「版画愛好家(アーヒディウス・ティメルマン博士)」という作品は見入っちゃいました。
シニャック、スーラのような点描画なのですが、とても写実的なのに色合いは象徴主義のような色使いで人物が青っぽく描かれてたりとなんとも不思議な魅力のある作品でした。調べてみたら画風がどんどん変わっていった画家のようで、この作品は新印象派と象徴主義に影響を受けた時代に描いたのかもしれないです。
このコーナーを見ていてもヘレーネが幅広く柔軟にその時代の優れた画家たちの作品を収集していたのがわかりますが、傾向としては色合いが美しいものという点が共通しているのかなと思いました。
そしていよいよゴッホの作品。まずはオランダ時代の素描のコレクション。伝道師を目指していたというだけあって、ゴッホの生真面目な性格を表してるかのようなきっちりとしたタッチ。そして飾り気のない農夫や元娼婦の女性など地に足のついた人たちを描いてます。不器用な性格からなのかモデルの女性を妊娠させたと誤解され、人を描けなくなったというエピソードを聞くと、周りに理解されるのが難しい人だったんだなぁと思います。
オランダ時代に徹底的に素描で描いた畑や森がのちのアルルでの色彩豊かな作品の下地になったことがわかる充実のコーナーですね。
素描時代を経ていよいよ油彩画に取り掛かります。オランダ時代はまだまだ暗めなのですが、初期に描いた静物画の「麦わら帽子のある静物」は薄目のベージュや黄色を使って思ったより明るめの作品。静物画のように室内で描く作品は比較的明るめで戸外で農夫や畑を描くと暗めになるっていうのも面白い。ゴッホの目にはそう映っていたのかなぁ。
そしていよいよパリへ。
パリに出てきて様々な画家と出会い、自分の作風が古臭いのではと思うようになるかなり作品にも変化が表れます「レストランの内部」では点描を取り入れたりして、様々なスタイルにチャレンジしてたようです。
そして理想を求めてさらに南下、アルルに家を構えます。
アルル時代になると一気に色が増えますね。そして黄色!「レモンの籠と瓶」なんて黄色尽くしです。好きだなーこの作品。そして敬愛するミレーの種まく人をリスペクトして描いたゴッホ版「種まく人」 オランダ時代に描いた農夫の姿とは全く違う描き方ですが、一貫して農夫に対しては「無限の象徴」として憧れの対象である姿勢は変わらないのですね。
アルルに移ってきたのはパリで知り合った画家たちと絵を描きながら暮らすためなんですが、結局来たのはゴーガン一人。とにかく相手に気持ちが伝わりにくいゴッホ。だんだん精神的にも追い詰められてきます。
またアルルの太陽はゴッホの作風に大きな影響を与えましたが強すぎる太陽の光は同時に精神も蝕んだようで、自らサン=レミの療養院に入院し、そこでも作品を作り続けます。
「サン=レミの療養院の庭」は今回の展示品の中では一番好きでした。フランスワールドカップでフランスに訪れた際に観光に行き、実際に炎天下の中糸杉のある道を歩いて療養院を見たからかもしれないです。南仏特有の澄み切った青空と乾燥した地面に照り付ける太陽は暴力的でもあるのですよね。暑さに朦朧となりながら歩いたのが強烈に印象に残っています。ゴッホが描いたときの風景のまま残っていました。ポスターにもなっている「夜のプロヴァンスの田舎道」は三日月と同じくらいの大きさで星を描き、神秘的な作品だなぁと思いました。
そしてゴッホ美術館からは「黄色い家(通り)」が来日。これ元々来る予定だったんでしょうか。充実のゴッホコレクションでした。
そして音声ガイドはナビゲーターの鈴木拡樹さんとアンバサダーの浜辺美波さんのお二人。浜辺さんが作品紹介で拡樹さんがゴッホの手紙の朗読したり他の画家のセリフを言ったり、前のKIMONO展よりもボリュームもあったし、役として話す部分が多かったので聴きごたえありました。浜辺さんの声も聞き取りやすくてすんなり耳に入って心地よかったです。
ゴッホは人気あるので日本中どこかでゴッホが見られる展覧会やってる気がしますが、直近で見たゴッホ展は2019年上野の森美術館の「ゴッホ展」でした。
構成も似てましたけど、個人のコレクターが収集したものだと傾向がまた違うのでいろいろな角度から見れますね。今回はゴッホ以外の画家の作品がよかったなぁ。
何度見てもゴッホの作品には引き寄せられる魅力があるし、長生きして絵が売れるようになったらどんな作品を描いていたのかなぁと思いを馳せてしまいます。
モネも長生きしたから延々と睡蓮を描き続けるなんてチャレンジができたわけだしゴッホだったら何を描くんだろう。
いや、短い生涯を燃焼しつくしたからこその魅力だったのかもしれないし興味はつきないですね。
とてもいい展覧会でした。
サントリー美術館 開館60周年記念展 「刀剣 もののふの心」展
2021年9月15日(水)~10月31日(日)で開催されているこちらの展覧会。
ちょうど折り返しにあたる10月4日(月)に行ってきました。
刀剣や甲冑類を中心に絵画の中に描かれたもののふの姿も併せて展示されている展覧会。これまで見たことのない刀が多数登場するので行ってきました。
滅多に見られない、そしておそらく今後も東京で見ることはないだろう刀剣類が本当に多かったです。
テーマごとに印象に残った作品について見ていきたいと思います。
- 絵画に見るもののふの姿
まずは合戦の様子を描いた屏風絵から。「後三年合戦絵巻」。後三年の役って何だっけ?というレベルなのですが奥州藤原氏誕生となったきっかけの争乱のようです(雑)。絵巻物としては大判で保存状態もよかったです。刀に注目して見てみると合戦で刀って使われてないんですよね。弓とか薙刀が多い。やっぱり刀剣は武器としてよりも奉納するもの、ご神体としての役割が大きかったんだなぁと思います。
「平家物語絵巻」は延暦寺の僧侶が強訴している場面。神輿を担いでなだれ込んでて「強訴じゃああ」の声が聞こえてきそう。ちなみにトーハクで開催される「最澄と天台宗のすべて」にこの神輿も展示されるそうです。これは見たいかもー
- 祈りを託された剣と刀
古社寺伝来の刀剣ここからは刀剣のコーナーが始まります。京都の仁和寺や泉涌寺などの古社所蔵の品ばかり。元々天皇家に伝わる三種の神器にも草薙の剣があるくらいなので戦いの道具というより祈りや厄除けのような意味合いが強かったってことなんですね。
このコーナーで一番目を引いたのが国宝の「附黒漆宝剣拵 無銘 剣」です。
武士が身に着けるような刀剣ではなく不動明王が手にしているような三鈷剣でめちゃくちゃかっこよかった!ちょっとテンションあがりました。力強くて神秘的。まさにお宝!って感じがしました。刀の見方は正直まだまだわかってないのですが、この剣については見た目のかっこよさに引き寄せられました。
- 武将が愛した名刀 武士と刀剣
ニコニコ美術館でこちらの展覧会の紹介している番組の中では「トロフィーワイフ」なんて言われ方もしていましたが合戦に勝利すると勝った方は戦の報償として刀を授かったり、相手から奪ったりと刀をたくさん所持していることが強さの象徴だったみたいです。そんな武将たちが愛用し側においた刀たちが並んでいました。
その最たるものが今回展示されている「義元左文字」(宗三左文字)で桶狭間の戦いに勝利した織田信長が今川義元から奪った刀であまりの嬉しさに刻印をしてしまうほど。今回茎に記された文字も見ることができました。これが「皆を狂わす魔王の刻印」かぁ…
刀剣乱舞でお馴染みの「骨喰藤四郎」、源氏の重宝「膝丸(薄緑)」はどちらも見入ってしまう美しさ。
膝丸は見た目とてもシャープなんだけど実はとても重いんだとか。細マッチョなのね。
骨喰藤四郎は元が薙刀だったものを磨き上げて脇差にしたというだけあって刀剣乱舞のキャラとしては儚げな美少女(男士だけど)風なのに刀は思ったより力強く芯の強さを感じさせる刀でした。膝丸の近くには源氏に所縁のある「曽我物語図屛風」が展示されていました。どこに曽我兄弟がいるのか探すのが大変でしたが、兄の十郎の着物は千鳥柄、弟の五郎は蝶の柄というのが目印なんだそう。
後期からは「名物秋田藤四郎」も展示されますが、私が行ったときはまだ展示されておらず「折り紙付き」の語源となった鑑定書が展示されてました。その他展示リストにはないのですが太平洋戦争後にGHQが刀を接収したときの書類などもあり今伝わっている刀は戦国時代の争乱やたびたび発生する火事や明治維新の際の廃刀令なども乗り越えて大切に保管されてるんだなぁと思うと姿勢を正さずにはいられないですね。すべての美術品に言えることでもありますが今私たちが目にすることができるのは先人たちが大切に次代に繋いでいったからなんですよね。奇跡だなぁって毎回思います。
- もののふの装いと出で立ち 甲冑武具と刀装具
こちらのコーナーは甲冑の変遷を追って展示されてます。一番クラシックな「色々糸威鎧」は平安時代末期頃の武士がつけていた鎧を江戸時代に復古制作したもの。源平合戦の頃に身に着けていたような大振りな兜が特徴的。
「平清盛」あたりで見た感じと似てると思いました。この頃は馬上戦がメインなので弓で討たれて怪我をするのを防ぐために袖や肩もがっちり守られてます。五月人形のイメージですかねー そのあと銅丸、腹巻、当世具足と変化。銅丸、腹巻は元々は雑兵が身に着けていたものらしいですが、馬上戦から地上戦に戦いが変化するのに合わせて軽量化して身分問わず身に着けるようになったそうです。当世具足は戦国時代に鉄砲が登場し、がっちりと身を守る必要があり、かつ動きやすく軽量なものに変化していったそうです。
「紺糸威銅丸 兜・大袖付」は織田信長が着用していたと言われるもの。ニコ美でお話されてたのですが、甲冑類は大変繊細で弱いのでなかなか展示されないそう。この銅丸も10年ぶりくらいに表に出てきたそうで、しかも義元左文字と一緒に出てる機会など滅多にないことらしいです。なるほどー。見れてよかった。
https://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/kin/item07.html
ふむふむ。今回展示されていた当世具足は「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威用具足」で豊臣秀次が使用していたと伝わっているものだそう。朱塗の赤備えが印象的でした。
趣向が変わったものとして子ども用の甲冑セットで秀吉の嫡男「棄丸所用小形武具」です。子ども用というか実際に身に着けるというよりお祝い用なので飾るものでしょうね。銅丸には狩野元信が下絵を描いたらしい花鳥画が書かれている豪華なもの。秀吉が棄丸誕生をどれだけ喜んでいたかが伝わります。当時としては珍しくなかったのかな。蒲生氏郷が送ったもののようです。これだけ揃っている子ども用の武具セットはほとんどないそうです。大変貴重な機会とのこと。刀剣だけじゃなくてレアなものばかり展示されてるんですね。ありがたや。
- 祭礼と刀剣 祇園祭礼図を中心に
こちらは八坂神社に奉納されてる刀剣類や祇園祭の山鉾巡行の山鉾の上に建てる長刀などが展示されてます。京都を出るのが初めてという貴重な長刀「祇園祭の山鉾巡業の山車の上に飾る長刀「銘(裏菊紋)和泉守藤原来金藤/(菊紋)大法師法橋来三品栄泉 延宝三年二月吉日」。元々祇園祭は疫病退散の祭礼なので邪気を払う刀をぜひこの機会に展示したいとサントリー美術館さんが特別にお願いして叶ったとのこと。またも有難い案件。
合わせて「日吉山王祇園祭礼図屏風」で長刀がついた状態の山鉾の様子が見られるようになってます。
- 躍動するもののふのイメージ 物語絵と武者絵
刀剣以外の作品の目玉の一つが酒「酒伝童子絵巻」でしょう。狩野元信作の絵巻物。鬼の棲処が丹波伊吹山と近江大江山の2系統あるらしいのですが伊吹山系統の最古のものらしいです。
色彩鮮やかで生き生きとした人物の様子が描かれてます。場面替えがあり、私が見たときは鬼退治に身支度をしている場面だったので、有名な鬼の首が飛んでる場面はこれ以降の展示になるそうです。源頼光が所持しているのが雲切(蜘蛛切)さきほど展示されてた膝丸の後に名付けられた呼び名ですね。渡辺綱が所持しているのが鬼切(髭切)だそう。土蜘蛛を切った伝説の蜘蛛切ですね。
そして武者絵といえば歌川国芳。ということで国芳の浮世絵も多数展示されてます。ここには土蜘蛛を退治する源頼光と四天王の絵がありました。「源頼光公舘土蜘作妖怪図」土蜘蛛退治の頼光といえば国芳のイメージがありますね。
サントリー美術館さんは1961年の開館以来「生活の中の美」を基本理念とされているそうなので、このコーナーがもしかしたら一番得意分野というか専門分野なのかもしれません。武士の生活や刀剣に関連する職人たちの日常が垣間見える作品が並びます。「厩図屏風」は平武士にとって大切なパートナーであった馬が生活している厩の様子を描いたもの。馬がずらりと並ぶ前に畳が敷いてあって囲碁や将棋や双六遊びをしに人々が集まっています。
この厩図屏風を現代アートで再現したのが山口晃さんの「厩図2004」で、実は私はこちらを先に見ていました。馬と一緒にバイクが並んでいたりと今昔一体となった不思議な作品でとにかくかっこよかった。
なのであーあの絵の元ネタはこれかー!ってなりました。戦から離れのんびりとゲームを楽しむ武士の様子が見られますが、こういう日常絵はどういう要請があって描かれたものなのかなぁと思いました。室町時代に描かれたものらしいのですが将軍の要請だと思うのですが馬が好きだったのかなぁ。
ちょっと珍しい組合わせの作品としては「家康・信玄・謙信」の三武将と家臣を描いた三幅対の掛け軸ですかね。家臣を従えて一番上にそれぞれ家康、信玄、謙信といるんですが、真ん中の掛け軸にいるのが「大権現」と描かれてる家康で、これは何かの隠喩なんでしょうかね。家康とセットで描かれてるのが信玄と謙信というのもあんまりない取り合わせのように感じるのですが、信長に仕えてる頃はこの3人が追いつ抜かれつしてたからかなぁ。3英傑(信長、秀吉、家康)でくくる印象が強いので。
あとは職人尽の3作品。屏風と額面絵と絵巻と3種類。長屋のような場所に扇や傘などの店とともに研師や矢羽や弓の工房が並んでます。元々は鎌倉時代に職人歌合絵巻というものが誕生し、江戸時代になると生活の中の職人を描いた作品が描かれるようになったのだとか。家族で運営している家内制手工業の様子がわかります。
他にも三所物(みところもの)や鍔(つば)などの刀装具も当時の金工技術が結集したと思われるような花鳥図や合戦図を模したものなども多数展示されていたり刀を収める拵も黒漆や魚の鱗を模したものなど美術品として一級のものばかり。明治維新で廃刀令が出た際に刀に関わる職人たちが他の工芸作品を作るようになったらしいですが武器としての刀は作られなくなったけどこういった技術は今後も引き継いでいってほしいものだと強く思いました。
展示替え後の後期にも行きたいなぁと思っています。秋田藤四郎くんにも会いたいしね。