おうちに帰ろう

心茲にありと

サントリー美術館 開館60周年記念展 「刀剣 もののふの心」展

2021年9月15日(水)~10月31日(日)で開催されているこちらの展覧会。

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ちょうど折り返しにあたる10月4日(月)に行ってきました。

刀剣や甲冑類を中心に絵画の中に描かれたもののふの姿も併せて展示されている展覧会。これまで見たことのない刀が多数登場するので行ってきました。
滅多に見られない、そしておそらく今後も東京で見ることはないだろう刀剣類が本当に多かったです。

テーマごとに印象に残った作品について見ていきたいと思います。

まずは合戦の様子を描いた屏風絵から。「後三年合戦絵巻」後三年の役って何だっけ?というレベルなのですが奥州藤原氏誕生となったきっかけの争乱のようです(雑)。絵巻物としては大判で保存状態もよかったです。刀に注目して見てみると合戦で刀って使われてないんですよね。弓とか薙刀が多い。やっぱり刀剣は武器としてよりも奉納するもの、ご神体としての役割が大きかったんだなぁと思います。
平家物語絵巻」延暦寺の僧侶が強訴している場面。神輿を担いでなだれ込んでて「強訴じゃああ」の声が聞こえてきそう。ちなみにトーハクで開催される「最澄天台宗のすべて」にこの神輿も展示されるそうです。これは見たいかもー

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  • 祈りを託された剣と刀 

古社寺伝来の刀剣ここからは刀剣のコーナーが始まります。京都の仁和寺泉涌寺などの古社所蔵の品ばかり。元々天皇家に伝わる三種の神器にも草薙の剣があるくらいなので戦いの道具というより祈りや厄除けのような意味合いが強かったってことなんですね。
このコーナーで一番目を引いたのが国宝の「附黒漆宝剣拵 無銘 剣」です。

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武士が身に着けるような刀剣ではなく不動明王が手にしているような三鈷剣でめちゃくちゃかっこよかった!ちょっとテンションあがりました。力強くて神秘的。まさにお宝!って感じがしました。刀の見方は正直まだまだわかってないのですが、この剣については見た目のかっこよさに引き寄せられました。

 

  • 武将が愛した名刀 武士と刀剣

ニコニコ美術館でこちらの展覧会の紹介している番組の中では「トロフィーワイフ」なんて言われ方もしていましたが合戦に勝利すると勝った方は戦の報償として刀を授かったり、相手から奪ったりと刀をたくさん所持していることが強さの象徴だったみたいです。そんな武将たちが愛用し側においた刀たちが並んでいました。


その最たるものが今回展示されている「義元左文字」(宗三左文字)で桶狭間の戦いに勝利した織田信長今川義元から奪った刀であまりの嬉しさに刻印をしてしまうほど。今回茎に記された文字も見ることができました。これが「皆を狂わす魔王の刻印」かぁ…

刀剣乱舞でお馴染みの「骨喰藤四郎」、源氏の重宝「膝丸(薄緑)」はどちらも見入ってしまう美しさ。
膝丸は見た目とてもシャープなんだけど実はとても重いんだとか。細マッチョなのね。
骨喰藤四郎は元が薙刀だったものを磨き上げて脇差にしたというだけあって刀剣乱舞のキャラとしては儚げな美少女(男士だけど)風なのに刀は思ったより力強く芯の強さを感じさせる刀でした。膝丸の近くには源氏に所縁のある「曽我物語図屛風」が展示されていました。どこに曽我兄弟がいるのか探すのが大変でしたが、兄の十郎の着物は千鳥柄、弟の五郎は蝶の柄というのが目印なんだそう。

後期からは「名物秋田藤四郎」も展示されますが、私が行ったときはまだ展示されておらず「折り紙付き」の語源となった鑑定書が展示されてました。その他展示リストにはないのですが太平洋戦争後にGHQが刀を接収したときの書類などもあり今伝わっている刀は戦国時代の争乱やたびたび発生する火事や明治維新の際の廃刀令なども乗り越えて大切に保管されてるんだなぁと思うと姿勢を正さずにはいられないですね。すべての美術品に言えることでもありますが今私たちが目にすることができるのは先人たちが大切に次代に繋いでいったからなんですよね。奇跡だなぁって毎回思います。

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後期に入った現在ではこちらの四振り勢ぞろいしていますね

 

  • もののふの装いと出で立ち 甲冑武具と刀装具

こちらのコーナーは甲冑の変遷を追って展示されてます。一番クラシックな「色々糸威鎧」は平安時代末期頃の武士がつけていた鎧を江戸時代に復古制作したもの。源平合戦の頃に身に着けていたような大振りな兜が特徴的。

平清盛」あたりで見た感じと似てると思いました。この頃は馬上戦がメインなので弓で討たれて怪我をするのを防ぐために袖や肩もがっちり守られてます。五月人形のイメージですかねー    そのあと銅丸、腹巻、当世具足と変化。銅丸、腹巻は元々は雑兵が身に着けていたものらしいですが、馬上戦から地上戦に戦いが変化するのに合わせて軽量化して身分問わず身に着けるようになったそうです。当世具足は戦国時代に鉄砲が登場し、がっちりと身を守る必要があり、かつ動きやすく軽量なものに変化していったそうです。

紺糸威銅丸 兜・大袖付」織田信長が着用していたと言われるもの。ニコ美でお話されてたのですが、甲冑類は大変繊細で弱いのでなかなか展示されないそう。この銅丸も10年ぶりくらいに表に出てきたそうで、しかも義元左文字と一緒に出てる機会など滅多にないことらしいです。なるほどー。見れてよかった。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/kin/item07.html

 

 

ふむふむ。今回展示されていた当世具足は「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威用具足」で豊臣秀次が使用していたと伝わっているものだそう。朱塗の赤備えが印象的でした。

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趣向が変わったものとして子ども用の甲冑セットで秀吉の嫡男「棄丸所用小形武具」です。子ども用というか実際に身に着けるというよりお祝い用なので飾るものでしょうね。銅丸には狩野元信が下絵を描いたらしい花鳥画が書かれている豪華なもの。秀吉が棄丸誕生をどれだけ喜んでいたかが伝わります。当時としては珍しくなかったのかな。蒲生氏郷が送ったもののようです。これだけ揃っている子ども用の武具セットはほとんどないそうです。大変貴重な機会とのこと。刀剣だけじゃなくてレアなものばかり展示されてるんですね。ありがたや。

 

  • 祭礼と刀剣 祇園祭礼図を中心に

こちらは八坂神社に奉納されてる刀剣類や祇園祭山鉾巡行の山鉾の上に建てる長刀などが展示されてます。京都を出るのが初めてという貴重な長刀「祇園祭の山鉾巡業の山車の上に飾る長刀「銘(裏菊紋)和泉守藤原来金藤/(菊紋)大法師法橋来三品栄泉 延宝三年二月吉日」。元々祇園祭は疫病退散の祭礼なので邪気を払う刀をぜひこの機会に展示したいとサントリー美術館さんが特別にお願いして叶ったとのこと。またも有難い案件。

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合わせて「日吉山王祇園祭礼図屏風」で長刀がついた状態の山鉾の様子が見られるようになってます。

 

  • 躍動するもののふのイメージ 物語絵と武者絵

刀剣以外の作品の目玉の一つが酒「酒伝童子絵巻」でしょう。狩野元信作の絵巻物。鬼の棲処が丹波伊吹山と近江大江山の2系統あるらしいのですが伊吹山系統の最古のものらしいです。

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色彩鮮やかで生き生きとした人物の様子が描かれてます。場面替えがあり、私が見たときは鬼退治に身支度をしている場面だったので、有名な鬼の首が飛んでる場面はこれ以降の展示になるそうです。源頼光が所持しているのが雲切(蜘蛛切)さきほど展示されてた膝丸の後に名付けられた呼び名ですね。渡辺綱が所持しているのが鬼切(髭切)だそう。土蜘蛛を切った伝説の蜘蛛切ですね。

そして武者絵といえば歌川国芳。ということで国芳の浮世絵も多数展示されてます。ここには土蜘蛛を退治する源頼光と四天王の絵がありました。「源頼光公舘土蜘作妖怪図」土蜘蛛退治の頼光といえば国芳のイメージがありますね。

dcollections.lib.keio.ac.jp

 

サントリー美術館さんは1961年の開館以来「生活の中の美」を基本理念とされているそうなので、このコーナーがもしかしたら一番得意分野というか専門分野なのかもしれません。武士の生活や刀剣に関連する職人たちの日常が垣間見える作品が並びます。「厩図屏風」は平武士にとって大切なパートナーであった馬が生活している厩の様子を描いたもの。馬がずらりと並ぶ前に畳が敷いてあって囲碁や将棋や双六遊びをしに人々が集まっています。

bunka.nii.ac.jp

この厩図屏風を現代アートで再現したのが山口晃さんの「厩図2004」で、実は私はこちらを先に見ていました。馬と一緒にバイクが並んでいたりと今昔一体となった不思議な作品でとにかくかっこよかった。

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なのであーあの絵の元ネタはこれかー!ってなりました。戦から離れのんびりとゲームを楽しむ武士の様子が見られますが、こういう日常絵はどういう要請があって描かれたものなのかなぁと思いました。室町時代に描かれたものらしいのですが将軍の要請だと思うのですが馬が好きだったのかなぁ。

 

ちょっと珍しい組合わせの作品としては「家康・信玄・謙信」の三武将と家臣を描いた三幅対の掛け軸ですかね。家臣を従えて一番上にそれぞれ家康、信玄、謙信といるんですが、真ん中の掛け軸にいるのが「大権現」と描かれてる家康で、これは何かの隠喩なんでしょうかね。家康とセットで描かれてるのが信玄と謙信というのもあんまりない取り合わせのように感じるのですが、信長に仕えてる頃はこの3人が追いつ抜かれつしてたからかなぁ。3英傑(信長、秀吉、家康)でくくる印象が強いので。    

あとは職人尽の3作品。屏風と額面絵と絵巻と3種類。長屋のような場所に扇や傘などの店とともに研師や矢羽や弓の工房が並んでます。元々は鎌倉時代に職人歌合絵巻というものが誕生し、江戸時代になると生活の中の職人を描いた作品が描かれるようになったのだとか。家族で運営している家内制手工業の様子がわかります。

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他にも三所物(みところもの)や鍔(つば)などの刀装具も当時の金工技術が結集したと思われるような花鳥図や合戦図を模したものなども多数展示されていたり刀を収める拵も黒漆や魚の鱗を模したものなど美術品として一級のものばかり。明治維新廃刀令が出た際に刀に関わる職人たちが他の工芸作品を作るようになったらしいですが武器としての刀は作られなくなったけどこういった技術は今後も引き継いでいってほしいものだと強く思いました。

展示替え後の後期にも行きたいなぁと思っています。秋田藤四郎くんにも会いたいしね。