おうちに帰ろう

心茲にありと

十一面観音菩薩とイスラーム王朝とその他いろいろトーハク詰め合わせ

「日本彫刻の最高傑作、東京で初公開」

tsumugu.yomiuri.co.jp

 

ということで行ってきました東京国立博物館(トーハク)。

奈良県桜井市にある聖林寺国宝 十一面観音菩薩立像が東京で初公開。
この観音像は、江戸時代までは同じ奈良の三輪山の麓にある大神神社にありました。大神神社は本殿を持たず三輪山信仰を拝む自然信仰の神社で奈良時代以降は仏教の影響を受けて神社に付属する寺(大神寺、のちに大御輪寺に改称)や仏像が作られたそう。それが明治の神仏分離令を受けて寺社にあった仏像は近隣の寺に移設し、この度、150年ぶりに各所に散らばった仏像さまが再会を果たされたとのこと。


その後に起こる廃仏毀釈なんかはひどいものですが、明治維新てやることが極端ですよね。文化遺産という感覚が当時はなかったのかなぁ。


この度集合したのは聖林寺の十一面観音菩薩立像、法隆寺地蔵菩薩立像、正暦時の日光菩薩立像、月光菩薩立像です。
特別室に入ると正面に一段高く優美なお姿を見せる十一面観音にいやでも目が釘付けになります。

 

三輪山の大きな写真パネルと三ツ鳥居の複製を背にして立つ姿は八頭身で実際にはお堂内に展示されてるので三輪山と三ツ鳥居が背景にあるのはおかしいのかもしれませんが、江戸時代以前まであった自然信仰の神社である大神神社にあったと考えると、仏像でありながらも三輪山の神様のように当時の方たちは拝んでいたのではないかなぁと思うので、神々しさが高まっていい演出になったような気がします。

十一面観音は木心乾漆造りという8世紀ころによく使われた手法で、木で大枠を作りその上に布を一枚巻き付けその上から漆と木の粉の練り物で成形する技法だそう。木と違って柔らかいので細かい造形が作れるので身に着けた衣や身体の線のくびれなどが美しく表現できるとのこと。ただ、表面が柔らかいので壊れやすく保存が難しそうですね。だからあまりその後は使われないのかな。きれいな姿で残っているのはとても貴重なんですね。

 

今は別々になってしまった当時の光背の一部も展

示されており、見たことないような大きさと凝ったデザインでした。手ぬぐいにデザインされてグッズとして販売されてましたが、これが実際に仏像の後ろに刺さってる姿はどんなだったろうと思うと、そりゃ信仰も篤くなるだろうなぁと思います。美しすぎるもの。

特別展「国宝 聖林寺十一面観音 -三輪山信仰のみほとけ」

三輪山には古事記の神話にも登場し、人が入れない禁足地もありそこから古墳時代の勾玉や御神酒造りに使われていた道具なども出土していて、そういった遺跡も今回一緒に展示されてます。脈々と祭礼の場として土地に根付いていたんですね。


またトーハク本館1階の特別5室は特別展以外のときは開放されてないので、こういうときに内部をまじまじと見てしまいます。
高い天井と表の大階段を上がったところにある扉から続くバルコニーにぐるりと囲まれていて、その正面がモナリザが展示されたところなんだなぁと思いながら上を見上げてました。

 

会場を出ると同じ一階の特別室3室でもこんな企画が始まってました。

www.tnm.jp

これめちゃくちゃ楽しかったです!!
入るとまずトーハクが所蔵している名だたる日本美術の作品の映像が流れてて
場内に入るとばばーんと年表が表示されてる大きなスクリーンがあって
各年代ごとに足跡マークが4個あり、そこに足を合わせると「火焔型土器」とか選択した作品がスクリーンに大写しにされて、手を動かすと映像が動いたり見たいところがアップになったりといろいろ動かせるんです。作品ごとに動きで特徴を見せてくれるのでとても分かりやすいし単純に楽しい!

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各所に足を合わせます。火焔型土器の足型に合わせると…

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火焔型土器が大きく映し出されて手をあげるとくるくる回ったりします


全部の足跡をめぐって手を振ったりあげたりまわしたりとインタラクティブに楽しみました。

 

そして高精細複製で制作された屏風絵が実際に部屋の調度品として使われていたイメージで展示されていてガラスケースなしで間近で見ることができます。今は尾形光琳風神雷神図屏風酒井抱一の夏秋草図屏風が背中合わせに展示されてます。色の濃淡まで再現されてて最新の技術ってすごいなぁと感心しました。日本画は展示できる期間も年間で限られてるし、実物を見ることができなくても通年で作品を知ることができるのは有難いですね。

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夏秋草図屏風。言われなければ本物と思いそう。

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風神雷神図屏風

展示される作品は期間ごとに変わるようです。この2作品は8月29日まで。このあとは以下の予定です。

2021年8月31日(火)~11月28日(日) 国宝 観楓図屛風(高精細複製品)

2021年11月30日(火)~2022年2月27日(日) 国宝 松林図屛風(高精細複製品)

2022年3月1日(火)~5月29日(日) 国宝 花下遊楽図屛風(高精細複製品:復元)

松林図屏風はどんな風に再現されるのか楽しみです。

 

続いて総合文化展へ。

今回の総合文化展のお目当ては本館13室金工コーナーの自在置物!
先日見たBS朝日のトーハクの特別番組でヤマザキマリさんと石坂浩二さんがめちゃくちゃ面白がってたのが気になって見てみたいなーと思ってたのです。
当然ながら動かせるわけではないのですが、龍の鱗?とか爪先とかほんとに動き出しそうなくらいリアル(いや龍は見たことないけどね)に作ってあって
ふおーと感心したのでした。

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テレビでは首を持ってあっちに向けたりこっちに向けたり楽しそうでした

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自在置物で一番多いのはえびなんだそう。触角が~ぞぞっ

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これ虫嫌いの人が見たら卒倒しそうなくらいリアルな蟷螂



まだまだあるよ!

お次は東洋館の「 マレーシア・イスラーム美術館精選 特別企画 「イスラーム王朝とムスリムの世界」」

www.tnm.jp


イスラム美術はアラベスク文様の美しさや金銀細工の細やかさなどのイメージがありますがまとまった展示で見ることはなかなかないのでどんな展示なんだろうと事前から楽しみにしていました。


イスラム王朝の知識があまりにもなく、歴史的背景はわからないのですけど各王朝が治めた地域が西はスペインから東は中国までとユーラシア大陸横断といった感じでとにかく広い。
その地域によって土地の文化とも相まった装飾品の装飾品のデザインも変わってくるのですが、細かな文様が施されているのは共通しています。あとクルアーンコーラン)の文字装飾の多様さも印象的でした。


また偶像崇拝禁止なので、人物を描いた芸術品はないと思っていたのですがそうでもなく、王族の肖像画などはそれなりにあったり、物語を描いたお皿やインドでは英雄を描いた細密画があったりと、時代と場所によっては意外とあるんだなってことが発見でした。
来年の2月20日まで開催されてるので時間があったらまた見にこようと思います。

 

7/13からは「聖徳太子法隆寺」展が始まり、おそらく多くの人が(といっても日時予約制なのでかつてのような混み方はしないでしょうが)訪れるだろうと思いますがその直前の普段のトーハクを楽しんで来ました。聖徳太子法隆寺展も楽しみです。