「近代の日本画」展と蔦屋重三郎と江戸の戯作者
五島美術館で開催されてる「近代の日本画」展(~6/20)に行ってきました。
そもそも今日は「るろうに剣心 最終章」を見に行くつもりだったけど昨日BigginingがからBigginingが公開されたからかその前に公開されたThe FINALは小さいスクリーンに移動となり上映回数も減りさらには50%制限もあって0時を過ぎて予約可能となった直後にほぼ完売。都民はさー、まだ見れてないと思うのよねるろ剣の最終章。公開直後に映画館が休業になっちゃったからさ。もうちょっと回数増やせませんか?
ということで美術館に行くことにして静嘉堂文庫美術館の「旅立ちの時」の後期展示に(前期はこちら)向かったら大人気のためこれから行っても待ち時間が1時間半以上もあるという情報を二子玉川まで来てからTwitterで知り、うーんさすがに整理券もらって周囲に何もない中で待つのもつらいなぁ…と思い、でもここまで来たから引き返すのもなんだし…と思って急遽、大井町線で一駅お隣の上野毛にある五島美術館に行くことに。上野毛って初めて降り立つ駅かもしれない。
ということで急遽訪問したこちらの展覧会。定期的に5~6月頃開催されているそうです。
五島美術館は東急の会長だった五島慶太翁が収集した古美術を展示するために創立したそう。美術館のお隣に立派な豪邸があり表札に「五島」とあったので創業一家が住まわれてるんですかね?
それにしても根津美術館も静嘉堂文庫美術館も山種美術館も実業家の趣味が高じて設立された美術館でお大尽さまさまですね。国のお金よりも民間のお金持ちが運営した方が美術品は守られるんじゃないかと思いますが、このあたりは寄付制度や税制度の見直しをした方がよさそう。
さて、展示内容ですが館所蔵の名だたる近代日本画の作品が長方形の展示室に40点ほど展示されてます。
渡辺省亭の「牡丹」は雪をかぶった藁の中から除く牡丹が美しかった。積もった雪はおそらく色を塗らずに地の色をそのまま生かしてるっぽい。円山応挙の雪松図屏風と同じ手法かな。そしてよく見るとそこにちらちらと降る雪を白い点々で描いてて単眼鏡で見てようやく気づいた!!やっぱり何か一ひねりしてきますね。それが見れただけでも来た甲斐があったなーと思いました。
川端龍子の「冨貴盤」(牡丹のことだそう。牡丹の別名が富貴草というのを始めて知りました)はこんな大きな牡丹見たことないっていうくらい迫力ある牡丹でとにかく大きいことはいいことだな川端龍子っぽい華やかな作品でした。
金島桂華の作品が比較的多く展示されていたのですがどれもよかったなぁ。「晨光」は鶴と雪をかぶった椿が描かれてるのですが、鶴の脚はかなり細密に描いてるのに対し、椿はむしろフラットな紅色で描かれててその対比が面白かったですね。とてもモダンな印象でした。
近代といっても明治初期の橋本雅邦といった狩野派の流れが色濃い作品から、昭和に入るとだいぶ画風も変わってきて平面的な色使いが増えてきて「~派」みたいな区分けではなくなり、それぞれが自分の画風を模索しているのだなぁと思います。系譜としての影響はあれど師弟ではなく学校制度となり絵を発表する場も変わればそうなりますよね。
そしてここに並んでる人たちはなぜ西洋画ではなく日本画を選んで描いてきたのだろう、というのも気になります。近代から現代の日本画の流れはもうちょっとちゃんと追いかけたいなぁ。
絵画のほかに硯と墨のコレクションも展示されててお大尽さまの趣味は絵画から入って茶道や書に広がり、そしてそれらの道具へたどり着くのですね。その教養に感服するばかり。天然の石でできて硯なんてものもあり、知らないことばかりだなぁ。
そして同時開催で「蔦屋重三郎と江戸の戯作者」という特集展示があり、ちょうど映画「HOKUSAI」で蔦屋重三郎が曲亭馬琴や喜多川歌麿の作品を出版するくだりを見たところだったのでとてもタイムリーでした。
吉原のガイドブックとも入れる「吉原細見」は昔の「ぴあ」みたいな感じだったのかなーなんて思いながら興味深く鑑賞。喜多川歌麿が表紙を描いた戯作本もあり、そこからあの美人絵が生まれたのかぁと思いました。
洒落本、狂歌、黄表紙と様々な作品が並んでましたが今でいう文芸物や漫画雑誌のような感じなんでしょうかね。絵が中心のもの、字の分量が多いもの、当時の世相を皮肉るような作品など多種多様。当時の人たちはこれが後世に残るとは思ってなかっただろうなぁ。何でも取っておくもんです。
あ、どうでもいいけど出品リストがB4サイズだったのがちょっと新鮮というか斬新というか困るというか…。美術館に行くときはA4サイズのクリップボードを持参し出品リスト等を挟んで気になることをメモりながら回るんだけどB4サイズだと合わなくて二つ折にしなきゃならずしかも縦書きだから(これもえ?と思ったけど)勝手が違ってメモが取りづらかった。B4縦書きの美術館初めてかも。いろいろ独特。
そしてこの美術館、建物は平安時代の寝殿造りをイメージして設計されてるとかでとてもシンプルでコンパクトなんですが庭園がめっちゃ広い!武蔵野の国分寺崖の地形をそのまま生かしてるとのことで高低差がかなりあり鬱蒼とした林になってて遭難するんじゃ…っていうくらい緑が濃い。そして驚くことに古墳があるんですよ。都内にも古墳があるんだ!と驚きました。前方後円墳のような大きなものではないけどちょっとした小高い丘になってて古墳の上に立つことなんてなかったんで貴重な経験でした。すごいなぁ東急さん。
前から気になっていたけどなかなか行けずにいた五島美術館。
急遽行くことにしましたが展示内容といい美術館の成り立ちや環境も含めてとても面白いところでした。8/28~10/17には「秋の優品展 桃山の華」で本阿弥光悦筆俵屋宗達下絵の色紙帖(新古今和歌集)などの展示もあるようで、これはぜひ行かねば!と思っているところです。
いい時間でした。