おうちに帰ろう

心茲にありと

やっと…!国宝「鳥獣戯画のすべて」展 行けました!

「史上初!全4巻全場面、一挙公開!」

 

chojugiga2020.exhibit.jp

 

いやーようやく見れました。


当初の開催期間4月13日~5月30日の予定が4月25日からの緊急事態宣言を受けて休業となり、5月11日にいったん再開のアナウンスがありましたが一転休館。
このまま閉幕してしまうのか…と半ば諦めていたところ、6月20日まで会期を延長するとの告知が!!

 これが出たのが5月21日で緊急事態宣言がいつまでか不明なとき。

恐らく美術館関係者の横の繋がりで都と文化庁の偉い人たちあちこちに相当ネゴネゴしたんでしょうね。

緊急事態宣言延長決定、美術館、映画館は上限を設けた上での営業可能との通達直後にチケット販売再開のアナウンスが出たってことは裏が取れた上でのことだと思うんですよ。じゃないとサイトの修正とか準備とか間に合わないですからね。
ほんとにドタバタだっただろうなぁ。ただただ頭が下がります。

 

そもそも本来は昨年開催する予定だったこの展覧会(おそらく東京オリンピックパラリンピック開催に合わせてだったのでしょう)
コロナ禍で中止となり、このまま企画自体が中止となってもしょうがない中
海外からの貸出品も含めて予定通りの展示内容で1年越しで開催できたことがほんとに素晴らしいです。
いやーお疲れ様ですありがとうございます!!としかいいようがない。

とまぁそんなこんなに思いを馳せながら行ってまいりました。


今回、通常休館日の月曜も開館し、開館時間も20時までと長めに設定されていたりと
多くの人にみてもらえるような工夫をされています。
いや、まぁぶっちゃけ専用の動く歩道まで作って開催してるんでそれくらいやらないと
全然収支が合わないってことなんだと思いますけど(それでもきっと大赤字だろうなぁ…)有難いことです。


前置きが長くなりました。

 

今回は「鳥獣戯画のすべて」と謳っているいるだけあり会場いたるところ鳥獣戯画です。

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お馴染みの平成館入口横の看板

エスカレーター上がってイヤホンガイドを借りたあと、反対側(グッズ売り場側)から第一会場に入ると、まず鳥獣戯画とは、という紹介映像が大きなスクリーンで映しだされてます。ふむふむと眺めたあと、さぁ動く歩道か?と思ったらまぁ焦るなよってことでひとまず住吉家に伝わる模本で肩慣らし。素人が見たら普通にこれが鳥獣戯画かーってなりそう。模本を見ると原典には描かれてない部分があったり順番が違っていたりと鳥獣戯画研究においてはとても重要な意味を持つそうです。後半にも別な模本が登場します。

 

そして次の部屋に入るとテーマパークにあるような待機列用のスロープが見えて、おお!いよいよ動く歩道に乗れるのね!
並んでる間も退屈しないように有名な場面を拡大したパネルがあって音声ガイドで解説してくれたりと様々な工夫がされてて並々ならぬ気合を感じます。そりゃ延長もするわ。

並んだ時間は5分くらいだったでしょうか。いよいよ目の前に流れる歩道が来て足を乗せました!評判通りとても見やすい!自分で歩くよりも速度が一定だし目線を保ったまま見られるのが嬉しい。スピードも適度でじっくり見つつ絵が流れて行くのでめっちゃ楽しい。ナニコレずっと乗ってたい。甲巻は動きの多い場面が多いから尚更流れていくのに向いてるんですね。歩道は右から左に進んでいくのだけど甲巻は高度な創作テクニックを使ってて左から右に進む場面もあるけど、何でこうなってるのかなぁー?あーそういうことね、と種明かしまでの時間がちょうどよくてこれ考えた人天才だなって思いました。すごいアイデアだと思います。途中で横入りされることもないから無駄なストレスもないし素晴らしい!
動いて見ることでより絵の躍動感も感じられてほんと楽しかった。

 

次の部屋には乙、丙、丁が3方に展示されててこちらは自分で歩いて見ます。
乙は動物図鑑的な巻で前半には馬、牛、鷲、犬、鶏など身近な動物、後半には犀(霊亀もしくは玄武)、麒麟などの霊獣や豹、山羊、虎、獅子などの外来の動物、龍、白象(普賢菩薩が乗ってます)、獏などの空想の動物などが描かれてます。後半は中国から渡ってきた書物を見ながら写したのでしょうね。甲巻とは描かれた目的が違うんでしょうね。水墨画や屏風絵でもよく見かけるモチーフですがなんかとぼけた顔してるんですよね。虎もなんだか胴長だし。獅子とか口からなんか出してるし(吠えてる?)こういう表現は日本独自のものかなぁと。

丙巻になると人間登場。実は前半と後半はもともと表裏で描かれてたものを剥がして裏打ちして一枚の絵巻にしたそうで、確かに紙がかなりカスカスです。
別の絵で同じ位置に墨のにじんだあとがあってこれは裏に写っていたからだそう。製作方法も他の巻とは違うとなるとますますどんな目的で描かれたのか気になりますね。

登場する人間tたちは他愛もない遊びをしている場面が多く描かれてて「耳引き」とか紐を耳にかけて引っ張り合う遊びとかでゴムパッチンみたいなもんですかね。昔からあんまりやること変わらないんですね。いや何が楽しい?
後半の動物たちは甲巻と同様に猿や蛙が擬人化されてお祭りしてたり蹴鞠したりしてる様子が描かれてます。筆遣いが違うので作者は違うっぽい。

 

丁巻は人物のみで登場するのも僧侶だったり武士だったり庶民よりももうちょっと位の高そうな人たちが多く登場します。流鏑馬してたり田楽してたり。甲巻の猿の法会の場面を今度は人間がしてたりなど対になるような場面もあります。丁巻の筆致が一番洒脱のような印象ですね。適当に書いてるようで太さの描き分けやスピード感に技術の高さを感じます。力の抜け加減が仙厓さんを思わせました。

 

ここで第一会場終わり。第一会場全部鳥獣戯画のみって贅沢!!いや全巻展示するにはそれだけのスペースが必要ってことですけども。

 

第二会場に進んでもまだ鳥獣戯画は終わらない。何たって鳥獣戯画のすべて」ですから。

続いては鳥獣戯画の断簡(だんかん)と言われるもの。こちらは伝来の過程で本来の巻物から分かれて一場面ごとの掛け軸となったものだそうです。また現存する甲巻には存在しない場面が描かれている模本もあり、断簡と模本合わせて甲巻の全容を解き明かそうというなかなか壮大な試みのコーナーとなっております。これつぎはぎするの大変そう…
断簡が存在するのは甲巻と丁巻の一部のみだそうで、そう考えると甲と丁はセットで移動してたのかなぁと思ったり。MIHO MUSEUM本には酒井抱一の箱書があって、そういや酒井抱一鳥獣戯画っぽい作品描いてたの見たことあるなぁと思ったら図録にも載ってました。だいぶ洒落のめしてますが。

www.tnm.jp

まだまだわからないことが多いのだなぁと思いつつ(図録にも50ページに渡って考察が展開されててこんだけ広く知られてる作品だからこそなのかそれなのにというべきか)最後のコーナーへ。

最後は鳥獣戯画が伝わる京都の高山寺に関連する展示。
高山寺奈良時代に創建されたかなり古いお寺らしく、明恵上人が時代に後鳥羽上皇より寺域を賜り華厳宗の道場として再興したそうです。

 

明恵上人、僧正なので当たり前っちゃ当たり前なんですが、信仰心も篤く夢の記録を残してたり故郷紀州の苅藻島(かるもじま)、鷹島で見つけた二つの石を大事に持っていたとか今の感覚で言うとちょっとイタイ感じなのですがやっぱり修行する人はそのくらいじゃないと悟りを開けないのだろうなぁと思いました。まさに物に心を宿していたんでしょうね。凡人にはできないです。

明恵上人坐像も実際の高山寺のお堂をイメージしたようなスペースに展示されてて素敵でした。穏やかな優しげなお顔なんですが修行のために耳を切ったというエピソードもあり「やっぱり修行する人は違う…」と思いました。坐像の耳も少し形がひしゃげてました。ゴッホのように切り落としてはいないので修行の一環ということなのでしょう。

 

最後に明恵上人が大事にしていたのという子犬像があってこいつがまぁかわいい!円山応挙が描く子犬をフィギュアにしたような可愛さでした。子犬の可愛さは永遠。運慶の息子の湛慶作とのことでしたがこんなかわいい像も作るんですね。筋骨隆々男士の像のイメージでしたが。

 

そんなこんなで鳥獣戯画一点突破の展示会、広いスペースを十分に生かした内容を堪能しました。こういう一つを掘り下げる展示会は忙しくなくてよいですね。ほんと見られて生きてるうちに見られてよかったぁー

 

続けての総合文化展はちょっと駆け足(だいたい時間配分を見誤る)で。

 

鳥獣戯画展に合わせて「博物館で動物めぐり」企画が3月から引き続き開催中。動物モチーフの作品が数多く展示されていました。

 

今回見られてよかったー!という作品は円山応挙の写生帖 (丁帖)です。写生帖は鳥獣戯画と同じく甲乙丙丁あるようですが丁は鳥の巻。もはや図鑑ですね。羽を広げた様子とかどうやってかいたんだろう?押さえつけて描いてたのか死んだ鳥を目の前にして描いてたのか。上から下から斜めからとにかく正確に見たままを忠実に描くを徹底していて、このベースがあるからもふもふの子犬も愛らしく描けるんだろうなぁ。基礎は大事。

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あっち向いたりこっち向いたり


狩野探幽の飛禽走獣図巻 飛禽巻もあり、こちらは図巻といいつつもゆったりと自然の風景の中にいる鳥を描いてて襖絵や掛軸といった作品のお手本になるような作品。力も抜けててとても自然体に描いてて、ほんとはこういう絵を描いてる方が好きだったりするのかなぁと思いました。狩野派の当主ともなると自分の描きたいものだけを描けるわけじゃないですからね。屏風コーナーに展示されてた「士農工商図屏風」のこれぞ狩野派!!みたいな作品も素晴らしいですが依頼された作品じゃないとまた違った趣がありますね。

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タイトルは飛ぶ禽走る獣頭巻ですが作品は優雅

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こちらはザ・狩野派!な屏風絵の一双

あと鳥獣戯画の丁巻の人物造形が仙厓さんみたいと思ってたら仙厓さんの絵が展示されてました!写真撮影NGだったので写真はありませんが、もうとにかく脱力します。なんてダウナーな絵なんだ!大好き。

 

珍しいところでは歌川広重の肉筆画もありました。しかも源氏物語の一場面を描いてて
意外と言っては何ですがこういう絵も描けるんだ(何様)と思いました。
ただ東海道五十三次に比べるとキレイだけどあんまり印象に残らないなぁなんて偉そうなことを思って見たり。(何様×2)
天童藩から依頼されて描いたというだけあって上品な作品になってますね。

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源氏物語図①

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源氏物語図②

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源氏物語図③

 

他にも刀剣コーナーで国宝の粟田口吉光(名物 厚藤四郎)を眺めたり久しぶりのトーハクを楽しんで来ました。毎回時間が足りないトーハク。

再び休館になるような情勢にならないことを願うばかりです。