おうちに帰ろう

心茲にありと

「ミネアポリス美術館 日本絵画の名品 」展 祈!再開

4/14から始まったサントリー美術館で開催中の「ネアポリス美術館 日本絵画の名品」展

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ずっと開催を心待ちにしていて、4/25に開かれる予定だった学芸員レクチャーを予約し楽しみにしていたのですが、25日から緊急事態宣言が発令されることが決定。1月の2回目の緊急事態宣言のときには美術館・博物館の営業は制限されなかったのですが今回はどうやら休業要請対象になるとの報道があり、雲行きが怪しくなってきたので慌てて(こんなのばっかり)先週金曜日(4/23)に行ってきました。その時点ではまだ休業は決まっていなかったのですが、翌24日には25日から休業すると発表があったのでギリギリだったなーと。

 

まぁこれは行けたんですけど大物の「鳥獣戯画展」は4月後半に行く予定だったのでもろ被りでアウト。はぁーあ。
美術館に限らず映画館、劇場のきなみCloseとなり1年前と同じ状況に。
くぅううううううううう
この1年何してたん???

 

 

気を取り直して展覧会の内容に入ります。

今回の展覧会は全作品写真撮影OKとなっています。サントリー美術館前回のときもそうでしたね。

 

時代別に水墨画狩野派、やまと絵、琳派、浮世絵、日本の文人画<南画>、画壇の革新者たち、幕末から近代へと室町~明治までの日本美術の大物が並んでます。
それでいて作品数は厳選されているので(入替ありで92点なので前期、後期それぞれ70点くらいの展示数です。
じっくり見てもクラクラしなくて済むくらいの数ですが満足度は十分という構成で
仕事帰りに見るのにちょうどいい規模感なのはありがたいですね。(後期無事開催されますように!!)

 

まず会場入るとすぐに目に入るのが雪村周継の「花鳥図屏風」がお出迎え。
雪村の水墨画は型にはまってない自由な感じがよいんですよね。
海北友松の「江天暮雪図」は小さめの作品だけどはねるように描く撥墨で描かれてて洒脱さがよかったです。
あと初めて見た山田道安という武人画家の「龍虎図屏風」は迫力がありました。言葉はアレですが田舎武将(失礼)に好まれそうな勇壮な作品でした。

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山田道安の「龍虎図屏風」の龍

狩野派からは狩野元信の弟と言われている狩野之信、江戸狩野の地位を確立した狩野探幽、京に残った京狩野から狩野山楽、山雪、そして狩野派の久隅守景の娘清原雪信と少ない点数ながらも代表的な作品が並んでてさすがという感じ。

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清原雪信の「飛天図」美しい



狩野山雪の「群仙図屏風」は楽しみにしていた作品。桃山展で見た「籬に草花図屏風」のそれまでの狩野派とはだいぶ違う幾何学的な構図と花の描き方に一目惚れしたのですが、こちらの作品は仙人の描き方に若干の悪意というか遊び心があって、これはどんな依頼で描かれたものなんだろう?と思いました。奇想の系譜展で見た「寒山拾得」で描いた面妖な顔までいきませんがちょっとそのヘンテコな表情が垣間見えるというか。どこかとぼけてるんですよねー山雪の作品て。江戸狩野とは全く別の道を歩んでるなぁという自由さが楽しいです。
清原雪信の作品が見られたのはよかったです。時代はだいぶ飛びますが上村松園美人画のルーツはこのあたりなのかもと思えるくらい、浮世絵に描かれる美人画とも違う優美さがありました。

  • 第3章 やまと絵ー景物画と物語絵ー

土佐派の土佐光吉作と伝わる源氏物語図「胡蝶」はやまと絵といえば源氏物語というくらいお馴染みの画題。
それはいいとして、絵巻ものによくある擬人化もので今回はきりぎりす。雀や鼠は見ましたがとうとう虫。しかも途中セミの赤ん坊(これはリアル)を抱いてたりと相当シュール。やっぱりモルカ―を作り出す土台はこういうとこにあるのかと思わずにいられない。面白いなー。アメリカ人はどんな気持ちで見てるんだろう。

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よく見えないかもですが真ん中あたりセミを抱えてます



作者不明ですが誰が袖図屏風と武蔵野図屏風は派手渋といった感じで好きだなーと思いました。

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武蔵野図屏風の一双。何か好きでした

琳派 "酒井抱一の「楸(キササゲ)に鷦鷯(ミソサザイ)図」は酒井抱一タッチというような洗練された花鳥図。

キササゲミソサザイも初めて聞く名詞でした。柳の枝のようにぶらんと垂れ下がってるのは豆のような実なんですね。初めて知った。ミソサザイは雀より小さく身体は小さいのに鳴き声が大きいとか。これまたへぇーー知らん事ばかりだ。

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なびいてるのは柳かと思ったら長い実だそうで
  • 第5章 浮世絵

葛飾北斎喜多川歌麿東洲斎写楽などよく知った名前が並んでます。その中で美人画で有名な喜多川歌麿の「画本虫撰(えほんむしえらび)」より「虵(へび)・とかげ」がよかったですね。鱗まで細かく描かれたヘビととかげを見ると美人画でも髪の毛一本にも表情を付けて描き分ける拘りに通じるものがあって当然ながら絵がめちゃくちゃうまいんだなぁと感心します。

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ヘビとトカゲの鱗の描きこみに美人画に通じるものがあります

初めて見た三畠上龍の「舞妓覗き見図」には笑っちゃいました。二幅の掛け軸で片方は風にあおられて着物の裾がめくれて膝下の白い脚が見えてる美しい舞妓の姿、もう片方をその姿を梅の木の後ろにある円窓から目をひん剥いて覗いてるっていういったいどういう画題なの?っていう作品。女性を覗く男衆という構図の作品は数あれど、こんな顔してるのは見たことない。京で活躍した絵師とのことで江戸とはまた好まれる作風が違うのかなぁと思ったりしました。こういうのもコレクションされてるのが面白いですね。

浮世絵コーナーの作品は前期後期で半分ほど入れ替わり。
人気の葛飾北斎の山下白雨や歌川広重の蒲原夜之雪は後期ですね。(無事開催されますように(しつこく言う)

 

  • 第6章 日本の文人画<南画>

南画の中でも細川林谷の「仙台観猟図」「戸隠連峰図」「渋温泉図」は中国の山水画から実際に日本国内を旅して目にした風景を描く真景図が広まった中で生まれた作品で、文人画ならではの趣味人らしい風情がとてもよかったです。職人絵師にはない自由さが魅力的ですね「山水図巻」はのんびりした旅日記風でかわいかった。本業は篆刻家らしいのですが「篆刻」とは?と思ったら印章を作成する人なんだとか。へぇええ。

池大雅の妻、池玉瀾の作品もよかったなぁ。あとは浦上春琴の「春秋山水図屏風」が見事だった!父の浦上玉堂の作品が好きなのですが長男の春琴の作品もいいですね。明るい山水画、という印象で春霞の野山という風情がとても好きで「山笑う」ってこういうことなのかなって思ったりします。「春秋」なので秋も描いてるんですが全体的なトーンが春っぽいんですよね。

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春っぽい浦上春琴の春秋山水図の一双
  • 第7章 画壇の革新者たち

章としては6章のあとにありますが展示順としては4章まで4Fに展示され、3Fの展示会場に入る前の踊り場的な場所に展示されてるのがこちらの章。伊藤若冲、曽我蕭白といった人気絵師の作品が並んでます。特に若冲の「鶏図押絵貼屏風」は水墨画で描かれた表情豊かな鶏の表情が楽しい作品。踊るような羽の動きなど若冲らしさ全開です。
「旭日老松図」は刷毛で勢いよく墨をはねたような松が新鮮。いろいろな技法を実験してたんですかね。と思ったら結構晩年の作らしく、革新者と呼ばれるにふさわしいかもしれません。「叭々鳥図」は岡田美術館にまっさかさまに落ちる姿を描いたの作品がインパクト大ですが、こちらの作品は橋を下からつつく構図で落ちるのとはまた違った味わい。鳥好きか。

曽我蕭白の「群鶴図屏風」は大迫力。波濤に立つ鶴が力強くて笑っちゃう。波の表現は北斎の神奈川沖浪裏に通じるような巻き上がり方でこのあたり北斎は参考にしたりしたのかなぁなんて思ったり。

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曽我蕭白の波と鶴

横山崋山の「蘭亭曲水図屏風」も素晴らしかった。前に東京ステーションギャラリーで見たのですがそれ以外でなかなか目にする機会がなかったので久しぶりに大作が見られて嬉しかったです。

 

  • 第8章 幕末から近代へ

いよいよ最終章。ここはバラエティ豊かでした。河鍋暁斎の「手長足長図」というやたら縦長のふざけてんのかっていう作品やら渡辺省亭の紫式部図は同じ題材の別作品「石山寺」を先日渡辺省亭展で見てきたばかりの美人画などさまざま。

狩野芳崖の「巨鷲図」は劇画調というか、いやこちらが先で劇画がその流れを受け継いでるんですけども、バカボンド風(だから逆)だなぁと思ったり(読んだことはない)。

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劇画タッチの狩野芳崖

会津若松出身の佐竹永海は当地の狩野派の町絵師に手ほどきをうけたとかで展示されてる「風神雷神図」は風神が鷲にさらわれてて雷神は蟹に足を掴まれて海に引きずり込まれそうになってるふざけた作品。狩野探幽もこのような作品を描いてたらしく全国津々浦々狩野派は行きわたってるなぁと思いました。

 

と、まぁ書ききれないくらい見どころばかりな展覧会でした。ふー。

写真もたくさん撮ったのですがたくさんあげるのも無粋なのでかなり間引きました。実物には到底叶いませんし。

 

こちらの展示会のサブタイトルが「あなたの推し絵師きっといる!」なのですが今回の展示作の中にいる私の推し絵師は

狩野山雪
俵屋宗達
酒井抱一
喜多川歌麿

かなあぁー
他にも好きな絵師はたくさんいますが「推し」に限定するとこの4人ですかね。「推し」とは何ぞやという話はまたどこかで(するのか?)。

(個人的に「推し」という言葉は色々思うところあって基本的には使わないのですがただとても便利な言葉なので便宜上使うことは時々あります。)

 

この素晴らしい展覧会がこのまま中止になってしまったらもったいなさすぎる。せっかく海を渡って里帰りした作品たち、ぜひ再開して多くの人が見てほしいなぁと思います。

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美術館のあるミッドタウンの散歩道に掲げられた鯉のぼり。今も元気に泳いでるんだろうなぁ