おうちに帰ろう

心茲にありと

燕子花図屛風と曜変天目

新緑が眩しい季節になるとカキツバタが見たくなりますねー

ということで毎年恒例の根津美術館の「燕子花図屛風」と庭園のカキツバタを4月21日に見に行ってきました。

根津美術館の入館は日時指定制。今日は10:00~11:00の回を予約。早い時間の方が予約が多いらしいですが、それなりに人はいましたが混雑には程遠くゆったりと鑑賞できました。

www.nezu-muse.or.jp

 

今回のテーマは「色彩の誘惑」ということで「燕子花図屏風」に使われている

青と緑と金(黄)の三色が絵画や焼き物でどのような使われ方をしているかといった観点で作品が展示されています。

 

  • 聖なる青・緑・金 

紺紙金泥経は元々藍は防虫の目的で使われていたそうですが、そのうち瑠璃を想起させる色として聖なるものと扱われるようになったそう。通常の和紙に比べて高価な分、保存状態がいいように思います。

この中で印象に残ったのは兜率天曼荼羅南北朝時代)で弥勒菩薩が住む宮殿のような場所を描いたもので保存状態もよく色彩鮮やか。思わず功徳を積みたくなるような作品でした。特に庭園の新緑にも負けないほどの緑青が艶やかで14世紀の仏教画でこんなに緑をたくさん使った絵があるとは知りませんでした。素晴らしかったです。

intojapanwaraku.com

 

他にも明時代に描かれた金碧山水(青緑山水)と呼ばれる山水画は、中国から伝わった絵画というと水墨画の印象だったのですが、山が一面緑に塗られた作品は新鮮でした。江戸時代に入って狩野派狩野山楽が描いた酒呑童子絵巻狩野派にやまと絵の要素を取り入れた~とありますが、明時代から伝わった山水画の影響もあるのかなぁと思ったり。狩野山楽は京狩野なので江戸狩野に比べると作風が自由なのでいろいろな手法を取り入れてたのかな。

 

  • 金屏風に息づく色の伝統

室町時代になると金屏風の技術が発達し、その後江戸時代に入っていよいよ登場するのが燕子花図屏風です。
もう何度目の対面でしょう。覚えてないですが見るたびに見とれますね。潔いまでに金・青・緑しか使っておらず、しかも使い方がこれでもか!!というくらいに厚く塗られててそれでいて大変上品。原料となる藍銅鉱や孔雀石、自然金が展示されてましたが採掘量も多くなく取り出せる顔料も限度があるため今でも大変高価な材料とのこと。それを依頼主が「どんだけつこてもええでー(適当)」と言われたのかわかりませんが、いいとこのぼんはそうなるとけちけちしない。何の躊躇もなく塗り上げた作品は唯一無二のもの。リズミカルな構図と併せて洒落のめしたお金持ちには大変ウケたのでしょうねぇ。お大尽さま。

  • やきものにおける新しい色彩感

こちらのコーナーは陶磁器に描かれた色彩について。現在のベトナム近辺から伝わってきた陶磁器が由来で、実際に白地に藍で模様を描いた肥前焼のお皿と比べるとかなり南方色が強いです。地も全部緑や青で塗られてる陶磁器って日本ではあまり見ないなぁと思いました。

というところで1階のメイン展示は終了。

2階にあがると同時開催のテーマ展示では昭和12年5月に開催された撫子図屏風の茶会を再現した展示がありました。当時配られたメニューがあったり、懐石料理を運んだお重があったりと、燕子花図屏風を飾った和室で茶を立てるって大名遊びの極み。昔の金持ちはすごいねぇ。

他にも 上代錦繍綾羅(きんしゅうりょうら)という6~7世紀ころに日本に伝わった布織物の言うたら端切れみたいなもの。当時の技術や仏教行事を知る貴重なものらしいのですが、ほんとに切れ切れでめちゃくちゃ保管が大変そう。だけど1000年以上も伝わってきてることがすごいなぁと思いました。お大尽は色んなものを集めなさるのね。

 

と展示を見終わったので庭園に。

咲いてましたよーカキツバタ

f:id:unatamasan:20210422231919j:plain

一面ではないですが半面くらい咲いてました

今年は暖かくなるのが早く桜を始めとする花の開花が前倒しになってる感がありますが、こちらのカキツバタもいつもより咲き始めたの早いような気がします。と思って写真フォルダを探したら2018年は4月28日、2017年は5月5日、2014年は4月25日に訪問していました。それぞれの咲き具合はこんな感じ。 

f:id:unatamasan:20210422232123j:plain

2014年4月25日 まだ咲き始めくらい

f:id:unatamasan:20210422232224j:plain

2017年5月5日 満開を少し過ぎたくらい?

f:id:unatamasan:20210422232345j:plain

2018年4月28日 ほぼ満開くらいかな

この間スマホを買い替えてるので写真のクオリティがかなり上がりましたね。

 

気持ちよくなったところでさらなる国宝を見に行くぞ!!と次の目的地、静嘉堂文庫美術館へ向かいました。

www.seikado.or.jp

来年2022年に現在の世田谷から丸の内の明治生命館に展示ギャラリーが移転されるため世田谷での最後の展示会となる本展。所蔵する国宝7点を含む名品を「旅立ち」をテーマに展示しています。

国宝7点が一堂に展示されるという滅多にない機会、お目当ては初めての曜変天目!!これまで油滴天目などは見たことあったのですが世界に3点しかない、しかも3点とも日本にあるという曜変天目のうちの一つ!とあれば行かないわけにはいきません。鼻息荒く乗り込みました(大げさ)

  • 旅立ちー出会いと別れの物語

様々な故事成語の出会いと別れにまつわる作品が展示されたコーナー。
国宝その1「 因陀羅筆・楚石梵琦題」はこちらにさらっと展示されてます。ほんとにさらっと。

www.seikado.or.jp

 

印象に残ったのは河鍋暁斎の地獄極楽めぐり図ですかね。
この画帖は、暁斎の大の贔屓だったという日本橋大伝馬町の大店、小間物問屋の勝田五兵衛が、14歳で夭折した娘・田鶴(たつ)を一周忌で供養したいと、暁斎に制作を依頼したもの。娘が極楽往生するまでの旅の様子を、描いた作品でとにかく賑やか。まだ年若い少女が寂しくないようにという心遣いが感じられて楽しくも切ない作品だなぁと思いました。

 

その他の国宝(そればっかり言うなやらしいな)は

趙孟頫筆「与中峰明本尺牘」

www.seikado.or.jp

伝 馬遠筆 風雨山水図

www.seikado.or.jp

 

ここでは邯鄲の夢に登場する枕や邯鄲の夢硯箱など桃源郷を夢見た逸話などにまつわる展示コーナー。景徳鎮の徳利とかお金持ちが所蔵するものってやっぱり茶器とか陶磁器に行きつくのね。

ほぉ、と思ったのが鈴木鵞湖筆 武陵桃源図で、ちょうど直前の根津美術館で見てきた青緑山水画だったのです。鈴木鵞湖といえば2月にいった足立区郷土博物館で「和漢流書図」という二幅の絵で右幅に宋・元時代の中国の画家、左幅に室町時代以降の日本の画家を作風を真似て10コマ描いてる作品で初めて知り、面白い絵師だなぁと思っていた作者。こちらはオリジナル作品ですが堂々たる山水画で技量のある人だったのだなぁと改めて感心しました。

 

  • 名品の旅路ー伝来の物語

そしていよいよお目当ての曜変天目です!どこどこ…と思ったらこちらもほんとーにさりげなく展示されてました。
思っていたより小ぶりでした。イメージとしてはどんぶりよりちょっと小さめくらいのものを想像してたのですがほんとに茶碗でした。(そりゃそうだ)
表面は深い深い青味がかかった黒で覗き込むと瑠璃色の地に舞う無数の玉模様。ふわぁああこれかぁあああ!まさに宇宙だぁ~ってなりました。これで茶は飲めないよねやっぱり。いいもの見させて頂きました。

www.seikado.or.jp

 

他にも俵屋宗達源氏物語関屋澪標図屏風」

www.seikado.or.jp

尾形光琳が影響を受けた俵屋宗達の屏風絵が見られて感動。源氏物語の関屋と澪標の2巻の場面を描いた作品。こちらも国宝です。
誰の依頼で描かれたものかわかりませんが、今できる限りの技術を突っ込んだみたいな画風と構図と色彩が素晴らしいなぁ。

 

手搔包永 太刀 銘 包永

www.seikado.or.jp

いつか刀剣乱舞ONLINEに実装される日は来るのでしょうか…

 

倭漢朗詠抄 太田切

www.seikado.or.jp

と渋めの国宝が並びました。正直、ミーハーな私の知識ではどう見たらよいやらわからない書画については「ふむ…なるほど…」と思うばかりでしたがこういうものはとにかく数見ていくうちにいつか「はっ!!」と思える時が来るのではと(いやちゃんと勉強せえ)と淡い期待を抱きながらしげしげと眺めておりました。

 

世田谷は遠いですが、来てみれば緑が多く閑静で都内とは思えないほどのどかでよい場所なのでちょっとだけ残念ですが、とはいえやはり丸の内に来てくれた方が気軽に行けるのでありがたいです。

 

しかし根津さんといい岩崎さんといい、昔のお金持ちはすごいっすな…

 

そんなことを思いながら帰ってきました。充実の一日でした。

 

f:id:unatamasan:20210422234907j:plain

新緑に映える静嘉堂文庫美術館のポスター