おうちに帰ろう

心茲にありと

江戸のエナジー 風俗画と浮世絵

静嘉堂文庫美術館の「江戸のエナジー 風俗画と浮世絵」展(2/7終了)に行ってきました。静嘉堂文庫は4年ぶりの来訪です。

 

前回行ったのは「超・日本刀入門」展のときで

 当時はまだ刀剣乱舞のこともよく知らず最近刀が人気なんだなぁーってくらいしかわかってなくてお目当ては平治物語絵巻でした。その時に知らないなりにしげしげと眺めてわからないなりに見てたものはどこかに残ってると信じてるので(今がわかってるとは言ってない)見ておいてよかったなぁと思ったりしています。

 

今回は浮世絵の中でも肉筆画が多く展示されているということで二子玉川駅からバスで10分という東京の東側に住んでる人間にとっては最果てとも思えるような場所まで行ってきました。(向こうもこちらに来るときは同じ感覚なんでしょうが)

 

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バス停降りてすぐに出ている案内板です

 

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この表示が出ている雑木林の中の緩い上り坂を5~6分歩きます


展示スペースはこじんまりとしているのですが内容は充実。まず入口入ってすぐに円山応挙の「江口君図」と英一蝶の「朝暾曳馬図」(ちょうとんえいばず)が並んで展示されてます。

「朝暾曳馬図」はのんびりとした風情がちょっとアジア的で遊び人らしい英一蝶抜け感のある作品でした。隣の円山応挙の「江口君図」はとにかく美しい!!白い象に腰かけた江口君に見立てた遊女のスッとした表情といい着物の柄といい一切隙がありません。象の目元も涼やかでこんな美人な象はなかなかお目にかかれません。ほれぼれ。

 

中に入ると菱川師宣の十二ヶ月風俗図巻があり展示されてるのは3月のお雛様のあたり。小さい人形の着物の柄まで丁寧に描かれてて女性たちの姿勢や着物の柄も見返り美人図を思わせる構図だったりと随所にらしさが見えました。洗濯して干してある着物も全部違う柄で描かれてたり当時のファッション誌のような役割だったのかなぁと思います。

四条河原図屏風、歌舞伎図屏風では京都、上野隅田川図屏風では江戸の町の様子が描かれてますが江戸前期だと京都の方がだいぶ賑やかで江戸はまだまだ開発途中で郊外にはまだ野原が広がってる様子が描かれてます。江戸の町の賑やかさは屏風絵よりも印刷が発達したあとの浮世絵の方がいきいきと細かいところまで描かれてるものが多い気がします。

 

錦絵以前の墨摺絵・紅摺絵のころの奥村政信の作品やを経て錦絵を生み出した鈴木春信や北尾重政、磯田湖龍斎、鳥居清長などから始まり喜多川歌麿葛飾北斎、歌川国貞、国芳、広重などが並ぶ「錦絵の誕生と展開」のスペースに平行して「東西美人競べ」に肉筆の美人画が並びます。宮川長春美人画は着物の赤と青と黒の使い方が特徴的で顔は色っぽさの中に可愛さがある美人画で勝川春章は背景の梅の描き方や着物や硯の柄まで細かく描き込んでてさすがという感じ。何でも描ける北斎美人画もいけるんだけど色っぽさでは他の絵師の方が上かなぁという気がします。歌川豊広の「見立蝦蟇鉄拐図(みたてがまてっかいず」は遊女を鉄拐仙人と蝦蟇仙人に見立てて遊女が煙管から吐き出した煙が鉄拐仙人の姿になってるいるというパロディー画なんだけどゆったりした遊女の着物の柄が孔雀の羽模様で美しく幅が広いなぁと思います。

どの美人画も素敵だけど今回一番わぁああ!と思ったのは鈴木其一の「雪月花美人図」でこれは他の美人画とは一線を画しているといってもいいような其一ワールドな作品でした。それぞれ「桜」「萩と月」「雪と柳」を背景がそれだけで作品として成立している上に前にたつ美女の着物の意匠が見事でめちゃくちゃ贅沢な作品でした。いやーよかった。

こちらと応挙の「江口君図」見れただけでも来た甲斐がありました。

 

静嘉堂文庫美術館は今年の4月から6月までの「旅立ちの時」展が

この地での最後となり2022年には丸の内の明治生命館1Fギャラリーに移転するそう。格段に行きやすくなって有難いです。岩崎家のお宝なんだから三菱のお膝元の丸の内でたくさんの人に見てもらわないと勿体ないですもんね。

最後の展示会では曜変天目含め国宝もずらりと並ぶようなので今から楽しみです。