昭和元禄落語心中 第二話「約束」感想

第二話「助六」は八雲と助六の少年時代の出会いから菊比古と初太郎という前座名だった頃のお話。
第一話で原作コミックスの与太郎放浪篇(5話分)を70分拡大版とはいえまるっと入れたのに対し、第二話は八雲と助六篇の1話分じっくり見せてます。

八雲にとって落語とは助六そのものということを色っぽく切なく濃厚に描いてました。ドラマのポスターが八雲が中心でその後ろで八雲の肩に手をかけて扇子片手に笑顔を見せる助六という構図になっている関係性がよくわかる第2話でした。

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親に捨てられるような形で落語家に入門した八雲は居場所がないから来ただけというのが師匠の家。落語家になりたくて師匠に弟子入りした助六とは出発点が違います。だけどどちらも他に行くところがないのは同じ。性格も生い立ちも違うけど居場所が同じという共通点で繋がる二人。最初の夜に暗い寝床で八雲は助六に「アタシを一人にしない」と指切りさせます。これは原作にはありません。(初っ端から重い八雲
成長して前座となり菊比古と初太郎という名前を貰い落語家としての実力差が広がってくるとだんだん嫉妬心のようなものも芽生えてきます。初太郎が菊比古に艶笑噺を勧め女も抱いたことない自分には到底できないというと下座見習いの千代ちゃんと付き合いだして何とか初太郎に追いつこうとします。このときの菊比古の顔、全然千代ちゃんのこと好きじゃなさそうで笑えます。キレイだけど気持ちが全く入ってない。何だよそのチューは。その後初太郎から何があったか言えって攻められてるときとかお千代ちゃんのおかげなのか「品川心中」が急に上手くなって初太郎に褒められたときの方がずっと嬉しそうでいい顔しているというね。

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どこ見てるんだか。やる気なさそー


初太郎からの指南でようやく落語が楽しくなってきた矢先、戦争が激化し始め廓噺などは不謹慎ということで高座にかけられなくなります。このあたりも寄席に臨監席があって警官が検閲している場面を入れたり(そこで警官に怒鳴られる落語家がドラマの落語監修の柳家喬太郎師匠)実際に浅草の本法寺にある「はなし塚」で供養している場面を入れたり戦争中の落語をとりまく環境を細かく描いてます。このあたりはNHKの矜持なのかなぁと思いました。

当時のエピソードが書かれたブログは↓こちら

https://www.jacar.go.jp/glossary/tochikiko-henten/qa/qa07.html


またしても居場所を失いやる気をなくしてしまう菊比古。前座働きにも身が入らない状態でいると初太郎は菊比古に何があっても落語をやめちゃだめだ、戦争が終わればみんな寄席に戻ってくると力強くいいその言葉に励まされます。とにかく初太郎の方しか向いてない菊比古。彼なしでは生きていけない感がありあり。
しかしその後も戦争はますます激しくなり他の落語家たちも兵隊にとられてしまいとうとう菊比古と初太郎だけになってしまうと師匠は満州に軍事慰問に初太郎と二人で行くことを決めてしまいます。一緒に連れて行ってくれと言う菊比古にお前は足が悪いから無理だ、おかみさんと田舎に疎開するようにと言われまたしても取り残されることに。
離れ離れになる前の夜、初太郎は自分に落語を教えてくれた老人からもらった「助六」という名前の入った扇子を菊比古に預け「絶対生きて帰ってくる」と言うと菊比古は指切りしてアタシを一人にしないと約束させます。本日2度目の指切りです。菊比古、初太郎にすがりすぎ。

疎開先でのやる気のない竹やり訓練や寝そべって「助六」の扇子をぼんやりと眺めている姿は初太郎が恋しいのか落語がやりたいのか菊比古の中でももやもやとしている感じ。そして突然の終戦の知らせを聞くと走って橋の上に行き大きな声で「落語ができるんだ!初太郎、生きて帰ってこい!」と一人橋の上で叫び「品川心中」を話し始めます。初めて菊比古が感情を爆発させるシーンでクララが立った!的な場面でした。ようやく気付いたか、みたいな。やっぱり菊比古にとっては落語=初太郎(助六)ということなんですね。

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橋の上で愛を叫ぶの図


東京に戻り焼け残った八雲邸で松田さんとおかみさんと3人で暮らし、あちこちのお座敷で忙しく呼ばれて落語をする日々となっても心の支えは帰ってくる初太郎を出迎えること。そしてとうとう初太郎が帰ってきて出迎えたときの菊比古の弾けるような笑顔。

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とにかく嬉しそう

寄席が再開されて客席に集まる人たちの笑顔を見ながら初太郎が見ている先は明るい、この人が見ている方を見ていれば間違いないと確信したときの笑顔。二人で風呂に入りながらじゃれあうときの楽しそうな笑顔。もしかしたらドラマ10話を通して一番笑顔が多い回かもしれません。第一話のずっと不機嫌そうなしかめ面の八雲とは大違い。こんな顔をしているときもあったんですね、菊比古さん。

戦争が終わって2つ目にあがり助六とともに落語に専念しようとした矢先、菊比古の前にみよ吉さんが色っぽく登場したところで2話目は終了。
3話以降の2つ目時代は波乱となるようです。原作ではみよ吉さんと菊比古の出会いはもう少し後。師匠が生真面目さ故に壁にぶつかっている菊比古を見かねて遊び相手として紹介するのが満州時代に自分の愛人でもあったみよ吉さんで菊比古は最初あまり興味なさそうなんですよね。ドラマでは運命の女っぷりを最初からぷんぷん匂わせて登場です。さんざんいちゃいちゃしている菊比古初太郎を見せといて間を引き裂く運命の女登場とは。まぁドラマチック。

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そんな顔しちゃいます?

助六(初太郎)がいたからこそ、明るい太陽のような助六に心底惚れてだからこそ落語にも惚れたんだなということを余すところなく見せた回だったと思います。

今回全編通して「品川心中」を演じているのも菊比古(八雲)が落語とともに心中すると言っている心情の元になっている助六との絆を象徴しているようでした。

「アタシを一人にしないこと」という指切りの場面を子ども時代にも入れたり助六の扇子を預ける場面は原作にはないので、ドラマの方が八雲(菊比古)の中で助六(初太郎)の存在をより大きなものにしています。

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完全に恋人待ってる顔だし

今回から本格的に登場した山崎育三郎さんはこれ以上ないハマり役でした。髭も日焼けした肌もワイルドな髪型もぴったり。着物の着方も菊比古と違って袖はまくるは胸ははだけるわ帯の位置は高いわで型破りなんですが似合ってる。普段王子様やってる人には見えません。よく通る声も落語家にぴったり。そして何より華がある。あれは長年舞台で培ってきたものなのでしょうね。

 

第一話の50代の八雲から一転して10代の菊比古を演じる岡田将生くんはこれでもかといわんばかりに美しさを見せつけます。八雲のときのような風格をまとった美しさとは別の生まれたての小鹿のような美しさでした。

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初太郎に女抱いたことないから廓噺なんてできねえよなぁと言われたときのはっとした顔。そうか、女を知れば追いつけるのかも…と気づくところ。結構好きな顔です

端正な美しさは一貫しており菊比古が八雲になっても持ち続けている土台は変わらず10代から老齢期までを演じる理由は共通性を変えたくなかったからなんだろうなと思います。

映像的に見惚れたのは暗闇の表現です。菊比古と初太郎が寝ながら話す場面などほとんど二人の顔が見えません。初太郎は色が黒いので尚更、白い歯が見えると笑ってるんだなということがわかるくらい。当時の東京は灯火管制もされてたでしょうし夜はほんとに真っ暗だったんだと思います。それがリアルに表現されててここまで暗いのはなかなか見ないなと思いました。

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指切りシーン。これだけ暗いのもなかなかないです


それ以外にも昼間の部屋の中に差し込む光とか玄関や土間の暗さとか陰影礼賛じゃないですけど部屋の中にできる暗闇と光のコントラストが情緒的で美しかったです。色味も子ども時代は全体的にセピアっぽくだんだん色が足されている感じも時代が変化があってよかったです。

今回落語シーンはそれほど多くなかったのですが、菊比古の初高座は表情も初々しく硬い硬い「寿限無」。初太郎は最初から客いじりまでしてみせたりと二人の違いを見せています。そりゃ嫉妬もするよね菊比古っていうくらい初太郎ののびのびした感じがよかったです。
高座で「品川心中」を演じるシーンがなかったのが少し物足りなかったですね。もう少し聴かせてってところでいつも場面が変わってしまう。そのうちじっくり見せてほしいなぁ。しなを作ったり流し目したりと様々な表情のお染さんが色っぽくてうっとりします。声色もいい。

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お染の長し目

前回は「死神」、今回は「心中」、さてその先は…といったところでしょうか。

第三話のタイトルは「迷路」。どんな噺が出てくるのか楽しみです。

※追加メモ

今回出演された師匠方

柳家喬之助師匠、柳家喬太郎師匠、柳家はん治師匠、橘家圓太郎師匠

落語指導:柳亭左龍師匠