映画「伊藤くんAtoE」至高の最低男を堪能

1/12から岡田将生くん・木村文乃さんダブル主演の映画「伊藤くんAtoE」が公開されました。公開前(公開後も少し)の怒涛の番宣ラッシュはこちら

 

映画化の一報があってから柚木麻子先生原作の同名小説を読み

先行して放送された伊藤くんをとりまくA~Eの女性側を中心とした

深夜ドラマも観た上で映画に臨みました。

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原作はA~Eまで別々の話になっていますが、映像化にあたって

Eのスランプに陥っている崖っぷち脚本家矢崎莉桜が

A(島原智美:佐々木希さん)5年間付き合ってる伊藤くんに振り向いてもらえない女

B(野瀬修子:志田未来さん)男に興味ないのに伊藤くんにストーキングされる女

C(相田聡子:池田エライザさん)親友(D)への嫉妬心から伊藤くんと寝る女

D(神保実希:夏帆さん)伊藤くんに処女をささげたいと思っている女

の4人の女性から恋愛相談と称してドラマの題材にするために話を聞く形で進みます。

 

ドラマ版では莉桜がイメージした男性が伊藤くん役になり

Aのときはプロデューサー役の田中圭さん、

Bのときには売れっ子脚本家クズケン役の中村倫也さん、

Cのときは自分を有名にしたドラマ「東京ドールハウス」の主演俳優役の

山田裕貴くんが演じています。

実際ドラマで演じた皆さんの伊藤くんもそれぞれ良さが出ていて

これ結構プレッシャーなのでは…と思っていたんですが

最後、Dの回で岡田くんが伊藤くんとして登場したときは

真打登場!という迫力でこれぞまさに伊藤だわと納得でした。

不安に思った自分はまだまだ岡田くんを信じ切れていなかった、

すいませんと思いました。

 

映画は莉桜が主催するドラマ研究会で浮世離れした発言をして

クラスのみんなが失笑し莉桜が小馬鹿にしたような返しをしても

「やだなぁ、矢崎女史」と全く意に介さず

にやにやしているという伊藤という人物の気持ち悪さ全開で始まります。

恐らくこのシーンが一番大げさに伊藤くんの気持ち悪さを強調していたと思います。

掴みはOKって感じですね。

eiga.com

 

その後自転車で東京の町を疾走する伊藤くんをカメラが追い

タイトルバックが出るところは廣木監督が得意とする長回し

映像の良さが活かされていたなと思います。

岡田くんの長身と自転車をこぐ姿と緩い坂をさわやかに

駆け上がる絵面の美しさは先程の気持ち悪さはどこへやら。

伊藤くんなんだか素敵とまんまと騙されてしまいます。


莉桜に相談をもちかけるA~Dの女性たちも

それぞれに問題がありリレー方式で伊藤くんのダメなところが

彼女たちに当てはめながら繋いでいきます。

 

Aの島原智美は容姿端麗、仕事もちゃんとしているのに

なぜか伊藤くんのような28にもなってバイト暮らしの男性と5年も付き合ってます。

彼女は伊藤くんの見た目はいいのに自分に自信が持てず責任を持ちたくない部分に

そのまま当てはまる。

Bの野瀬修子は学芸員になるために今はバイトで過ごしていて

今の自分は仮の姿で本当の自分とは違うと思っているところは脚本家になりたいと

いいながら何も書いていない伊藤くんと同じ。

Cの相田聡子は親友が自分が得られないものを手にしようとしていることに嫉妬して

伊藤くんと寝てしまうところは自分のことを好きだと言っていた実希が

クズケンと一緒にいると聞いてホテルまで来てしまう伊藤くんの身勝手さに重なる。

Dの神保実希は自分のことを想ってくれているクズケンに気づかず

目の前で伊藤くんにクズケンのことは何とも思ってないと

言えてしまう鈍感なところが智美を傷つける伊藤くんそのまま。

 

と伊藤くんの悪いところをぐるぐると指摘していくと全て自分に返ってきて

女性たちは伊藤くんと関わることで自分の未熟さや欠点に気が付き

伊藤くんから離れて前に踏み出します。

 

最後にEの女、莉桜はすべての女性に共通していた伊藤くんが同一人物で

自分の教室の教え子であることを知り、

莉桜が書く予定だった脚本の企画よりも伊藤くんの企画が選ばれたことで

無様な負け犬になった莉桜に追い打ちをかけるように伊藤くんが現れます。

(結果はどちらも選ばれなかったのですが)

伊藤くんは脚本を書くつもりなど最初からなかった、周りのみんながあせるのが

見たいからプロットを出しただけ、と莉桜が想像もしないようなことを言います。

傷つきたくないから戦わない、リングに決して上がらないという伊藤くんの言い分を

黙って聞いている莉桜ですが、最後に私は何度傷ついてもこれからも書き続けると

自らに言い聞かせるように伊藤に宣言します。

伊藤くんは黙って莉桜を見下ろし去っていきます。

 

伊藤くんという嵐に巻き込まれた女性たちは伊藤くんに反射した

自分の無様さに気づき変わっていきましたが

嵐の目にいる伊藤くんは無風状態。女性たちが変わっていったことも気づかず

1ミリも変わっていない姿で自転車を押しながら画面を通過していきました。

 

伊藤くんの突っ込みどころはたくさんあり

まず柄のシャツに青いリュック、厚めの前髪という年齢不詳な恰好。

猫柄のシャツ着た男に「僕が君たちを狂わせてしまったんだ」とか言われたくないし。

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いつも自転車に乗ってるけど一体どこから来ているのか。

実家が千葉で一人暮らしはしてないようなので千葉から自転車で来てるのか?

莉桜のオフィスで飾られているトロフィーや楯をバックに自撮りするとか意味不明。

裸の上半身は胸板の薄さの割にお腹周りにはうっすらと

脂肪がついている身体は28歳という年相応で童貞だった事実とのギャップが

気味悪さを醸し出す。(これ役作りで身体作ってたのかな?考えすぎか)

一番イラっとしたのが実希から紹介されたテレビ局のADのバイトしてるとき

先輩ADから注意されたときに「了解でぇーっす」って返事するところ。

お前が仕事ミスしたのになんだその言い方は!

挙句、先輩ADと方向性の違いでぶつかっちゃって

明日はバイト行くのやめようと思ってとか実季に愚痴ったり

ほんとなめすぎだから!

 

そしてラスト、電話の相手に「もしもしミサキちゃん?」と話しかけてたけど

莉桜と伊藤の代わりに通ったドラマの企画に出るアイドルが「ミサキ」って

名前だったんですよね。まさかそことも繋がっているのか?とか。

結局伊藤くんの本当の姿はわからずじまい。きっと今日もどこかで

中身のないことを言いながら漂って生きてるだろうなと想像できる。

 

 

ドラマでは別々の俳優さんが演じているし莉桜の頭の中では

別人なので極端に違った性格で演じても

おかしくはないのですが、「とらえどころのない」人物として

統一性を持たせておりデフォルメせずに各女性たちと対面していて

気持ち悪さとリアリティのバランスが絶妙だなと思いました。

 

画面がきれいで全体のトーンが静かなので原作の持つ生々しさや

毒気はあまりないので原作ファンにはもしかしたら物足りないかもしれません。

そのあたりはドラマ版の方が女性の本心をもう少し細かく描いているので

そちらでどうぞということなのかもしれないですね。

この試みが成功しているかどうかはわかりませんが。 

 

原作通りなら伊藤くんが主役になるような話ではないと思います。

5人の女性のダメなところを全部持ってる男性なんてあり得ないし

そんなクズが主役になるってどうなんでしょう?

しかも主役なんだから少しは成長して終わるかと思いきや

全く成長しないまま終わるという普通の映画ではあまりない結末。

そんな役をイキイキと演じる岡田将生、うっかりしたら魅力的に見えちゃう

恐ろしさ。ラストシーンが彼のいやらしい笑顔で終わるのに

andropの「Joker」の楽曲の良さも相まってなぜか爽快な気分にすら

なってしまう不思議。とにかく彼の表情一つ一つから目が離せませんでした。

伊藤くんを主役たらしめたのは岡田将生という俳優の力だと思います。 

 

対する女優陣も素晴らしく、伊藤くんから解放されたときの表情が

皆さん美しかったです。特に佐々木希さんが涙した顔にライト(夕陽かな?)

が当たったところはとてもきれいでした。

 

岡田くんが主演した映画をスクリーンで見るのは「ST」以来で

そのときにも思ったのですがやっぱり岡田くんは映画館で見ると映えるなぁ

ということでした。

(「ストレイヤーズクロニクル」は劇場では見ていません)

 

若い時から映画で主演を務めていたためか画面に出た時の収まりがよく

映画館のスピーカーで聴く声が生の声やテレビの声とも違って

ものすごく耳触りがいいというか通りがよいというか。

初めて「ST」を見た時も真っ先に印象に残ったのが声だったんですが

改めて声の良さを実感しました。

 

舞台向きだし舞台の姿もこれからどんどん見たいですが

映画で育ってきた人だというのを再認識しました。

 

銀魂」や「ジョジョの奇妙な冒険」のように脇で光る役も素晴らしいですが

主役ってやっぱりいいもんだなぁというのを(当然ですが)しみじみと

噛みしめています。