おうちに帰ろう

心茲にありと

名刺ゲーム

あけましておめでとうございます。

新年あけてすでに成人の日になりましたけど

今更ですが昨年12月に放送されたWOWOWドラマ「名刺ゲーム」について書いておきたいと思います。

f:id:unatamasan:20180108221338j:plain

鈴木おさむさん原作の同名小説のドラマ化。

遅ればせながら小説も昨日ちゃんと読み終えました。

人気クイズ番組のプロデューサー神田達也役を堤真一さん

神田を名刺ゲームに案内する謎の男Xを岡田将生くんが演じてます。

原作では神田の息子和也が人質に取られますがドラマでは美奈という娘に変更されています。

全部で4話。1~3話までは神田に何かしらの恨みを持つ人物A~Cまでの人物に

名刺を返しながらそれぞれの人物と神田の因縁と神田の人となりを描いています。

 

原作ではバラエティ番組の製作の裏側を暴露しているように見せながら

子どもから見た親に対する感情だったり

いいことばかりじゃない現実と理想の折り合いのつけ方や人生の向き合い方など

綺麗ごとだけでは済まない部分を描くことが物語の根幹にあるのに対し

ドラマ版では今のテレビ業界をとりまく状況に向けての反発心みたいなものが

全面に出ていて人生模様はエッセンス的に使われているように見えました。

 

原作ではエピソード内に登場する気番組を多く手掛けた花形ディレクターで

神田のプレッシャーからやらせを行った部下を庇って番組を下ろされる片山(田口トモロヲさん)という人物を

ドラマでは名刺ゲームの仕掛け人として最後に登場させて

原作とは違った結末にしたのは

今のテレビ業界に閉塞感を感じている製作者の思いが表れているようでした。

 

岡田くん演じる謎の男Xは原作中の二人の人物の要素を足していて

最後に明かされる名前は「薄井忍」。原作では息子和也の高校の先生ですが

ドラマでは娘美奈の中学時代の教師となっています。

 

3話までは神田と娘を監禁している暗い室内でひたすら神田を煽り

イラつかせ、名刺ゲームの参加者にも冷酷な態度を取る

何を考えているかもわからないまさに謎の男でした。

 

4話で名前が明かされ誠実そうな姿で教室で授業をしていたり

大学時代の同窓会で酔っ払った同級生にからまれたり

コネでテレビ局に就職した派手な同級生からは

「存在感まで薄いくん」と言われ卑屈な顔をしたりという

薄井の本当の顔が登場します。

 

原作の薄井は神田とは顔を合わせていませんが、ドラマでは中学教師を辞めて

クイズ作家となり神田の番組の制作会議に出席しそこで神田の怒りを買って

会社をクビになったことから名刺ゲームを始めることになりますが

学校をやめてクイズ作家になるのは原作では別の人物で描かれており

原作の薄井とはかなり役割が異なります。

(気になる方は原作を読んでみてください。結末も全然違います)

 

同窓会でテレビ局に就職した嫌味な同級生から言われた言葉がきっかけで

学生時代からの夢だったクイズ作家になるために学校を辞めて

プロダクションの入社試験を受け100点満点で99点という

前代未聞の高成績で入社。神田の担当するクイズ番組「ミステリースパイ」の

番組会議に参加することになります。

神田の娘の担任を受け持っていたこともあり自分はついているのではないかと

内心まんざらでもない心持で会議に参加し緊張しながら

神田を名刺交換するも不機嫌な神田に一瞥されて終わり。

会議でも自分が出した自信のあるクイズにダメ出しされ

大したことない内容のクイズを出して旧知の作家とは楽しそうに話す姿に

憧れていた世界と現実とのギャップで急速に期待がしぼんでいきます。

 

それでも採用してもらおうと150ものクイズ案を分厚い資料で提出したものの

ほとんど目も通してもらえず、仲の良い作家が出してきた簡単なクイズ案を

採用すると思わず「そんなのでいいんですね」と鬱積していた気持ちが声に出てしまい

神田の怒りを買ってクビとなります。

 

その後、神田の番組がやらせ事件が問題となり自分を会議で庇ってくれた片山が

テレビ業界を去ったことを知り片山に事情を聞きに行きます。

片山から薄井くんも神田に夢を潰されてかわいそうだねと言われ

ぼんやりとした気持ちで商店街を歩いていると神田の娘美奈と偶然すれ違い

美奈も父である神田に失望していることを知り

名刺ゲームを思いつき、冒頭に戻ります。

 

岡田くんの見せ場は最終話の薄井忍の正体が明かされてから。

誠実な教師の顔

f:id:unatamasan:20180108221548p:plain

同窓会でその他大勢の同級生に混じった地味な男の顔

f:id:unatamasan:20180108222035p:plain

 テレビ局に就職した鼻持ちならない同級生にバカにされて

 卑屈な表情が垣間見える顔

f:id:unatamasan:20180108222135p:plain

教室で生徒に向かって教師を辞めてクイズ作家になることを宣言する

少し誇らしげな顔

f:id:unatamasan:20180108222439p:plain

 

不安を抱えながらも一大決意をして

入社試験を受け無事合格し嬉しそうにする顔

f:id:unatamasan:20180108222719p:plain

 

初めて企画会議に少しばかりの期待を持って出席する顔

f:id:unatamasan:20180108223010p:plain

 

企画会議でダメ出しされて自信がしぼんでいく顔

f:id:unatamasan:20180108223223p:plain

 

希望が失望になり軽蔑へ変化する顔

f:id:unatamasan:20180108223404p:plain

片山と会っている時の人生の敗者となった影のある顔

f:id:unatamasan:20180108223607p:plain

美奈と話しながら名刺ゲームを思いついたときの怪しい顔

f:id:unatamasan:20180108223750p:plain

名刺ゲームをやり切って満足そうに笑う顔

f:id:unatamasan:20180108224023p:plain

 

薄井忍は本来は地味で特徴のない人物で

謎の男Xの大げさな身振りやセリフ回しがすべてわざとやっていたことが

わかります。

(とはいえ中学教師をやっていた人物にこんな演技は

普通できません。そこはまぁ置いといて…)

キャプチャを貼りまくりましたが

ちょっとした目の動きや顔の角度にもわずかな変化をつけて

気持ちの動きを表現していて丁寧に薄井という人物を

なぞっていたように見えました。

一つの作品で2役を演じているような面白さもあり

特に居酒屋のシーンと片山と会う喫茶店のシーンは声も小さく

表情も暗くこれまで演じてきた岡田くんの中でも相当地味目な雰囲気にあたり

個人的にはかなり好きでした。

謎の男のときの舞台の演技のようなオーバーアクションだったり

滑舌のよいセリフ回しもよかったですが

大勢の同級生に混じってどこにいるのかわからないくらい存在感を消したりとか

負のオーラがうっすら(べったりとついているとそれはそれで目立つ)

ついている感じが絶妙でした。

 

ドラマとしては最後に片山が全部言いたいことを言って終わり、

薄井くんは果たしてあれで満足したのかなぁという気もしましたが

神田に対して恨みを持っていた人たちそれぞれが名刺ゲームに参加することで

次の一歩を踏み出す結末だったので

薄井くんがその後クイズ作家になったかどうかはわかりませんが

前を向いて歩いているだろうと思っています。

 

今回はエキストラにも何回か参加し、クライマックスの名刺ゲームの種明かし後の

会場にいる観客役で参加した時が一番長かったのですが、

ドラマで使われたのは2~3分くらいだったんじゃないでしょうか。

それも私が参加したのは1日だけですが2日かかりで撮影しているんですよね。

同じシーンを何度もカメラを変えて撮ったり一つのドラマを作るのにこれだけ

手間がかかってることを間近で見ることができたのは面白かったです。

このシーンで初めて岡田くんの演技も近くで見ることができて

集中力を保つのは大変なんだろうなぁと思いました。

 

あと片山役の田口トモロヲさんがすごかった!

ドラマの中での存在感も抜群でしたが目の前で演技を拝見し

声の力強さに圧倒されました。実質の主役は片山だったんじゃないかなって

思えるくらい迫力ありました。

 

多少強引な展開があったりしましたが

画作りが凝っていたのとテンポよく話が進むので

各話ともあっという間に見ることができました。

 

元々は人のよい目立たない人物だった神田が

権力を持つことでどんどん態度が変わっていき

恐ろしいゲームに巻き込まれることになりましたが

立場が上になると多かれ少なかれ意識しないうちに

誰かを傷つけてしまっているのかもしれないと思うと

できるだけ誠実でいられるように気を付けようと

思いました。こんな締めですいません。