おうちに帰ろう

心茲にありと

2016年一番掴まれたもの

今年ももうすぐ終わります。

こちらのブログでは色々なエンタメを勝手に応援するという

スタンスで書いていますが、今年を振り返って

自分が一番感銘を受けたというか感動したというか

心を奪われた作品は何だったか考えてみようと思います。

今年見たり行ったりしたイベントは以下の通り

映画:28本

演劇:14本

美術展:88本

サッカー観戦:10試合

その他ライブ:4本

合計:145

でした。およそ2.5日に一回、何等かのイベントごとに行ってる計算です。

美術展に相当偏ってますが、これはやはり時間のやりくりが楽なことと

梯子しやすいということに尽きるでしょうね。

そんな中、今年一番心奪われた作品は何かというと

舞台「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」でした。

このブログでも3回も取り上げ、それでもまだ書ききれていないくらい

気持ちが揺さぶられた作品です。

8月13日に大阪森ノ宮ピロティホールでの大千秋楽から4か月以上経過し

記憶も怪しくなってきた12月24日クリスマスイブに

待ちに待ったWOWOWで舞台中継の放送がありました。

放送日が決まってからは絶対にその日までは死ねない!という思いで過ごし

満を持してその時を待ち、心して放送を見届けました。

舞台作品をテレビで放送されるのを見るとき

どこまで私が生で見た感動が再現されるのだろうかと心配になるのですが

今回に関してはテレビの特性を生かして客席では見えない角度からの映像や

細かい表情のアップなど舞台をそのまま映すだけではなく、

別の作品としても成立するような演出になっていて

生で見ているときとまた違った印象になり

これはこれでよかったと思いました。

何より今年の夏のトーイ(とオカザキ)を映像という形で

残すことができたのは貴重です。

この先、再演もあるかもしれませんが、この初演での鮮やかなインパクトは

最初にしかないものですから。

作品だけではなく、今回よかったのは放送に合わせて

作・演出の松尾スズキさんのインタビューがあったことです。

これまでも色々なメディアや公演のパンフレットで

作品のコンセプトなどの記事は読んでいたのですが、

今回のインタビューでは松尾さん自身の舞台や作品についての考え方も語られていて

その内容がとても面白かったからです。

以下、書き起こしになりますが

映像は自然なものを映すメディア。
舞台ってのは作り事の世界なんで
リアリズムってものを写実主義って言葉でとらえるとしたら
写実には興味がなくて
僕の見える世界観に対する説得力ってことが一番重要
おかしな小道具が出てきたりとか
おかしな動きをしたりとかそういうことが
説得力を持って客に伝わるメディアかなって
歌舞伎とかシェークスピアとかそうですけど
元々はもっと不自然な状態で始めたと思うんですよね
そういうとこから受け継がれてた文化なんで
生々しい肉体があるからこそ
シュールなことが表現できるんじゃないかと思うんですよね
写実主義に対するカウンターみたいなものは作っていきたい
日本人が作る表現形態としての演出を
究めていきたい
写実から離れてどこにたどり着くのかっていう段階に来てるのかな
っていう気はしますね

松尾さんの作品は「ゴーゴー~」を含めて3作品しか見てないので

全てが当てはまるかわかりませんが

この「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」

について、なぜこんなに惹かれるのかというと

「松尾さんに見える世界観に対する説得力」

がわかりやすい形で表現されていて、

それが私の好きな世界観と一致したからなんだろうと思いました。

そしてリアリズムではなく非日常に対して説得力を持たせられる役者として

岡田将生くんが舞台上に生きる人物を見事に表現したキャラクターに

魅せられてしまったからなんだなぁと納得しました。

この作品における永野とトーイの関係はどこまでもファンタジーで、

男性同士の恋愛を生々しくなくファンタジックに表現できるアイコンとしての

役者岡田将生は抜群でした。

昨今のBL(ボーイズラブ)というジャンルの作品群とはちょっと毛色が違い

どこかクラシックな匂いがしたのは、

竹宮恵子とか萩尾望都といって少女漫画における少年愛をテーマにした作品が

ベースにあり私にとってもホモセクシュアルな内容の話については

そのあたりのイメージしか持ってないので、

松尾さんの描く世界観にものすごく共感できたからなんだと思います。

トーイと永野の二人はどこまでも甘くロマンチックで切なく

男女の恋愛では成立しなかっただろうなぁと思いました。

 

まだまだ考察の尽きないこの作品なので年が明けてもまた

書くかもしれませんがひとまず今年はここまでにしたいと思います。

 

ここまで気持ちを持っていかれると思わなかったので

事故にでもあったような気分なのですが

そのような作品に出会えた2016年は幸せだったなと思いました。

また来年も色んな作品、人に出会って気持ちを揺さぶられたいですね。