おうちに帰ろう

心茲にありと

昭和元禄落語心中 第四話「破門」感想

原作の「八雲と助六」篇の其の四、其の五あたりの話になります。

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今回の演目
菊比古
暁烏
死神

助六
居残り佐平次

第四話の監督は清弘誠さん。今までで一番落語シーンが一番少なかったですね。ドラマ部分に重点を置いて落語は一つの要素になっていました。それはそれでよいのですが山崎育三郎さんの素晴らしい居残り佐平次はもう少し聴きたかったなぁ。岡田くんの明烏も菊比古の中では明るさのある噺なので聴いてみたかった。
余談ですが、先日お江戸@ハート「幕末太陽傳の巻」というイベントで柳家喬太郎師匠のトークと落語を聴く機会があり「品川心中」を聴きましたが、まぁかわいらしかったですね、お染さん。ドラマ監修で岡田くんに稽古をつけててやってみたくなったと言われてたのでこのタイミングで聴けてよかったです。楽しかった。その際に喬太郎師匠は「居残り佐平次」をつい最近までやったことがなかったとおっしゃっててとても意外でしたね。喬太郎さんくらいの方でもそういうこともあるんですね。

 

映像も窓越しだったり木枠の隙間から見せたりとちょっと俯瞰で撮っているシーンが多く菊比古や助六の会話をこっそり覗いているような気分になり面白いなぁと思いました。そして今回も照明がとことん美しい。もう何度でも言いますが暗さが好きです。

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彦兵衛師匠の部屋の外から

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死神を演じる菊比古を見る助六目線

今回はドラマオリジナル部分がよかったですね。
特に前回落語の中に自分の居場所を見つけた菊比古が真打になるにはまだ物足りないと師匠に言われて酒に酔って客と喧嘩し協会を除名になった元名人の木村屋彦兵衛に「死神」の稽古をつけてもらうシーンは演じているのがドラマ監修の柳家喬太郎師匠だっただけに実際に岡田くんが「死神」の稽古をしている様子はこんな感じだったのかなぁと想像してちょっと嬉しくなりました。
その際に菊比古の死神について「若いな、いやまだおめえが若いからしょうがねえが」っていう師匠のセリフを言われたときの菊比古の反応がちょっと素の岡田くんが垣間見え、見ている側に岡田くんが落語の素人であることを思い出させ、その上で50代の死神を演じたあとに今初めて稽古をつけてもらう死神を改めて演じているという二重三重のからくりを見るような構成でした。

彦兵衛師匠に「技術だけじゃ真打になれねぇ、師匠やお偉いさんのご機嫌損ねたら一巻の終わりだ」「助六にも伝えておけ」と言わせるのも最後に助六が破門に至る事情に説得力を持たせてました。

他にもみよ吉が菊比古に杖を買って届けたり見受け話があると言ったり酒におぼれて寄席の前で倒れたりといった原作にないエピソードを入れることでみよ吉の菊比古への一途さを際立たせてます。正直原作で読んだときはみよ吉さんは寂しさを紛らわせてくれる人であれば誰でもよかったような印象でした。ドラマでは「菊さんに出会ったのが第二の人生の始まり」と言ってますが原作では「満州で七代目八雲と出会ったのが第二の人生の始まり」となってます。七代目のあとにたまたま出会った菊比古と付き合ってすがっているだけ、ちょっとヒドイ言い方ですけど最初はそんな風に思ってました。

みよ吉に別れを告げるときは感情を押し殺すことができるのに助六に対しては苛立ちや怒りや嬉しさも素直に出せる。助六が菊比古にとっての落語そのものなんですね。みよ吉演じる大政絢さんが「みよ吉は菊さんにとって都合のいい女、そんなみよ吉がかけがえのない存在になるんだけどやっぱり落語には勝てない」と評してましたがまさにその通りだと思います。

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みよ吉の部屋に別れを告げに行くシーン。この光の当て方すごく好きです。そうそう昭和の家の電球は低いんですよね

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助六には自分の気持ちはわからないと苛立ちをぶつけるところ

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その後の指切りではこの笑顔。みよ吉には見せない顔


真打になるためにみよ吉と別れろと師匠に言われて別れを決意する菊比古。片や師匠のやる落語は古臭いとたてつき破門される助六。どちらも落語を愛しているのに全く逆の行動をする二人。これは昭和の時代に落語界が分裂を繰り返したことを重ねているんだなぁと思いました。後の世になってみれば伝統を守る人も型破りなことをやって進化を推し進める人と両方いてこそ文化は続いていくのですが、当事者同士はときに対立してしまうのですよね。菊比古にとってみよ吉は落語以上の存在にはなれなかった。そして助六は常に菊比古の前を歩いていて天才的に落語がうまく人気者で菊比古の持っていないもの全てを持っていると思っていたのに菊比古以上に孤独と闇を抱えていて一人では生きていけない人だった。菊比古も助六もみよ吉もみんなそれぞれひとりになりたくないと思っているのに求める方向が全部一方通行になっているもどかしさ。
思いが結実するには与太郎の登場まで待たないとならないんだなぁと思いました。
第一話で与太郎が破門されるときと今回助六が破門されるシーンどちらも主題歌の「マボロシ」がかかったのですが、助六は落ちていく始まりで与太郎は再生へのステップになるんですよね。とても象徴的だったと思います。与太郎は雪の中で助六は桜が散っているというのも対照的でした。


次回「決別」の予告編ではかつてないほどの切ない顔で助六の背中を掴んでいます。はい、楽しみです。

 

 

 

昭和元禄落語心中 第三話「迷路」感想

第二話の最後に運命の女登場、という感じで菊比古と出会うみよ吉が本格的に登場しました。

今回の演目
菊比古
寿限無
品川心中

助六
夢金

鹿芝居
弁天娘男女白浪(ベンテンムスメメオノシラナミ)

弁天娘女男白浪 | 歌舞伎演目案内 – Kabuki Play Guide –

河竹黙阿弥作ということろに不思議な縁も感じます。「ニンゲン御破算」絡みで)

私が原作を読んだときのみよ吉の印象は正直言うと「うぜえ女」でした。
助六に落語を辞めさせたり菊比古に一緒に死のうと言ったりあげく最後には…とはた迷惑でしかなく結構イライラしながら読んでいました。

原作では菊比古はみよ吉にちょっかいを出されて強引に付き合わされてる感じなんですが、ドラマだと出会いの場面からして菊比古もみよ吉さんに最初から惹かれてるように描かれていて菊比古の中にいるみよ吉の存在が原作よりも大きくなってます。
悩んでいる菊比古に「居場所は自分で見つけるもの」という落語をやるための意味を菊比古に気付かせるきっかけを与えます。原作では菊比古が自分で気付きます。また鹿芝居で怖気づいてる菊比古にキスをして舞台に送り出しますが原作にはこの描写はありません。また「死ぬことはこわくない、一人で死ぬのは寂しいけど」というセリフを唐突に言ったりします。最初から死の匂いがぷんぷんしますね。
みよ吉については原作の終盤で八雲が小夏さんに
「みよ吉さんはアタシといるときはたいそう優しかったよ
あの人には女の人の酸いも甘いも苦みもぬくもりも冷たさもみィんな教わった
とても魅力的な人だったよ
そして落語を与えてくれたのは助六さん
アタシの味気ない人生に色を与えてくれた二人だ
永遠に手の届かない二人」
というシーンがあります。一緒にいるときにはそんなに愛情を見せていなかったけど菊比古なりにみよ吉を思っていて恐らく年を取ってからみよ吉が与えてくれたものの大きさに気づいんだなということがわかる言葉です。ドラマではより実態を伴う形で具体的に見せてるのかなと思いました。

八雲の人生にかけがえのない存在の二人を第二話で助六、第三話でみよ吉とそれぞれドラマオリジナルエピソードを加えて深みを与えて描いてます。

みよ吉の存在だけじゃなく助六に対しても初太郎と呼んでいたころは彼の言葉に力づけられ初太郎の見ている先を一緒見ていればいいと思ってた第二話の最後から、二つ目となって助六と名前を変えてからどんどん先へ行ってしまう助六に黒い感情が芽生えて二人の間にも変化が表れてくるのが第三話でした。

岡田くんが↓のインタビューの中でドラマの八雲の一番の特徴はどんなところか聞かれて

thetv.jp

「陰気臭いところですかね?」と答えてますが
まさにそれ。助六への嫉妬心もみよ吉さんへの思いも原作だともう少しツンデレ風というか軽さが見えるんですけど、ドラマの菊比古はとにかく真面目で硬い。
「神様は不公平だ、遊んでんのに腕上げて仕事もらえて、初太郎ばっかり」と助六にいう場面のどす黒い表情に菊比古の内面がにじんでます。
第二話では生きて帰ってきた初太郎をあんなに嬉しそうに抱き締めていたのに。
だからこそ余計に憎らしさが募るんでしょうね。「このころのアタシは助六という物差しを通してしか見られなくなっていました」と助六への羨望と嫉妬に悶々としていることをはっきりと語りで伝えています。これも原作にはないところ。

八雲になってからの落語に宿る凄みの蓄積を少しずつ表面に出す作りになっているのではないかと思います。

 

こちらのインタビューで

news.livedoor.com

びっぱられるのでアニメは見ないでくれと言われていたとありますが
スタッフさんたちがかなり比較されることを意識していたのかなと思います。

それだけに原作の世界観をいかに3次元で表現するかということに徹底的に拘ってるのが伺えます。美術から照明まで陰影が濃く画面だけじゃなくて時代背景まで含めて影を大きく描いてると思います。満州での助六、師匠、みよ吉の場面も原作にはないけどあの短いシーンを入れることで助六の思いとみよ吉の孤独感と落語の重要さが伝わります。

毎回、セットには感心していますが今回は菊比古と助六が暮らす6畳一間のアパートが素晴らしかったですね。畳の目のつぶれ方や壁のぼんやりしたシミ、小さいタンス丸いちゃぶ台にしなびた布団。落語家は二つ目時代が一番貧乏らしいのですが(前座の頃は食事代などは師匠が出してくれお小遣いももらえるけど二つ目になるとなくなる)男二人がこの一間に片寄せあって暮らしてればいろんな感情が生まれるでしょうという空間づくりになってます。

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匂いまで伝わってきます


このあたりの生々しさがとてもよいですね。画面の向こうから湿気が漂ってくる感じ。
隅々まで気を使って作られたセットはほんと素晴らしいです。

原作の雨竹亭のモデルとなった建物などロケハン含めてとことん昭和を感じさせる画作りが素敵だなぁと思います。

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雲田はるこ先生も絶賛の歴史ある建物

あとこれまで触れてなかったのですが岡田くんのナレーションはやはりよいですね。「平清盛」のナレ朝を思わせる過去回想の語りは客観性を持たせながらも八雲目線で懐かしむような口調が菊比古の心情をうまく補完しています。岡田くんの声はとてもナレーションに合うので声だけのお仕事をやっても面白いのになぁと思ったりしてます。美術展の音声ガイドとか。

あともう散々言ってるしTwitterなどでも皆さん絶賛されている菊比古の美しさについて、岡田くんがゲストで出演した土曜スタジオパークで頂いた美顔器を使ってて今回は美しくありたいと思っているので~と言っていました。「きれいに見せる」ことにかなり気を配っていることがわかります。元からきれいな人がさらに磨きをかけるともはや凶器とすら思えますね。人が殺せる(物騒)。

今回は鹿芝居で女形を演じてますが実際に白塗りするとキレイというより骨格の骨っぽさが目立つので見た目の美しさはおいといて(素人芝居なので化粧も粗くしてあるし)ここは堂々たる口上が見せ場でした。有名な「知らざぁ言って聞かせやしょう~弁天小僧菊之助たぁオレのことだぁ」の言い回し、歌舞伎は詳しくないのですが声の張り方、通り方、抑揚、かなり頑張っていたのではないかと思います。元々素人がやる設定なのでうますぎてもおかしいし。二つ目の落語家が頑張って稽古して見栄を切っている、それまで客の目を見れなかった菊比古の表情にふてぶてしさが見える、自分が主役なんだと実感していく変化が短い場面に凝縮されていました。

 

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恐らく生の声は相当な迫力だったのではと思います。

その後助六が入れ替わるようにみよ吉を追いかけていき、最初に菊比古と出会った寄席の入口でみよ吉が「意外と優しいのね」と助六に声をかけるシーンはこのあとの3人の変化を予感させました。

酔った助六が自分の満州での体験を話しながら「オレは人のための落語をやる、おめさんはどうなんだ」と菊比古に問いかけ、その言葉を楽屋で思い出しながら自問しついに菊比古が目覚めます。菊比古のアップから高座へ上がる後ろ姿を足袋のアップからとらえ高座に登場するところ正面から映し座布団に座って噺を始めるまで全部映したのは菊比古になって初めてのこと。一人の落語家として有楽亭菊比古誕生を強く印象づけました。

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腹が据わった顔です

 

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前半の寿限無のときと顔つきが変わりました

岡田くんが「昭和元禄落語心中」に菊比古・八雲を演じると聞いて原作を読んだときに菊比古と八雲に岡田くんが重なる部分がいくつもありましたが、今回自分の助六と自分を比較し落語に向いてないのかもしれないと悩む菊比古にみよ吉が「菊さん魅力的だし喋ってる姿がとってもきれい」と言うと「そんなもの落語に必要あんのかい、落語に必要なのは愛嬌、それが致命的にねぇ」と菊比古が言うのです。岡田くんに「(キレイさは必要ない)愛嬌が致命的にねぇ」って言わせるかーと唸りました。
いや、素顔の岡田くんは可愛らしい人だし愛嬌もあると思いますけどあの完璧なまでの美しさはともすると面白味にかけて演じる役柄を狭めかねない面もあるように思います。というか世界的に見ても顔のきれいな人はそこにばかり目が行って演技力が正当に評価されず同じようなオファーが多くなったり若いうちはいいけど年取ったら大変だよみたいなことを言われたりするようなこともあったんではないかと勝手に想像しています。(あくまで想像です。)なので自分の落語を探して悩む姿が美しければ美しいほど彼自身もそういう葛藤を経てきたのかなぁと思いを巡らせ余計菊比古を演じてるときの中から滲む美しいほの暗さにリアリティを感じます。何度もいいますがあくまで勝手な想像です。

だからこそ菊比古覚醒のシーンは胸がすくような気持ちもなりました。目に力が宿り自信に満ちた表情で色気も華もある。その上で元の端正さがより強力な武器になる。岡田くんが菊比古を演じてくれてほんとうによかったと思いました。

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この艶っぽさは美顔器の賜物なんでしょうか。つやつや

次回は「破門」。どんどんしんどくなりますね。

 

昭和元禄落語心中 第二話「約束」感想

第二話「助六」は八雲と助六の少年時代の出会いから菊比古と初太郎という前座名だった頃のお話。
第一話で原作コミックスの与太郎放浪篇(5話分)を70分拡大版とはいえまるっと入れたのに対し、第二話は八雲と助六篇の1話分じっくり見せてます。

八雲にとって落語とは助六そのものということを色っぽく切なく濃厚に描いてました。ドラマのポスターが八雲が中心でその後ろで八雲の肩に手をかけて扇子片手に笑顔を見せる助六という構図になっている関係性がよくわかる第2話でした。

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親に捨てられるような形で落語家に入門した八雲は居場所がないから来ただけというのが師匠の家。落語家になりたくて師匠に弟子入りした助六とは出発点が違います。だけどどちらも他に行くところがないのは同じ。性格も生い立ちも違うけど居場所が同じという共通点で繋がる二人。最初の夜に暗い寝床で八雲は助六に「アタシを一人にしない」と指切りさせます。これは原作にはありません。(初っ端から重い八雲
成長して前座となり菊比古と初太郎という名前を貰い落語家としての実力差が広がってくるとだんだん嫉妬心のようなものも芽生えてきます。初太郎が菊比古に艶笑噺を勧め女も抱いたことない自分には到底できないというと下座見習いの千代ちゃんと付き合いだして何とか初太郎に追いつこうとします。このときの菊比古の顔、全然千代ちゃんのこと好きじゃなさそうで笑えます。キレイだけど気持ちが全く入ってない。何だよそのチューは。その後初太郎から何があったか言えって攻められてるときとかお千代ちゃんのおかげなのか「品川心中」が急に上手くなって初太郎に褒められたときの方がずっと嬉しそうでいい顔しているというね。

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どこ見てるんだか。やる気なさそー


初太郎からの指南でようやく落語が楽しくなってきた矢先、戦争が激化し始め廓噺などは不謹慎ということで高座にかけられなくなります。このあたりも寄席に臨監席があって警官が検閲している場面を入れたり(そこで警官に怒鳴られる落語家がドラマの落語監修の柳家喬太郎師匠)実際に浅草の本法寺にある「はなし塚」で供養している場面を入れたり戦争中の落語をとりまく環境を細かく描いてます。このあたりはNHKの矜持なのかなぁと思いました。

当時のエピソードが書かれたブログは↓こちら

https://www.jacar.go.jp/glossary/tochikiko-henten/qa/qa07.html


またしても居場所を失いやる気をなくしてしまう菊比古。前座働きにも身が入らない状態でいると初太郎は菊比古に何があっても落語をやめちゃだめだ、戦争が終わればみんな寄席に戻ってくると力強くいいその言葉に励まされます。とにかく初太郎の方しか向いてない菊比古。彼なしでは生きていけない感がありあり。
しかしその後も戦争はますます激しくなり他の落語家たちも兵隊にとられてしまいとうとう菊比古と初太郎だけになってしまうと師匠は満州に軍事慰問に初太郎と二人で行くことを決めてしまいます。一緒に連れて行ってくれと言う菊比古にお前は足が悪いから無理だ、おかみさんと田舎に疎開するようにと言われまたしても取り残されることに。
離れ離れになる前の夜、初太郎は自分に落語を教えてくれた老人からもらった「助六」という名前の入った扇子を菊比古に預け「絶対生きて帰ってくる」と言うと菊比古は指切りしてアタシを一人にしないと約束させます。本日2度目の指切りです。菊比古、初太郎にすがりすぎ。

疎開先でのやる気のない竹やり訓練や寝そべって「助六」の扇子をぼんやりと眺めている姿は初太郎が恋しいのか落語がやりたいのか菊比古の中でももやもやとしている感じ。そして突然の終戦の知らせを聞くと走って橋の上に行き大きな声で「落語ができるんだ!初太郎、生きて帰ってこい!」と一人橋の上で叫び「品川心中」を話し始めます。初めて菊比古が感情を爆発させるシーンでクララが立った!的な場面でした。ようやく気付いたか、みたいな。やっぱり菊比古にとっては落語=初太郎(助六)ということなんですね。

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橋の上で愛を叫ぶの図


東京に戻り焼け残った八雲邸で松田さんとおかみさんと3人で暮らし、あちこちのお座敷で忙しく呼ばれて落語をする日々となっても心の支えは帰ってくる初太郎を出迎えること。そしてとうとう初太郎が帰ってきて出迎えたときの菊比古の弾けるような笑顔。

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とにかく嬉しそう

寄席が再開されて客席に集まる人たちの笑顔を見ながら初太郎が見ている先は明るい、この人が見ている方を見ていれば間違いないと確信したときの笑顔。二人で風呂に入りながらじゃれあうときの楽しそうな笑顔。もしかしたらドラマ10話を通して一番笑顔が多い回かもしれません。第一話のずっと不機嫌そうなしかめ面の八雲とは大違い。こんな顔をしているときもあったんですね、菊比古さん。

戦争が終わって2つ目にあがり助六とともに落語に専念しようとした矢先、菊比古の前にみよ吉さんが色っぽく登場したところで2話目は終了。
3話以降の2つ目時代は波乱となるようです。原作ではみよ吉さんと菊比古の出会いはもう少し後。師匠が生真面目さ故に壁にぶつかっている菊比古を見かねて遊び相手として紹介するのが満州時代に自分の愛人でもあったみよ吉さんで菊比古は最初あまり興味なさそうなんですよね。ドラマでは運命の女っぷりを最初からぷんぷん匂わせて登場です。さんざんいちゃいちゃしている菊比古初太郎を見せといて間を引き裂く運命の女登場とは。まぁドラマチック。

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そんな顔しちゃいます?

助六(初太郎)がいたからこそ、明るい太陽のような助六に心底惚れてだからこそ落語にも惚れたんだなということを余すところなく見せた回だったと思います。

今回全編通して「品川心中」を演じているのも菊比古(八雲)が落語とともに心中すると言っている心情の元になっている助六との絆を象徴しているようでした。

「アタシを一人にしないこと」という指切りの場面を子ども時代にも入れたり助六の扇子を預ける場面は原作にはないので、ドラマの方が八雲(菊比古)の中で助六(初太郎)の存在をより大きなものにしています。

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完全に恋人待ってる顔だし

今回から本格的に登場した山崎育三郎さんはこれ以上ないハマり役でした。髭も日焼けした肌もワイルドな髪型もぴったり。着物の着方も菊比古と違って袖はまくるは胸ははだけるわ帯の位置は高いわで型破りなんですが似合ってる。普段王子様やってる人には見えません。よく通る声も落語家にぴったり。そして何より華がある。あれは長年舞台で培ってきたものなのでしょうね。

 

第一話の50代の八雲から一転して10代の菊比古を演じる岡田将生くんはこれでもかといわんばかりに美しさを見せつけます。八雲のときのような風格をまとった美しさとは別の生まれたての小鹿のような美しさでした。

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初太郎に女抱いたことないから廓噺なんてできねえよなぁと言われたときのはっとした顔。そうか、女を知れば追いつけるのかも…と気づくところ。結構好きな顔です

端正な美しさは一貫しており菊比古が八雲になっても持ち続けている土台は変わらず10代から老齢期までを演じる理由は共通性を変えたくなかったからなんだろうなと思います。

映像的に見惚れたのは暗闇の表現です。菊比古と初太郎が寝ながら話す場面などほとんど二人の顔が見えません。初太郎は色が黒いので尚更、白い歯が見えると笑ってるんだなということがわかるくらい。当時の東京は灯火管制もされてたでしょうし夜はほんとに真っ暗だったんだと思います。それがリアルに表現されててここまで暗いのはなかなか見ないなと思いました。

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指切りシーン。これだけ暗いのもなかなかないです


それ以外にも昼間の部屋の中に差し込む光とか玄関や土間の暗さとか陰影礼賛じゃないですけど部屋の中にできる暗闇と光のコントラストが情緒的で美しかったです。色味も子ども時代は全体的にセピアっぽくだんだん色が足されている感じも時代が変化があってよかったです。

今回落語シーンはそれほど多くなかったのですが、菊比古の初高座は表情も初々しく硬い硬い「寿限無」。初太郎は最初から客いじりまでしてみせたりと二人の違いを見せています。そりゃ嫉妬もするよね菊比古っていうくらい初太郎ののびのびした感じがよかったです。
高座で「品川心中」を演じるシーンがなかったのが少し物足りなかったですね。もう少し聴かせてってところでいつも場面が変わってしまう。そのうちじっくり見せてほしいなぁ。しなを作ったり流し目したりと様々な表情のお染さんが色っぽくてうっとりします。声色もいい。

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お染の長し目

前回は「死神」、今回は「心中」、さてその先は…といったところでしょうか。

第三話のタイトルは「迷路」。どんな噺が出てくるのか楽しみです。

※追加メモ

今回出演された師匠方

柳家喬之助師匠、柳家喬太郎師匠、柳家はん治師匠、橘家圓太郎師匠

落語指導:柳亭左龍師匠

ドラマ「昭和元禄落語心中」始まりました

始まるのが楽しみでもあり怖くもあったドラマ「昭和元禄落語心中」が10/12(金)の放送NHKで始まりました。

第一話「約束」です。

www.nhk.or.jp

雲田はるこ先生原作の同名タイトルの人気漫画でアニメ化もされ声優さんたちの演技や落語が絶賛された作品のドラマ化。もうそれだけでハードルが高い作品です。
ドラマ化が発表されたときの驚きはこちら

見ているこちらが過剰に緊張してもしょうがないと思いつつ放送を迎えました。
思った以上にテンポよく刑務所から出てきた与太郎が有楽亭八雲に強引に弟子入りし八雲と養女小夏の父である助六との過去について語り始める原作の与太郎放浪篇がまるまる第一話でした。
原作では最初は与太郎目線で八雲の落語に対する思いや小夏との関係を辿りますがドラマは八雲を軸に八雲と助六、八雲と小夏、八雲と与太郎という関係性で進みます。やはり漫画をそのままドラマにすると収まらないので軸を八雲に据えて構成したからでしょう。

ステラ(10/19号)の雲田はるこ先生のインタビューでドラマ化にあたって内容については
・落語の正確な描写
・着物の美しさ
・江戸弁の心地よさ
この3つを徹底的に守ってくれればあとはご自由にとお伝えしたそうですが
それらの要素は八雲のキャラクターに一番入っている部分なので八雲を中心に組み立てのかなと思いました。

第一話を見て印象に残っているのは雲田先生がおっしゃったこの3つの部分です。

①着物の美しさ
八雲師匠は季節や場面に合わせて
冬と春は紫の羽織にグレーの着物

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この座り方も腰を落として少し猫背気味なところに年齢を感じさせます


夏は黒の紗の羽織にクリーム色の着物

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与太郎と着物の質感と着方が全然違いますね

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この横から見た姿!ツボなんです!襟の抜き加減と背中の曲がり具合が絶妙!

普段使いの綿麻?っぽい格子柄の着物

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力みはないんだけどしゃんとしててご隠居さん風

浴衣

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桜とともにお三味線を手入れする姿の美しいこと!このカット入れてくれてありがとうございます

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原作ではメガネ姿の多い八雲ですがドラマではここだけ。もっとメガネ姿見たいです!

といろいろな組み合わせで楽しませてくれて本当に素敵です。
まだ前座の与太郎とは着物の質も着方も違います。また着方も襟足の抜き方が色っぽくお辞儀をするときの手の揃え方にもほれぼれしました。このあたりは岡田将生くんも拘ったところのようです。

mi-mollet.com


これまで着物の印象があまりなかった岡田くんですが昨年の「銀魂」以来今年に入ってからも舞台「ニンゲン御破算」映画「銀魂2」と昨今着物づいてます。
銀魂」の頃は所作もまだ適当で足さばきもあんまり着物っぽくなかったのですが
「ニンゲン御破算」でも着物の所作や殺陣の練習をした影響もあってから以前に比べると着物での動きがずいぶん自然になったような気がします。
あと、着物以外でも昭和の男性らしいスーツや開襟シャツの着こなしも素敵でした。帽子かぶったりチョッキを着たりと昔の男性はおしゃれでしたねー

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ちょっぴりかわいらしい帽子姿

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クラシカルな開襟シャツに黒いスーツ。ステッキさえもおしゃれに見える


②江戸弁の心地よさについて
もともと口跡の良さには定評のある岡田くんですが今回は江戸弁という今まであまり使ったことのない話し方、しかも年齢がかなり上の役ということでどんな感じになるんだろうと思いましたがめちゃくちゃちゃんとしてました。特によかったのは面倒くさそうに気怠く話すところとちょっと早口で啖呵切るところの緩急が好きでした。代表的な「ひ」を「し」というところ(あのひと⇒あのしと)も自然でよかった。

③落語の正確な描写
第一話では合計7つ噺が登場します。
八雲

 品川心中
 死神
 たちきり
 鰍沢

与太郎
 寿限無
 出来心
 たらちね

あくまでドラマの演技の延長線上にあるので登場するのは長くても5分程度、ダイジェスト版です。ですが実際には全て演じられるように稽古されてるそうです。というかそうじゃないと部分的だけ演じるとか無理だと思うんですよね。すごく贅沢な尺の取り方だなぁと思いました。そこまでやって初めてドラマの中で生きるんですね。与太郎の最初は全然ダメダメなところから「出来心」で落語の面白さを掴んだと思ったら稽古不足でまたひどい高座をしてしまうあたりの勢いはあるけどムラもありでもなぜか魅力的という変化もよかったです。八雲の登場シーンで「品川心中」のさわりから入って十八番の「死神」から始まりしっとりとした「たちきり」じっくり聴かせるところからダイナミックに話しが展開する鰍沢と全く違った演目を岡田くんは八雲として演じきっていました。「落語のらの字も知らない」ところから名人八雲として全くタイプの違う話を演じるというのは2重3重の難しさがあったと思います。実際ところどころ岡田くんらしさ(それも落語家の個性として捉えることもできます)が顔を覗かせるところも落語は奥が深いなぁと思いました。死神とか女形の方がやりやすそうで若い男をやるときに地が出ちゃうのでそっちの方がむしろ大変そうな気がします。「たちきり」も「鰍沢」も女形には引き込まれるような色気がありました。(実際にはももっと長く話してるんですよ。こそっ)品川心中もぜひフルバージョンで聴きたいですね。

あと上からは除きましたが「野ざらし」もちょっとだけ出てきました。助六の落語を八雲が再現するシーンで最初は岡田くん演じる八雲から噺が始まり途中から山崎さんの助六に変わります。ちょっとしか映りませんでしたがこの時、岡田くん助六を演じる八雲になっていてお見事でした。もっと見たかったな。この後助六さんと「連弾野ざらし」するようなのでめちゃくちゃ楽しみです。(岡田くんの「野ざらし」もすごくよいのですよ、こそっ

www.nhk.or.jp

 

次に登場人物について。
まず与太郎竜星涼くんが思った以上にハマってましたね。舞台「修羅天魔-髑髏城の7人Season極」での女形から悪役への変貌した迫力のある演技に目を見張りましたがとにかく動きがよいし声もよく出て明るい。バカだけど憎めない与太郎を身体全体使って表現してました。少し大げさなくらいですがそれがちょうど与太郎という昭和の熱い若者にハマっていました。
成海璃子さんの小夏さんは原作よりも優等生っぽかったですね。原作だともう少しすれっからしな感じがあるんですが気は強くて反抗的だけどお嬢さんぽさが残っててこれは八雲とのバランスとみよ吉さんとの違いを出すためかなと思いました。最初に登場したとき縁側で助六のテープを聴きながら「野ざらし」を話しててその時の声がとてもかわいらしくて「声が凛としている」小夏さんの特徴が出てたと思います。

篠井英介の松田さんはちょっと気の毒かなと思いましたが松田さんも若いころから演じなくてはならないのでちょうど間を取って篠井さんだったのでしょうか。割烹着姿が甲斐甲斐しくてとてもサマになってました。さすがです。

今回はちょっとしか出てないのに抜群の印象を残した山崎育三郎さんの助六さん。本番は次回からですがまぁとにかく魅力的。ほんの少しの登場で誰もがホレるよねっていう華を感じさせるところはミュージカルの王子の面目躍如といったところでしょうか。
実際の噺を聞くとほんとに惚れます。素晴らしいです
菊比古が嫉妬に狂うのも無理はないという説得力があります。最初は意外に思えたキャスティングでしたが大正解でした。次回からが楽しみです。

みよ吉さんは次回以降に。

最後に岡田将生くんの八雲師匠。10代も演じられて50代、60代でも美しさと艶っぽさを兼ね備えた人となると彼以外思い浮かびません。10代の菊比古を演じられる人は他にもいるだろうしもっと合ってる俳優さんはいると思います。
だけど50~70代になったときに名人としての風格を出しつつ10代の時と繋がるように不自然にならないように両立させらる人はなかなかいません。
老人に見せるのではなく八雲になることで成立させてるんですね。
リアルにその年齢の人に見せるのはむしろ落語心中の世界から離れてしまうので作品の中に存在している八雲がその年齢だった、というたてつけで演じていてその意味で全く違和感はありませんでした。

あと昭和らしくタバコを吸うシーンがたくさん出てきますがどれも単純にかっこよかったですね、ハイ。

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ほんの一枚だけ。他にもシブくてかっこいい姿たくさん。さすがハマってます



最後に全体的な感想を

先程のステラのインタビュー内で雲田先生は

芯だけをきれいにくり抜いてシンプルだけど骨太であり落語の魅力も人物の魅力もたっぷり伝わる構成にしてくださったと思っています」
と話されています。
漫画は連載が進む中でキャラクターが少しずつ変わって来たり話を膨らませるために小さなエピソードがこまごまあったりと全巻通すと最初と最後でイメージが変わることもよくありますが
完結しているお話をドラマなり映画なりにするときはどこを切り取ってどこを残すかという作業が必要で結果的に原作よりも濃密な話になることも結構あります。
今回のドラマ版「昭和元禄落語心中」にもそんな印象を持ちました。

原作やアニメが好きな方でドラマの八雲に不満があるとすると軽さが足りないところかなと思います。(エゴサとかしてないのでわかりませんが)抜け感がないというか。
私もそこは感じました。原作の八雲は気難しいけどもう少し軽さがあるんですがドラマの八雲はとにかく偏屈で威圧的です。これは八雲だけじゃなくてドラマ全体が漫画以上に湿度が高く重厚な作りになっていることが大きいのかなと思います。原作の世界観を凝縮して取り出してるのでそれに合わせた八雲の人間像なんだと思います。
与太郎と小夏のやりとりや八雲と与太郎の会話など原作だともう少し軽妙ですがこのあたりの要素を入れてしまうと全体がぼやけてしまうのかもしれません。
第2話目からは八雲と助六編に入りいよいよ天才助六登場なのでもう少し雰囲気が変わりそうです。とにかく明るくて華やかで誰もが魅了される助六さんと八雲になる前の菊比古は繊細で神経質だけどまだ気難しさよりかわいらしさの方が上なのでまた違った趣になりそうでこちらも楽しみです。

 

あと今まで原作やアニメを見ていたときには感じなかったのですが今回ドラマを初めてこのドラマは「家族」のはなし(あれそんな映画のタイトルがどこかに…?)でもあるんだなと思いました。どこか「万引き家族」に通じるというか。

特に八雲が一度破門した与太郎が土下座して「他に行くところがないんです」という姿に自身が親に捨てられて7代目八雲のところに来た姿を重ねたあたり、与太郎助六の穴を埋めるだけじゃない何かを感じていたように見えました。

血の繋がりのない天涯孤独の3人(+松田さんも)が血よりも濃い絆というかもっとドロドロとしたものを抱えて罵りあいながらも離れられずに生きていく姿というのはとても落語っぽいなと思いました。

 

ちょっと長くなってきました。(だからツイッターには感想を上げなかったのですが)

 

他にも気になることはいろいろあるし(特に小夏さんとの関係は最後に向けていろいろ気になります)言い足りないところもあるような気がしますが

まだ第一話なのでこの辺で。(毎回書くかわかりませんけど~)

 

 

今更ですが「銀魂2 掟は破るためにこそある」

今更感満載なのですが一応書いておこうかなと
銀魂2 掟は破るためにこそある」の感想をざざっと。

 

昨年公開の「銀魂」から1年で続編公開とは異例の早さでさすがに驚きました。
前作の勢いを忘れないうちに鉄は熱いうちに打てとばかりに畳みかけてくるところスタッフ陣にシリーズ化したい意欲が伺えます。

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2作目の今回は原作の「真選組動乱篇」と将軍接待篇のうちのキャバクラ篇と床屋篇をミックスした内容。将軍篇のギャグパートと真選組のシリアスパートはきれいに分かれるのかと思ったらギャグメインから入って少しずつ真選組動乱篇とクロスオーバーしていく作りはよかったですね。
ギャグパートは福田監督の本領発揮という感じでテンポもいいんですが真選組パートになると福田さん自身が思い入れの強いエピソードだからなのかセリフもそのまま使ってる箇所も多く元々セリフの多い原作なのでやや長いなという気がしました。このあたりは好みが分かれるところだと思います。中村勘九郎さん演じる近藤さんの存在感はさすがで土方、沖田、鴨太郎との関係性をほぼセリフのみで伝えないとならないのですが、勘九郎さんが言うと納得できる。おバカだけど付いていきたくなる局長を体現してました。この映画の中で見栄切ってもらっていいんだろうか(しかも最後までやらせないという)という贅沢さです。

予算が増えたからかアクションシーンも前回よりもカメラワークも凝ってるしロケも人も多くさらに本格的になってました。私が好きだったのは列車の中での神楽ちゃんと沖田の共闘シーン。原作にはないんですけど真選組の制服着た神楽ちゃんが凛々しくて沖田演じる吉沢亮くんとのサイズ感もぴったりでした。

mdpr.jp

 

新メンバーの伊東鴨太郎演じる三浦春馬くんと河上万斉演じる窪田正孝くんは安定感抜群でした。三浦春馬くんの演技はそれほど見たことないのですけどマジメさ故に極端な思想に走ってしまう鴨太郎の哀しみみたいなのを表わすにはいいキャスティングだったのかな。ちょっとかっこよすぎるくらいでした。
窪田くんはアクションはお手のものだと思いますが三味線を背負ってワイヤーを駆使するような小道具の多いアクションは初めてですかね。バイソンのコートに青い髪のカツラにサングラスと彼の特徴である身体のキレや表情があまり見えないのですがそれでも他の役者さんとは一味違うと思わせる動きと表情が見えない分、最後のセリフのときにそれまでとトーンを変えた叫びみたいなところで万斉を表現しててハマってましたね。
「~でござる」の言い方も違和感なくさらりと口から出てくるところもよかった。

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あとやっぱり福田監督は土方がほんとに好きなんだなと思いました。だからこそ信頼してる柳楽優弥くんが演じてるのかなと。今回はトッシーになったり見せ場盛りだくさんでした。

万事屋3人組は前作ではほとんどツッコミがなかった新八がようやく本来のツッコミを発揮。ギャグパート増えた分万事屋としての見せ場も多かったのでより「銀魂」っぽかったなと。特に寺門お通親衛隊長シーンの菅田将暉くんはイキイキしてて楽しかった。
小栗さんの銀さんは立ってる姿が銀さんそのものでちゃんとかっこよくギャグシーンが多かった分カッコよさが際立ち銀さんが愛される理由がわかります。
特に万斉とのアクションでワイヤーで木刀が引っ張られるシーンの股を開いたポーズがほんとに決まっててあぁー銀さんだぁーってなりました。

 

桂に関しては今回の映画化の対象となるエピソードの中によく登場したなという意味で出てくれただけでよしとしようという感じ。
元々登場する床屋篇ではばっさりカット。出てこないハズのキャバクラ篇に登場という荒業。
ビジュアルブックによると原作では九兵衛とかキャサリンがキャバ嬢をやるけど背景を説明するのに難易度が高いのでどうしようと思ってたところ桂を登場させようということになったとか。真面目に攘夷活動の資金を集めるために桂が登場したら面白いんじゃないかと。前作出演時から岡田将生くんがギャグパートに出たいカツラップやりたいと言ってた希望も叶えられて一石何鳥だなということで女装姿の桂小太郎とカツラップも見られて嬉しかったですね。

www.cinematoday.jp


エリザベスとともにもはやマスコット的存在の桂ですけど、短い登場ながら笑いをさらっていきました。映画のオープニングを飾る映画泥棒のナレーションの声が桂になりきってていきなりおかしいのと(もうちょっと長く聴きたかった)カツラップをやりなが銀さんと新八に裏に連れていかれる場面のセリフの言い方とかなぜか真選組を追いかけていく銀さんたちのもとにエリザベスに乗って登場したときの掛け合いの感じとかちょっとした声の出し方が武士っぽくなってて面白かったです。物足りないくらいの登場のさせ方が笑いを取るにはちょうどいいのかな。そのあたりは福田監督の細かい笑いに対するこだわりのような気がしました。

 

前作では世間との距離を測りながら作ってたような感もありましたけどだいぶ塩梅がわかってきたのかより「銀魂」らしさが全面に出ていた2作目だったと思います。
今作も好評のようだしぜひシリーズ化して毎年夏のお祭り映画として定着してほしいなぁと思う次第です。ぜひ桂もレギュラーメンバーとして登場してほしいところです。

 

2018年お誕生日記念

2017/8~2018/8までの岡田将生さん出演作のラインナップです。

伊藤くんAtoE

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そらのレストラン(公開前)

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名刺ゲーム

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バイプレイヤーズ(1話のみ)

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家族のはなし(公開前)

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銀魂2(公開前:8/17~)

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ニンゲン御破算

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昭和元禄落語心中(撮影中)


映画が4本、しかも現時点で3本が公開前、テレビドラマ1本(それもWOWOWという視聴者が限定された番組)、そして舞台。

CMではクロレッツ、アクサダイレクト自動車保険ヤマキ割烹白だしの3本。

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並べてみると全く統一感なくて面白いですね。


今年に入ってからは以前インタビューで言ってた通り「家族のはなし」ではギター、「ニンゲン御破算」では殺陣、「落語心中」で落語と演技以外にスキルが必要な役への挑戦が続き「新しいことへのチャレンジ」を実現させていて俳優としての幹が太くなってきたような気がします。


特に「ニンゲン御破算」の灰次を見て「この人はもう大丈夫」(何目線?)という確信を持ちました。いや今までも疑ってたわけではないですが(何をだ)信頼が揺るぎないものになり周りから何を言われてもヘーキと思えるようになりました。
とはいえ悪く書かれたりするのはいい気分はしないしご本人は気にされるかもしれませんが)

阿部サダヲさんがCUTでの対談で仰っていたように他にいないタイプの役者さんとして道なき道を進んでいってほしいなぁと思います。

 

お誕生日おめでとうございます。